15度目の欧州制覇を目指す王者と、悲願の初優勝を目指す最強の挑戦者。今月9日(現地時間)に行われるチャンピオンズリーグ(CL)準決勝は2シーズン連続で同じカードとなった。それでは「レアル・マドリード対マンチェスター・C」の注目の一戦をプレビューしていこう。
■レアルの伝統
クラブの歴史を見れば圧倒的にレアル・マドリードに分がある。レアルはチャンピオンズカップ時代を含め、歴代最多となる14度の欧州制覇を誇る。ジネディーヌ・ジダン監督の元で2016年からチャンピオンズリーグ3連覇を達成したほか、昨シーズンも欧州の頂きに上り詰めている。
そんな絶対的王者は、今季を含めて直近13シーズンで、なんと11回もベスト4に駒を進めている。ここ13年の準決勝進出率は驚異の「85%」で、そのうち5シーズンで頂点に立っている。ちなみに、準決勝進出を逃した2回のうち1回は2019-20シーズンのことで、その時はベスト16でマンチェスター・Cの前に計2-4で敗れている(もう1回は2018-19シーズンの16強アヤックス戦)。
ちなみにレアルは1992年に大会がCLに刷新されて以降、今シーズンが16度目のベスト4進出。過去15回のうち8回は決勝まで勝ち上がっており、決勝では8戦全勝という圧倒的な勝負強さを誇っている。
対するマンチェスター・Cは、これが3シーズン連続での準決勝進出。2020-21シーズンは準決勝でパリ・サンジェルマンを計4-1で退けるも、決勝でトーマス・トゥヘル率いるチェルシーに0-1で敗れて苦汁をなめた。昨シーズンも順当に準決勝まで勝ち上がったが、延長戦の末にレアル・マドリードに敗れて4強で散っている。
マン・Cにとっては悲願の初優勝を目指しているところになるが、今シーズンはプレミアリーグとFAカップでも優勝を狙えるため、1999年のマンチェスター・Uに次いでイングランド勢として史上2チーム目となるCLを含めた“トレブル(3冠)”に迫っている!
■対戦成績
レアルとマン・Cが欧州カップ戦で対戦するのは今回で9回目。過去8戦は「3勝3分2敗」と全くのイーブンだが、最近4度の対戦に限るとマン・Cが3勝1敗と勝ち越している。直近の対戦となっている昨シーズンの準決勝は1勝1敗で、結果的にレアルが2戦合計スコア(6-5)で競り勝っている。
その準決勝の対戦は壮絶な打ち合いとなった。マンチェスターで行われたファーストレグは、ホームのマン・Cが開始11分で2点をリードしてレアルを圧倒。60%のボール支配率を誇って押し込み続けたが、白い巨人の鋭いカウンターに手を焼くことに。FWヴィニシウス・ジュニオールのドリブル突破からのゴールやFWカリム・ベンゼマのPKによるパネンカなどで3失点を喫し、4-3で勝利するも手放しで喜べる結果ではなかった。
続くサンティアゴ・ベルナベウでの第2戦でも、マン・Cはレアルの勝負強さを思い知らされた。マン・Cは73分にリヤド・マフレズのゴールで先制し、2戦合計5-3と2点もリードして89分を迎えたのだが、ドラマが待っていた。英国放送局『BBC』が「そこから“ロドリゴ”が起きた」と試合を振り返ったように、ブラジル人アタッカーが奇跡を起こしたのである。
2点を追うレアルは、90分に途中出場のブラジル代表FWロドリゴがゴール前に飛び込んで1点差に迫ると、その90秒後の後半アディショナルタイム1分にも再びロドリゴが今度はFWマルコ・アセンシオのクロスに頭で合わせて2戦合計5-5に。レアルが土壇場で追いついた。ちなみに、CLの歴史において90分以降に一人で2得点した選手は史上4人目だったという。
延長戦に入ると、バロンドールを受賞することになるFWベンゼマが自ら得たPKを沈めて勝負あり。幾度となくCLで奇跡を起こしてきたレアルが、再び魔法の杖を振ってシティを沈めた。2戦合計6-5で勝利したレアルは、決勝でリヴァプールを1-0で倒して「La Decimocuarta(14度目)」の欧州制覇を果たしている。
■ペップとレアル
