自衛官の人材確保について「多少のタトゥーがあっても採用すべき」といった案が話題を集めている。国会で発言したのは、自民党の佐藤正久参議院議員だ。
【映像】なんだかすごい…「ゲームルーム」や無料提供のスナック類も!米軍のサポートセンター(画像あり)
背景には志願者の減少がある。慢性的な定員割れが続き、2022年度の任期制自衛官の採用では、候補生が計画数の4割ほどしか集まらず、過去最低となった。
自衛官の人材確保のために何が必要なのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、専門家と共に考えた。
そもそも、なぜ刺青があると自衛官に採用されないのか。国防ジャーナリストで『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』の著者である小笠原理恵氏は、こう話す。
「タトゥー塗料の青色が金属を含んでいる。例えば戦場や訓練で大きな負傷をして、MRI検査を受ける時、金属を含んでいる塗料は焼けてしまう。どのような刺青なのか、染料を医者がわざわざ聞く時間はない。だから、一般的に分かりやすい健康な人がいい。自衛官には一般の生活にも制限がある。外に出る時でも『襟つきシャツじゃないとダメ』と言われる組織だ。今すぐタトゥーを認めるのは難しい」
一方で、小笠原氏が指摘するのは、自衛官の給与・待遇改善だ。
「今まで戦うことを考えていなかったから、給与も含めてさまざまなものが足りていない。まず待遇改善をして、入りやすいように賃金を上げるべきだ。タトゥーをつけている人がどれくらい世の中にいるのか。なぜ、そんなニッチな層を狙うのか。まずは一番大きな問題に手をつけてほしい。そういった対策をしても無理なら、タトゥーが入っている人の採用を考えればいい。順番がおかしい」
自衛官候補生(3カ月間)は、月額14万6000円。2士に任官されると「任用一時金」として22万1000円が支給される。2士任用後は俸給17万9200円(高卒)、19万8100円(大卒)となり、退職手当は2年間勤務で約58万円だ。
一方で、米陸軍の「人材確保プログラム」を見ると、入隊ボーナスとして、一部の職種に合計で最大5万ドル(約723万円)を支給。また、外国語などの専門知識を習得していれば、最高4万ドル(約539万円)が支給される。除隊後の住宅ローンでは金利優遇され、軍歴者を雇用する企業を支援するなど、待遇は手厚い。さらに、軍人をサポートする「USOセンター」では、ゲームルームや無料提供のスナック類が用意されている。
「米軍は給料だけではなく、入隊後のボーナス金額がかなり高い。最下位の軍人でも月額1695ドル(約23万2000円)だ。給料も3年間働けば30万円、40万円と毎回どんどん上がっていく。ただし、素行が悪くて、犯罪をしたり、性が合わない人はすぐに除隊される。いい人をたくさん採って、ものすごく優遇するシステムだ。必要な人材に対しては、返さなくていい奨学金が支給されて大学に通える制度もある」
また、日本で自衛官になりたい人が減っている理由として、小笠原氏は五ノ井里奈さんの告発に言及。
「彼女の訴えを日本の自衛隊は一回隠蔽した。その経緯まで全部報道された。だから『自衛隊はセクハラやパワハラを容認するのではないか』と思われている。本人だけでなく、ご家族が『うちの息子や娘がそんなところに行くのは心配だ。やめてくれ』となる」
元自衛官の五ノ井さんは、現職時代に受けた性被害を実名で訴えた。この告発によって「ハラスメントがないか、自衛隊内のかなり深い部分に監査が入った」と小笠原氏は語る。
「もちろんパワハラや暴力は良くない。ただ、どうやっても言うことを聞かない人が出てくる。そうすると、真面目にやっている人にも影響が出て、全体が言うことを聞いてくれない状態になる。どのくらいまで怒鳴っていいのか、強い口調で言っていいのか、考えながら教育していく。そうすると、教官たちがメンタルをやられて、退職してしまうことが多い。叱責の度合いはかなり難しい」
(「ABEMA Prime」より)
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