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5月4日、プロレスリング・ノアが約1年ぶりとなる両国国技館でのビッグマッチ『MAJESTIC 2023』を開催。メインイベントは、“ノアの舵取り”を自認する王者ジェイク・リーが、丸藤正道を迎えうつGHCヘビー級選手権2度目の防衛戦が行われた。

 昨年まで全日本プロレスのトップレスラーとして活躍し、今年1月からノアに本格参戦したジェイク・リーは、3.19横浜武道館で清宮海斗を破りGHCヘビー級王座を早くも奪取すると、4.16仙台では中嶋勝彦を破り初防衛に成功。ノアの若きエース清宮からベルトを奪い、ノアの強さと怖さの象徴である中嶋を乗り越え、今回、ノアそのものの象徴である丸藤正道と対峙することとなった。

 身長192cm、体重110kgと現在の日本プロレス界でもトップクラスの体躯を誇るジェイク・リーは、その巨体を武器に瞬く間にノアの舵取りを担う存在として君臨。対する丸藤は身長176cm、体重90kgとかなりの体格差があるが、丸藤はジュニアヘビー級時代から高山善廣、田上明、森嶋猛といったジェイク以上の体格を誇るスーパーヘビー級を相手に技で対抗してきた実績があり、今回の試合でもその本領が大いに発揮された。

 序盤こそ体格差、パワー差を前面に押し出すジェイクにペースを握られた丸藤だったが、三角跳びスワンダイブ低空ミサイルキックで場外に落とすと、ハンマーロックを極めたままジェイクの右腕を鉄柱に打ち付け、ここから執拗な腕殺しの一点責め。右腕に虎王(ヒザ蹴り)を叩き込み、4の字固めを腕に極めるという丸藤ならではのひらめきも見せる。

 これに対しジェイクが豪快なボディスラムやジャイアントキリング(ランニングニーリフト)で形勢逆転を図るも、丸藤はエプロンサイドで不知火を決めてジェイクの顔面をマットの硬い部分に叩きつけ、さらにフロム・コーナー・トゥ・コーナー(スワンダイブ式長距離低空ミサイルキック)、雪崩式不知火など機動力を活かした攻撃を駆使。さらにパーフェクト・キーロックで腕殺しを続行しペースを握らせない。

 そして勝負と見た丸藤は、トラースキックから虎王、さらに放送席の武藤敬司を思わせるレフェリーを踏み台にしての虎王から、真・虎王というフルコースを決めるが、ジェイクはカウント2で返す。

 ここで丸藤がとどめとばかりに、昨年、武藤からGHC王座を奪った技である虎王・零を狙うが、ジェイクはこれを決めさせず逆にハイキックでダウンを奪うと、ニーリフトから豪快なハイアングルのバックドロップ。そしてジャイアントキリングで丸藤をコーナーまで吹っ飛ばすと、最後は走り込んでの串刺しフロントハイキックで丸藤のアゴを打ち抜き、3カウントを奪取! ジェイク・リーが、ノアの象徴・丸藤を破り、GHCヘビー級王座2度目の防衛に成功した。

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 試合後、マイクを握った王者ジェイク・リーは、戦前「腐っても丸藤」と自身を称していた丸藤正道に対し、「丸藤正道選手、あんたは腐ってなんかねえよ。あんたが残したものは腐らないんだよ」「お客さんを煽るために言ったのかもしれないけど、もう『腐っても』なんて言うんじゃねえよ」と、43歳、キャリア25年を迎えた丸藤の実力に敬意を表すると、あらためて本日のご来場、誠にありがとうございました」と、“ノアの舵取り”らしく、観客への感謝の言葉も述べた。

 そして「お客さん、どうだった? 今日の両国大会。そうだろ? そう思うだろ。プロレス見て元気もらえるだろ?」と問いかけると、場内から「ジェイク」コールが巻き起こり、最後は「お客さんありがとう。その辺でOKだ。ここからもっともっと盛り上がるぞ。なぜ、俺がそこまで断言できるか。それはだな、いまベルト、そして舵を取っているのが俺だからだ!」と叫んで、両国大会を締め括った。

 その姿はもはや侵略者ではなく、ジェイク・リーが本当の意味でノアの舵取りになりつつあると言えるだろう。

 この日、GHCヘビー級次期挑戦者に名乗り上げるレスラーは現れなかったが、ジェイクは「5.14後楽園でいろいろな動きがあるだろう」と予測。6月9日にはノア、新日本、全日本の合同興行『ALL TOGETHER AGAIN』(両国国技館)も控えており、このままジェイク・リーがノアの顔としてその大会にも出場するのか、それともベルトを奪い返すノアの選手が出てくるのか。ノアがまた新たな展開を迎えつつある。

写真/プロレスリング・ノア

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