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 『犬鳴村』『樹海村』『牛首村』の “恐怖の村”シリーズを手掛けたJホラーの巨匠、清水崇監督の最新作『忌怪島/きかいじま』が、6月16日(金)より公開する。閉ざされた島の中で起きる不可解な連続死。VR(バーチャルリアリティ)を研究するチーム・シンセカイのメンバーがその謎を解き明かそうと奔走する姿を描く。チームのメンバーで、非科学的なことを信じない主人公、天才脳科学者・片岡友彦役を演じるのは、ホラー映画初挑戦となるなにわ男子の西畑大吾。シンセカイのメンバーの一人、深澤未央を演じた生駒里奈に、作品への想い、撮影時の思い出を聞いた。

生駒里奈はお化けと“戦っちゃう派”「舐められちゃいかんって思ってやっています(笑)」

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――本日はよろしくお願いいたします。まずは、オファーがあったときの率直なご感想から教えてください。

生駒里奈(以下、生駒):私は、いただいたチャンスは全部やると決めているので、まずはやりますとすぐお返事しました。台本を読むと、私が演じる深澤未央という役は大きく目立つ役ではないのですが、作品のバランスを取る役割があるという印象を持ちました。そこにチャレンジしながら今回は頑張ってみようと思いました。

――バランスを取るというのはどこから読み取ったのでしょうか。

生駒:台詞がたくさんあるわけではないので、だからこそ普通の人でいようと思いました。癖の強いキャラクターが多いので、私が癖を出してもケンカになると思いました。共演者の方のお芝居を見ながら引きの演技を心掛けました。これまでは、“生駒ちゃん”のキャラクターもあり、舞台もありがたいことに真ん中に立たせていただくことが多い分、引くということがわからなかったので、こういう役柄を経験できたことは嬉しかったです。

――演じられた未央さんは、プログラマーで普段の生駒さんとは全く別のお仕事かと思います。引く演技プラス、役作りはどのようにされましたか。

生駒:監督が一人一人の設定を細かく作ってくださっていたので、まずはそれにそって演じました。衣装合わせの時に設定が書かれたものを渡してくださって、そこにシンセカイチームの人間関係やキャラクターのバックボーンなどがすごく細かく書いてありました。監督の頭の中には宇宙のように広がっていたので、それに合うようにチューニングをしていった感じです。未央は頭もいいし、私よりもコミュニケーション能力のある子なので、普段の自分より2段階、3段階テンションをあげて演じました。

――監督の宇宙のように広がる設定をどのように落とし込んでいきましたか。

生駒:深くは考えてないかもしれないです。まずは、乗っかって、怖いと感じれば怖いと思うし、切ない、苦しいと思ったらそのままの感情を表現しました。監督は、そこまでやってくれるの? と驚くくらいどの場面でも細かく丁寧に演出してくださったので有難かったです。あと役作りとしては、本当に人が怖いと思っているときに出す悲鳴を出そうと意識しました。全体のバランスを見ながら考えましたね。

――ちなみに生駒さんが実際に怖い時に上げる悲鳴はどんな感じですか。

生駒:私は、悲鳴をあげないです。おい!って、怒っちゃいます(笑)。戦っちゃう派ですね。なんとかして対抗できないかって。お化けが出たとしても、キャーっていうよりは、怒りを飛ばします。絶対にいるなって感じるホテルなどでは、「今日は泊まるから!こっちが客だから!」というスタンスでいっています(笑)。

――お化けとも対等な立場で向き合うんですね(笑)。

生駒:お化けも最初は人じゃないですか。最初は純粋だったのに、いろんな辛いことがあってネガティブ要素の塊が巨大化しちゃったから。お化けに対しても対人間に対しても、舐められちゃいかんって思ってやっています(笑)。

――ホラー映画に対しての恐怖心や苦手意識はないですか。

生駒:ないです。むしろ楽しいです。普通のお芝居よりもファンタジーじゃないですか。フィクションの中でもよりファンタジー要素があって。走って逃げたり、普段はしないようなことをするので、とても楽しいです。お芝居をするときは、普段の生活からかけ離れたことをしてみたいと思っています。だから、ホラー映画の撮影現場は大好きです。

全員が虜になった奄美大島の“ビッグツー”「みんなでビッグツーTシャツを着たときの感動は今でも忘れられません」

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――撮影は奄美大島で行われたそうですが、島での思い出を教えてください。

生駒:最初、撮影が奄美大島で泊まり込みだと聞いたときには、「え、本当に?」と、ビックリビックリでした。

――奄美大島に対してのビックリ?

生駒:私は秋田出身で雪国育ち。12月生まれなので、冬は大好きですが、夏はとにかく苦手です。蚊も苦手で、刺されると化膿してしまうので。奄美大島に行ったら私は一体どうなってしまうんだろうと心配でした。でも、実際に行ってみたら、初めての南の島はイメージと全く違うものでした。景色が美しくて、海水はさらさらしていて、海いいじゃんって思えました。ただ日焼けと蚊に刺されるのはとにかく避けようと思っていたので、ずっと長袖を着ていました。楽屋に蚊が出たら率先して退治していました。

――(笑)。オフの時間はどんな風に過ごされましたか。

生駒:奄美の伝統芸能でもある泥染めの体験に平岡祐太さんと、祷キララちゃんと、川添野愛ちゃんと4人で行きました。雨が降っていましたが、奄美大島の緑がすごくイキイキしてきてキレイでした。田んぼのようなところで、みんなで裸足になって泥の中に足を突っ込んで「うぇ~い!」って盛り上がりました。来ることができなかったメンバーの分のTシャツも作ったりして。まるで修学旅行みたいで楽しかったです。あとは、奄美大島といえばビッグツーという大型総合スーパー。なんでも揃っている最強のお店で、スタッフさんも含めて、全員がビッグツーの虜になりました。「ビッグツーTシャツ」というTシャツが売っていて、みんなでビッグツーTシャツを着たときの感動は今でも忘れられません。

