先月、週刊SPA!に掲載されたある記事が話題になった。テーマは「炎上させすぎ、偽正義」「現代デジタル社会の闇」。インタビューに答えたのは“迷惑動画”が拡散されてしまった吉田さん(男性・仮名)だ。
【映像】“おたおめツイート”炎上JK、弟は回転寿司店を救った「大トロ少年」だった(実際の動画)
バイト仲間との飲み会で、酔った勢いから全裸になった吉田さん。職場を解雇され、300万円の賠償金を負った上、名前までネット上に晒された。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した週刊SPA!編集長の石井智氏は「取材のきっかけは1月に起きた回転寿司店で起きた迷惑動画だ」と話す。
「今、迷惑動画や写真がSNS上に蔓延している。炎上している当事者以外にとっては一瞬のことだが、炎上した人はその後も人生がずっと続いている。必要以上の罰を与えている正体は何か。その事実を知りたくて取材をした」
吉田さんが炎上したのは昨年9月。その後、大学を停学処分になった。
「面接前にまず名前を検索するみたいで、バイトはおろか就活なんて無理」「僕の人生は終了した」(吉田さんのインタビューより)
精神科に通院し、自殺未遂をするまで追い詰められた吉田さん。現在も就職できていないという。
石井氏は「加害者は正義の名のもとにやっていて、全く悪意はない」と話す。
「加害者は『なんならいいことをしている』という感覚の人が多い。本来、罰は法律に基づいて与えられるものだ。彼らの『炎上した人に罰を与えよう』という考え方が一番の問題だと思う」
ほかにも、ネットで大炎上した経験を持つ人がいる。約7年前の高校1年生の時、くりおねさんもTwitterで炎上を経験した。
「ある人の誕生日をお祝いする休日に『おめでとう』とツイートをした。その方の写真をデコレーションして投稿したら、学校から呼び出しを受けた。親も一緒に呼ばれて『携帯を解約するか学校を退学するか、どちらか選べ』と言われた。学校からは該当のツイートとアカウントを消すよう言われた。なぜこんなに大きな騒ぎになったのか、今もちょっと分からないくらいだ」
くりおねさんのツイートには批判が殺到し、瞬く間に拡散。本名や通っていた高校が晒された。その後、人間関係にも悩むことになり、数カ月後に高校を退学した。
ネットはこりごりかと思いきや、くりおねさんは今、動画配信者して名を馳せている。TikTokのフォロワーは36万人を超え、中でも満面の笑みで回転寿司店の大トロをほおばる弟が1500万回再生以上を記録。「大トロ少年が迷惑動画の大打撃から救った」と話題を集めた。
くりおねさんは、昨今のネット炎上をどのように見ているのか。
「回転寿司店で醤油さしを舐めたりした迷惑動画はひどいと思う。取り返しがつかないし、裁判沙汰にもなる。ネットはすごく面白いし、いいおもちゃにもなるが、使い方を間違えればこっちがおもちゃにされる。おもちゃどころか、ナイフになって人を傷つけてしまうものもある」と警鐘を鳴らす。
番組司会のテレビ朝日・平石直之アナウンサーは「結果的にはインフルエンサーだけでなく、マスメディアも拡散のメカニズムの中に組み込まれている。私たちにも突き付けられている責任だ」と指摘する。
石井氏は「報道機関はプライバシーの侵害や名誉棄損をしないよう、ルールを守りながらやっているが、やっぱり炎上に加担していることは理解しないといけないと思う。僕もメディアの人間だが、報道の瞬間だけで終わるのではなく『その後も炎上した人の人生が続くんだよ』という要素を踏まえた上で、きちんと取り上げていく必要がある」と話す。
ギャルタレントのあおちゃんぺは「炎上してしまった人の側の話ばっかりになっているが、逆を考えると、全裸になった人がいたバイト先のオーナーにも、その後の人生がある」とコメント。
「スタッフのネット炎上によって、オーナーがお店を畳むかもしれない。あと、経営者目線になると、過去にネットで炎上した人は雇いたくない。お互いに人生がある。かわいそうではあるけど、難しい問題だと思う」
(「ABEMA Prime」より)
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