“蚊に刺されやすい人”の研究で話題になった高校生は23歳に 米名門大を飛び級で卒業、今は英・オックスフォード大で新たな目標にまい進「病気がない世界を作りたい」
コロンビア大学で研究をする田上さん
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 夏に人々を悩ませる、蚊の存在。蚊に刺されやすい人がいる一方、全然刺されないという人もいるが、その違いは何なのか。2016年、そんな謎に迫ったある研究が注目を集めた。

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「(蚊に刺されやすい・刺されにくい人の違いは)足の菌の種類」

 こう話すのは、蚊に関する研究を発表した、高校2年生の頃の田上大喜さん(当時16)。妹が自分より蚊に刺されやすいことに着目し、研究を始めた。そして、その要因が足の裏の常在菌にあると突き止めたのだ。

「菌の種類によって反応するものと、しないものがあって、菌の多様性が重要なのではないかと。将来この研究を続けていくことによって、蚊と人間が共存できる方法を探していきたいと思っている」(田上さん、以下同)

 当時、専門家から「核心に迫る観察」と高い評価を受けた田上さん。それから7年、今何をしているのか。

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 田上さんは現在23歳に。高校生の頃の研究は人生を大きく変えたという。

「カリフォルニア大学のアンソニー・ジェームズ博士という方に京都でお会いする機会があり、ラボについて話してくれた。その際に、最先端の機器が揃っているラボで研究をしてみたいと。高校がスーパーサイエンスハイスクール(SSH)といって、国から助成金を頂いて科学の研究をする学校だった。SSH発表会に出たときに、海外の高校生と研究の話をする機会があった。東南アジアの国々はデング熱があったりと、日本人に比べ蚊に対して敏感だったので、(異なる)価値観などいろいろな話をすることでより海外に行きたいなと感じた」

 こうして田上さんはアメリカ・コロンビア大学に留学。理系の上位約10人が選ばれるラビ・スカラーという奨学生に選ばれ、学部生の頃から大学の研究所でさまざまな研究をしてきたという。

「最初に取り組んだのが、ショウジョウバエの神経幹細胞について遺伝子の観点から調べるという研究。ほかにもAIや数学などいろいろな研究ができて、すごく良い経験だった」

 研究にまい進した田上さんは飛び級制度を使い、本来は取得に6年ほどかかる学士と修士の学位を4年で取り終えたという。

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 コロンビア大学を卒業したあとも、研究意欲は留まることがない。

「現在はオックスフォード大学の博士課程で、遺伝子のビッグデータを扱う研究をしている」

 世界トップクラスのイギリス・オックスフォード大学で研究を続けるその原動力は、一体どこにあるのか。

「オックスフォードで研究できることが、すごい楽しい。遺伝子の分野だと世界で最先端の技術や研究をしているグループが数多くある。その方々といろいろな話をしたり、研究で詰まっても『こういった技法がオックスフォードで開発されたよ』みたいな論文などを教えてくれる。毎日すごく楽しい生活を送っていて、今も遺伝子の研究をしながら論文や教材を読んだり、プログラムについて勉強をしたりと新しいことを学びながら研究を進めている」

 「研究が楽しい」という、昔と変わらない思いで研究を続けているが、今は新たな目標があるという。

「病気がない世界を作りたい。人間のゲノムを読み取るだけで、この人はどういう病気にかかりやすいか発見することができたら、発症する前の段階から予防策をとることができる。僕は遺伝子がすごい好きで、研究をこれからも続けたいが、世界中で病気がなくなり、みんなが幸せに生きていけたらいいなと思っている」

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 『ABEMAヒルズ』に出演したサイエンスコミュニケーターの佐伯恵太氏は、田上さんが高校生の頃に発表した蚊の研究について、「子どもの頃から好奇心で“蚊ハウス”まで自作して、本当に素敵だなと思う。研究というのは、『あれ、なんで妹だけ刺されるんだ』といった身近な疑問に対する着眼点が大事」とコメント。

 SSHについては、「昆虫少年や身近なものに疑問を持っている小中高生はいるが、高校生になると徐々に好奇心よりも受験のための勉強になっていく。SSHでは理数系の科目が多いだけではなく、主体的に考えたり、大学レベルの勉強ができたりする。さらに言えば、大学の研究者と共同研究ができるなど、実践的に大学レベルに引き上げるはしごが機能している」と絶賛した。

 一方で、田上さんのように好奇心や学力を維持する秘訣はあるのか。佐伯氏は、一番興味があることを研ぎ澄ませることが大切だと語った。

「僕は生物の授業が好きで、その中でも特に興味が湧いてくる単元がある。そういうものについて参考書を読み込んだり、自分で検索して調べたりして研ぎ澄ましていくと、『ここも、ここも知識が必要に』と広がっていく。受験勉強であれ、そういうものが発見できたら幸せだと思う」

(『ABEMAヒルズ』より)

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