――今でもビッグツーTシャツは持っているんですか。

生駒:今も持っています。大切にしています。自然はとても美しいですが、コンビニもたくさんあるわけではないし、やっぱりときどき都会が恋しくなるというか。奄美大島では、ビッグツーにどれだけ救われたことか…。

西畑大吾とセンターの悩みを共感しあった「神様が今のタイミングでぶつけてくれた大きな意味」

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――お話を聞いていると、共演者のみなさんの仲の良さが伝わってきます。

生駒:年齢も近いし、みなさん本当にいい人たちで。最初は緊張していたけど、奄美大島の陽気な環境にも助けられて、すごく仲良くなりました。

――共演者のみなさんから刺激を受けるようなことはありましたか。

生駒:西畑君の名前を出しておきますかね(笑)。

――ありがとうございます(笑)。

生駒:西畑君とは、アイドルと俳優という共通点があって、これまでには言えなかった悩みを共感しあえたことがとても嬉しかったです。

――どんな悩みをお話されたんですか。

生駒:彼も私もセンターが多かったので、大変だよねって話をしました。デビュー当時、いきなりセンターになって、辛いとかこのポジションは苦手なんて、口が裂けても言えませんでしたし、今でもなかなか人には言う機会はありません。でも、西畑君とはそういう話をできるくらい仲良くなれました。本当に大変だよねって。アイドルというジャンルの人とポジションの話をするというのがとても新鮮でした。ここにきて、当時大変だった自分に対して「大変だよな」って声をかけてもらったような気持ちになりました。

――アイドルは誰もがセンターを目指しているというイメージですが、きっとご本人にしかわからない悩みがあるんですね。

生駒:とくにAKB48グループは、ポジションを明確にしていたじゃないですか。一般の方々でもセンターがどれだけすごいかわかるときに、パッと出てきた私がそのセンターを務めたので本当に大変でした。正直、あまりに大変過ぎてデビューから3年くらいの記憶があまりないんです。でも、辛かった、大変だったという気持ちはしみ込んでいて。いまだに、舞台でも0番には立ちたくないなと思うことがあるくらいです。真ん中に立つのがちょっと嫌なこともあるし。頑張ったねとか大変だったねって言ってくれる存在を神様が今のタイミングでぶつけてくれたことは、大きな意味があったのかなと思います。

――センターとしてのプレッシャーや重圧がありましたか。

生駒:当時の私は「何でこんな人をセンターにするの? 私できないのに。あてがわないでほしい」という気持ちが大きかったです。なにをすればいいかわからない。悩みを言える人もいない…。なので、1回、センターを外れたときに、あまりにうれしくて、「あー!やっと終わった~!大変だった」って、駐車場を駆けまわった記憶があります(笑)。

――今はいろいろ経験を積まれましたが、再びセンターはいかがですか。

生駒:お腹いっぱいです(笑)。

――(笑)。女優業では、ポジションのことは考えますか。

生駒:アイドルは、センターとアンダーメンバーで、アンダーメンバーの子は私の役割ってなんだろうというわからなくなっちゃうことが多かったりするんです。なんならセンターでもわからなくなることもありました。でも、お芝居には全員に明確な役割があると感じています。舞台は、アンサンブルと言われている人たちがいないと成り立たない。どの役にも命がけのポジションがあります。今回の『忌怪島/きかいじま』も、登場人物全員の仕事が明確なことがとても好きです。

「映画は怖いけど、お化けの怖さじゃないかもしれない。正しいメッセージを若い人に感じてほしい」

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――今回はメタバースと現実世界が交互に描かれる作品となっています。メタバースについてはどんな印象を持っていますか。

生駒:難しいな~ってでも、科学が進化すればするほど、世界が広がるという良さはありますよね。自分の足では届かない、会いにくい人にも簡単に会えるとか。とくに今回、コロナ禍を経ての撮影だったのでとても必要だなと思いました。でも、作品のような怖い思いはしたくないですね。(笑)

――本作のような怖いことも起きるかもしれませんね。

生駒:データの中に感情を取り残されて本体が死ぬんじゃないかって怖くなっちゃいます。できれば私は、自分の足で会いに行きたいです。人間は直接会いに行けることを楽しめる動物だって思っています。例えば、舞台なら見に行っても出ていてもそう感じます。直接会える喜びは、奪われたくないなって常々思っているので。科学が進化して便利になるのもいいけど、同じくらいアナログも大事にしていきたいです。

――ありがとうございます。最後に映画の見どころと劇場に足を運ぶ皆さんにメッセージをお願いします。

生駒:清水監督が作るホラーなので、しっかり怖いです。ただ、怖いけど、果たしてその怖さってお化けの怖さなのかと考えたときに、実はそうじゃないかもしれないと思いました。私は、野愛ちゃんと完成作品を一緒に見て、切なくて二人とも大泣きしました。今も地球のいろんなところで争いごとが起きているけど、それは紀元前からあったこと。そういうメッセージがたくさん描かれています。是非、これからの未来を作っていく若い人たちにそのメッセージを正しく受け取ってもらって、世界が変わってほしいって思います。映像は怖いけど、大丈夫。生駒ちゃんも観れたから、みんな観れると思います!

衣装協力:Ground Y 
スタイリスト:津野真吾(impiger)
ヘアメイク:スズキユウジ(MAXSTAR)

取材・文:氏家裕子
写真:You Ishii

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生駒里奈が期待を寄せる若手俳優は?「もっと男らしいところもみたい」
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