4月29日に開催された『RIZIN LANDMARK 5』(国立代々木競技場第二体育館)のダブルメインイベント。平本蓮は斎藤裕と対戦し、判定2-1の僅差で敗れた。
K-1のトップファイターからRIZINへ。2連敗のあと2連勝を収め、勢いに乗っていた。しかも2勝目の相手はDEEPでチャンピオンになり、萩原京平(平本がMMAデビュー戦でボコボコにされた相手だ)にも勝っている弥益ドミネーター聡志。鉄壁のテイクダウンディフェンスと強烈な打撃の組み合わせでインパクトを残した。
そして組まれたのが、フェザー級元王者である斎藤との一戦。ダブルメインのもう1試合では、平本と因縁の関係にある朝倉未来と牛久絢太郎が対戦。ともに勝てば朝倉vs平本が実現するか…という期待もあった。
そんな大事な試合で、平本は敗れた。会見でもSNSでもビッグマウス、アンチも多い平本もさすがに黙るのか。試合後には何を語るのか。インタビュースペースで彼は言った。
「課題は打撃です」
K-1時代にゲーオ・ウィラサクレックをKOしたこともある平本。RIZINの中でも打撃はトップクラスのはずだが、なせ「課題は打撃」なのか。
「MMAをやりすぎてしまった。こなすような試合というか」
平本のテイクダウンディフェンスは見事と言ってよかった。オールラウンダーの斎藤が組んできてもなかなか倒れない。倒れてもすぐに立ち上がる。ただ金網に押し込まれる場面が多く、そこで劣勢の印象がついてしまった。
左ハイキックなど打撃には迫力があったが、組もうとする相手を迎撃する“待ち”のスタイルだから手数が少ない。斎藤によると「向こう(平本)が“待ち”になってくれたのがよかった」。先手を取って組み付くことができたのだ。
逆に平本は、テイクダウンされないことには成功したものの、そのために後手に回ってしまった。
「もっと殺伐とした、MMAの選手にはない空気感を出したほうがよかった」
相手に圧をかけ、先手を取って打撃を当てる。そのほうが相手にとってはやりにくかっただろう。「こなすような試合」というのは、MMAという競技の枠に収まってしまったという意味ではないか。今回の平本はMMAファイターとしての成長と引き換えに、ストライカーとしての強みが薄れた。つまり「課題は打撃」だったのだ。
自分のスタイルに絶対的な自信を持っていた平本だが、その自信に足を救われた。とはいえ、まだ未完成だという自覚がさらに成長をうながすはず。朝倉未来も「急成長してましたね」と評価している。
弥益戦に続いて、平本のテイクダウンディフェンスが相当なものだということは分かった。そのベースの上で、打撃をどこまで活かせるか。「天才」あるいは「神」とも自称する男は、まったくへこたれていない。
「負けたけど負けてない。必ず復活します。いや死んでないですけどね」
そんな強気ぶりも挟みつつ、取材陣の質問に答えて試合展開や技術について振り返る言葉はあくまで丁寧だった。トラッシュトークの一方で、強くなることに関してはどこまでも真摯なのが平本蓮。次の試合が見たくなる敗戦だったのは間違いない。
文/橋本宗洋
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