女性候補の躍進と若い市長の誕生が相次ぎ注目を集めた統一地方選挙。そんな中、選挙に関するあるネット投稿が議論になっている。
「人生初の金銭的にしんどい状態になっている。選挙の投票用紙が来たが全く行く気にならない」
「はてな匿名ダイアリー」に投稿したのは30代の男性で、これまでの選挙は毎回投票していたというが、「まさに【貧すれば鈍する】状態である。いざ自分が弱者になりかけている時、政治への興味が一切なくなってしまったのである。貧困など慢性的な困難に陥っている人は、政治や行政によるサポートが必要にもかかわらず、選挙で変えようとしていないのを身をもって理解してしまった」と綴った。
どうすれば弱者や生活に困った人たちが選挙や政治にアクセスできるのか。『ABEMA Prime』で当事者と支援者とともに考えた。
■「低所得の人が声をあげられない、政治家もその声を重要視しないという負のスパイラル」
生活困窮者の自立支援を行うNPO法人「ほっとプラス」の理事で聖学院大学客員准教授の藤田孝典氏は、当事者が置かれている現状について次のように話す。
「低所得の方たちは忙しかったり、低賃金で長時間働かないと暮らしが成り立たない状況だ。とてもではないが、今の時間の中から候補者や政策を見て、どこに入れたらいいのかを考える時間がない。我々が支援に関わる方は孤立していて、“どこの党がいいか”“ここの党は政策が間違っている”“いや、それは正しい”という議論から疎遠になってしまっている。仲間がいない中で、細かい部分で自分と関連づけて政治を見るというのが本当に乏しいと思う」
2020年に行われた米大統領選挙の世帯年収別投票率を見ると、1万ドル未満が47.1%であるのに対し、収入が増えるほど投票率は上昇。15万ドル以上は84.8%になっており、投票に大きな「所得格差」が見られる(出典:アメリカ国勢調査局)。日本においても、国政選挙で投票に「毎回行く」と答えたのは、義務教育までの人が56.3%、中等教育までが57.1%、高等教育までが62.1%だった(出典:World Values Survey、2010年)。
藤田氏は「低所得の人がなかなか声をあげられず、政治家もその人たちの声を重要視しないので、負のスパイラルだ。今回の地方選挙を見ても、福祉は重要だと語るが、低所得者対策や具体的な貧困対策を大きな声で主張している方はあまりいなかった。相互でコミュニケーションがうまく取れていないのを現場で強く感じる」という。
また、「中卒や高校中退というケースは頻繁にある。例えば大学には政治学があったり、経済と政治のつながりを学ぶことで選挙に行く選択が出てくるが、義務教育の中で『投票がある』と言われても、実生活に直接利益がなければ行くことはなかなか難しい」と指摘した。
ギャルタレントのあおちゃんぺは「4年前は選挙どころか政治に全く興味がなかったけど、この番組に出るようになって、自分が想定していたより『日本ヤバくね?』と危機感を持った。学歴の低い方は、自分の生活やいろいろなものに追われて知識をつける時間もなければ、危機感に気づくほどの余裕もないのではないかと、自分の経験から思った」と投げかけた。
■EXIT兼近「僕自身、生活に余裕が出たら積極的に参加し始めた」
困っている人と政治をつなげるためにはどうすればいいのか。生活保護を受ける中、貧困問題についてSNSなどで発信する櫻井さんは「政治に関心を持つのは、ネットや周りの人との関わりが大事ではないか。まずは周りにいる投票や選挙に興味のなさそうな人に声をかけていくのが一番のきっかけになると思う」と話す。
EXITの兼近大樹は「“投票に行っても変わらないだろうな”というのもあるだろうし、“あなたの1票が”と言われてもだから何だと思ってしまう。僕自身、生活に余裕が出たら積極的に参加し始めたので、そういうことなのかなと。教わらないのが一番強いのかもしれない」と率直にコメント。
藤田氏は「政治家の方との接点がない。我々も若者も、低所得の方なんかもそうだ。身近な市議会議員、地方議員でも、直接会うのは選挙前とかで、その人が自分の生活と何の関係があるんだろうというのは本当にピンと来ない」と指摘する。
そんな中、リディラバ代表の安部敏樹氏は「大きな選挙、例えば衆議院選挙で10万票をとるかという戦いでの1票は大したことないかもしれないけど、自分の住んでいる場所の市議や町議を選ぶ場合は、下手したら10票20票で変わる。地方議員になりたい人たちが地域の厳しい世帯などと接点を持って、『何かあったら僕に相談してくださいね』とどれだけ積極的にアウトリーチしていくか。“あの人のことを知っているから投票に行こうかな”と思ってもらえるよう草の根的に広げていけるかだ。“私の力で受からせられた”という経験を持ってもらうことが大事だと思う」との見方を示した。
櫻井さんは「私は生活保護になったが、今住んでいる所の議員が生活保護に対してけっこう支援をしてくださる方だった。そういうきっかけがあったので、私もその人を支援したいという思いで投票に行っているというのがある」と明かした。(『ABEMA Prime』より)
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