「逃げた時点で殺人ではないか」 未解決ひき逃げ事件の大きな壁となる「時効」 事故は故意にならない? 2つの死亡事件から考える法律上の問題点
【映像】ひき逃げで小4男児死亡、当時の状況
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 2022年6月29日に大分県別府市で発生したひき逃げ事件。信号で止まっていたバイク2台に軽乗用車が追突し、大学生1人が死亡、1人がけがをした。警察は現場から逃走した八田與一(はった・よいち)容疑者(26)を道路交通法違反の疑いで全国に指名手配。逮捕につながる有力な情報提供には遺族が最高500万円の懸賞金をかけているが、10カ月が経った今も行方はわかっていない。

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 未解決のひき逃げ事件の被害者にとって大きな壁となるのが「時効」だ。『ABEMA的ニュースショー』では、14年前にひき逃げで息子を失った当事者に話を聞くとともに、その問題点について考えた。

■「逃げる行為がなぜ過失運転よりも時効が短いのか」

「逃げた時点で殺人ではないか」 未解決ひき逃げ事件の大きな壁となる「時効」 事故は故意にならない? 2つの死亡事件から考える法律上の問題点
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 小関代里子さんの息子・孝徳さん(当時小学4年生)は2009年9月、自転車で自宅を帰る途中でひき逃げに遭った。発見された時、孝徳さんは道の真ん中で倒れ、自転車は8メートル離れたところに横たわっていたという。2台の車が事件に関わった可能性があることを視野に入れ、今も捜査が続いている。

「1台目はこちらから、2台目は逆から来た。2台目の時は後頭部を轢かれてしまったので、即死状態」(母の代里子さん)

 後ろから来た1台目の車が孝徳さんの乗る自転車をはね、飛ばされた自転車を避けるかたちで、対向車線から来た2台目の車が孝徳さんを轢いた可能性があるという。しかし、救護せず逃走。逃げた車を追っているが、14年経った今も捕まっていない。

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「ひき逃げ事件に遭って初めて、『救護措置義務違反』で7年の公訴時効を迎えると。『過失運転致死罪』『危険運転致死罪』よりうんと短いことを知った。警察官の方が『事故は過失だ』『過失から始まるんだ』と言っていたが、逃げる行為がなぜ過失運転よりも(時効が)短いのかと疑問に思う。逃げた時点で殺人に匹敵するのではないか」(同)

 現在の法律での時効は、救護措置義務違反が7年、過失運転致死が10年、危険運転致死が20年と定められている。代里子さんは交通犯罪の時効撤廃を求める署名を集め、法務省に提出。

 その努力の甲斐あってか、当初2019年(過失運転致死)に迎えるはずだった時効が、罪状の変更により2029年(危険運転致死)まで延長。しかし、時効撤廃とまではいかなかった。

■殺意の有無で変わる時効

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 殺人罪の時効は撤廃された日本。しかし、人を死に至らしめたことに変わりないひき逃げの場合、なぜ時効が存続するのか。殺人との違いは「殺意」があったかどうか。若狭勝弁護士は次のように説明する。

「瀕死の重傷を負っていることを認識しながら、助けようとせずにその場を離れてしまうと、殺人の故意というのが認められるケースもなくはないと思う。そうなれば、殺人という枠組みが出てくる。しかし、怖くなって逃げてしまった、結果として被害者が亡くなった場合には、意図的に殺そうという殺人のパターンとは、刑事法的・刑法的に同じにはできない」

 殺意の有無で変わる時効。しかし、車による事故では、ナイフなど他の凶器に比べ明確な殺意が立証しにくい場合も。

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「助ければ命が助かったにも関わらず救助が遅れた、助けもせずに死んでしまったという事案については、やはり殺人だという意識を当初から持って臨むという、捜査側の意識の問題もあるのではないか」

 法務省によると、平成4年から令和元年に発生した死亡ひき逃げ事故のうち、未解決のものは403件で、時効を迎えてしまったのは386件。最愛の息子を失った代里子さんがあと6年で再び時効を迎える中、思うこととは。

「やはり真実を知りたいという思いは変わらない。殺人罪が時効撤廃ということも、車だったらなぜ公訴時効があるんだと。『車だからしょうがないよね』『車だから過失だよね』ということではない」

■別府のひき逃げ死亡事件、なぜ道路交通法違反容疑のまま?

 別府のひき逃げ事件では、交差点にはブレーキ痕もなく、八田容疑者の車は猛スピードのまま跳ね飛ばしたとみられている。また事故の直前、亡くなった大学生が容疑者から喧嘩腰に話しかけられていたことも判明。警察は、八田容疑者が故意に衝突した可能性も指摘している。

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 元埼玉県警刑事の佐々木成三氏は「普通のひき逃げ事件と異なるのは、容疑者と被害者が事故の前に接触していること。刑事の観点でいうと、それは何らかの因果関係を疑わないといけない。大分県警も殺人容疑で逮捕したいという思いは持っていると思うが、容疑者から話を聞けず殺意が明確ではない以上、殺人容疑で逮捕状を取得するのは難しい。とりあえず捕まえることを最優先にした時に、道路交通法違反でまず逮捕状を取得して、捕まえたら取り調べで殺人容疑に切り替えることは考えていると思う」との見方を示す。

 元徳島県警捜査一課警部の秋山博康氏は「捜査には積極性と消極性がある。この事件ではトラブルがあり、ブレーキ痕がない、加速した、目撃者の証言があることなどを殺人の故意ととって、積極的に逮捕状を請求することがベストだと思う」とした上で、「車はスピートが出る重たい鉄の塊。少々のナイフよりも既遂になる可能性が高いので、(時効は)もっと考えてほしい」と述べた。

 別府の事件について、警察は改めて情報提供を呼びかけている(別府警察署:0977-21-2131)ほか、番組でもTwitter(ABEMAニュース/@News_ABEMA)のDMでも事件や容疑者に関する情報を求めている。(『ABEMA的ニュースショー』より)

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