バルセロナの英雄である“ペップ”ことジョゼップ・グアルディオラは、これまで監督として宿敵レアルと21回対戦して「12勝4分け5敗」という圧倒的な戦績を残している。バルセロナを率いていた頃には15回の対戦でわずかに2敗(9勝4分け)だった。だが、その後はバイエルンとマン・Cを率いて6戦で3勝3敗と五分の成績だ。
ペップは、これが自身10度目となるCLベスト4進出(バルセロナ4回、バイエルン3回、マン・C3回)。これは大会最多記録なのだが、過去9回の準決勝では6度も敗退しており、それも最多記録となっている。バルセロナ時代に2度優勝し、シティで1度だけファイナルに進出した以外は、準決勝で涙を呑んでいる。そのうち2回がアンチェロッティの率いるレアルが相手だった。
バイエルン時代の2013-14シーズンには準決勝でレアルに2戦合計0-5の大敗を喫し、前述の通り昨シーズンの準決勝でもアンチェロッティのレアルの前に屈している。そのほか、ペップがCL準決勝で敗れた敵将はジョゼ・モウリーニョ(インテル、チェルシー)、ルイス・エンリケ(バルセロナ)、ディエゴ・シメオネ(アトレティコ・マドリード)となっている。
ペップにとってアンチェロッティ監督とのCLでの対戦は、前述の準決勝の2度だけ(計4試合で1勝3敗)。しかし、他の公式戦を含めるとペップが5勝3敗と勝ち越している。アンチェロッティがイングランドのエヴァートンを率いていた頃に4回対戦し、ペップが「12得点2失点」の合計スコアで全勝している。
■点取り屋たち
やはり注目は両チームの得点源だろう。レアルには酸いも甘いも噛み分けた35歳のFWベンゼマがいる。これまでCLでは150試合に出場して90ゴール。次の出場で元バルセロナのMFチャビ(151試合)に並び、CL出場数で歴代4位タイとなる。そしてマン・C戦でネットを揺らせば同大会で通算91ゴール目となり、バルセロナのポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキと並び歴代3位タイの得点数となるのだ。
ちなみに、これまでCLで通算100ゴールを超えているのはクリスティアーノ・ロナウド(141)とリオネル・メッシ(129)の2人だけだ。
対するマン・Cにはノルウェーの怪物こと、アーリング・ハーランド(22歳)がいる。次々に記録を更新する同選手は、CLでも驚異的なペースでゴールの山を積み上げている。最速での大会通算20ゴールと30ゴールを達成したほか、3月14日のライプツィヒとのセカンドレグでは一人で大量5ゴール。ルイス・アドリアーノ、リオネル・メッシに続いてCLで史上3人目となる「1試合5ゴール」を達成した。
ザルツブルクやドルトムント時代を含め、ハーランドはこれまでCLで27試合に出場して35ゴール。チャンピオンズカップ時代を含めた1955年からの歴代得点ランク(予備選を含む)でも既に22位まで上り詰めている。もし今回の敵地での準決勝ファーストレグでネットを揺らすことがあれば、サンティアゴ・ベルナベウで英雄として称えられる偉大なフェレンツ・プスカシュ(36ゴール)に並ぶことになる。
ハーランドはCLで1試合平均「1.3ゴール(27戦35ゴール)」という圧倒的な数字を残している。ちなみに歴代得点ランクのトップ50で「平均1ゴール」を超えている選手はハーランドしかいない。そしてデータ会社『Opta』によると、ハーランドはCLで「58分毎」にゴールを決めており、これは同大会で5点以上決めている選手の中で最高のペースだ。
今季CLでもここまで8試合で12ゴールを叩き出して得点ランク首位を独走中だ。ちなみに、CLにおける1シーズンの最多ゴール記録は、2013-14シーズンのロナウド(当時レアル所属)で17ゴールとなっている。
果たして、2シーズン連続で同カードとなるチャンピオンズリーグ準決勝は、どんなドラマが待っているのか? 「レアル・マドリード対マンチェスター・シティ」の注目の一戦から目が離せない。
(記事/Footmedia)