11日未明、千葉県木更津市で震度5強の揺れを観測した地震が発生。駅の蛍光灯が外れ、建物の瓦が落ちるなどの被害の他、千葉県、東京都、神奈川県などにあるエレベーター約3000台が停止した。
ところで、最新設備が搭載されたタワーマンションは安全なのか。一般的には「地震が起こってもタワマンは安全」「“あえてしならせる”ことでエネルギーを逃がせる」というイメージもあるが、専門家は「たくさん揺れれば折れる」と話す。
ニュース番組『ABEMA Prime』ではその地震リスクについて詳しい話を聞いた。
▪️地震に弱いタワマンの条件
地震対策では建物の強度ばかりが注目されるが、名古屋大学名誉教授で政府の地震調査研究推進本部政策委員会で委員長を務める福和伸夫氏は「日本の耐震基準は最低限のことしか定められておらず、“基準を守っていれば絶対に安全”というものではない。基本的に日本のどこにでも同じ建物を作ることができるが、大切なのは柔らかい地盤はよく揺れるということ。上物ばかりを強化してもダメだ」と、「地盤」の重要さを指摘。
タワーマンションは「普通の建物とは違う設計をする」といい、「揺れることを前提に設計し、地盤の揺れやすさは“それなりに”しか考慮しない」と述べた。
タワーマンションは、免震(揺れを受け流す)・耐震(揺れに耐える)・制震(揺れを吸収する)の構造を取り入れ、「“あえてしならせる”のでポキっと折れることはないのか」という問いには、「そんなことはない。たくさん揺れれば折れる」と断言した。
また、建物の高さは重要だという。「例えば振り子が特定の周期で揺れるように、地盤も建物も『揺れやすい周期』を持っている。この2つの周期が重なると非常に大きく揺れるので、それぞれの場所に“建てたら危ない高さ”がある。周期のチェックをしているかは設計書を見ないとわからないが、よっぽど大事な建物以外はしていないだろう。それをすればするほど作りにくくなるからだ」と述べた。
▪️強い建物とは?
では、私たち生活者はどのように「安全なビル」を見分ければよいのか。福和氏は、「使い勝手が悪いビルは安全だ。なぜなら、壁が多くて、柱が太くがっちりしているから。リフォームして中を改装すれば使い続けることができる」と答えた。
新しい戸建て住宅とマンションでは、前者のほうが地震に強いという。「ビルはちゃんと構造計算するが、戸建て住宅はそれをせずに余裕を持った設計をしている。過去の地震の経験に基づいて、“これだけ壁を入れないといけない”ということを考える。科学を信じていない」との見方を示した。
とはいえ、福和氏は「どんな建物、どんな場所に住むかは個人の価値観次第だ」と強調し、最後にこう述べた。
「2000年前の建築家・ウィトルウィウスは『強無くして用無し、用無くして美無し、美無くして建築では無い』と言った。『強』は強さ、『用』は使い勝手、『美』は美しさ。これらを全部兼ね備えたものが良い建築だ。どうも私たちは、今は強さのことは人任せにしている。安全を最重視するか、それとも広さや便利さ、見栄えを大事にするか。建築基準法さえ守っていれば安全だよねということにしていないだろうかと、頭の片隅に置いていただくといい」
(『ABEMA Prime』より)
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