19日、各国首脳が視察した原爆資料館は、かつてバラク・オバマ氏が現職のアメリカ大統領として初めて被爆地・広島を訪れた際に注目された。当時の様子を語る資料館の前館長にオバマ氏とのエピソードや各国の代表に伝えたい思いを聞いた。
7年前の2016年5月、核兵器の脅威と平和への思いを語ったスピーチや、被爆者のもとに歩み寄る姿が世界中から大きく注目されたオバマ氏の広島訪問。スピーチの前、平和公園に着いたオバマ氏が真っ先に向かったのが被爆者の遺品や被爆の惨状を示す展示品が並ぶ「原爆資料館」だった。
メディアも入れなかった完全非公開による見学の様子について、当時館長を務めていた志賀賢治氏に聞いた。
「(当時の)安倍総理と岸田外務大臣、それから県知事、市長の4人でお迎えした。ひと月前の外相会談の際は、ケリー国務長官はじめとした外相たちが本館をコース通りに歩かれたので、そうなるだろうと思い込んでいたが、直前に『時間がないのでロビーで』という方針が出された」
本館と東館の2つの建物から構成される資料館。オバマ氏は、安倍元総理らに迎えられながら東館入り口から中へと入った。
東館から渡り廊下で本館へと進み、見学するのが本来のルートである資料館。当時は、被爆して白血病を発症し12歳で亡くなった佐々木禎子さんの折り鶴についての説明を熱心に聞いていたことなどが大々的に報じられていたが、オバマ氏の滞在時間は10分ほど。遺品などの資料も、普段展示してあるものではなく、急きょ収蔵庫から運んできたものだったという。
普段は何もない場所に急造の展示スペースを用意した志賀前館長。訪れたオバマ氏に、館長として資料の説明をすることはなく、その様子を離れた場所から見ていたとのこと。志賀前館長は、短い時間のなかでも感じたオバマ氏の人柄についてこう話す。
「おそらく『この人が館長だろうな』と思われたのか、資料館を出られる際に振り返ってにこやかに会釈をされた。そのときに『いい人なんだな』とほっとした」
オバマ氏来館から3年後の2019年、資料館はリニューアル。原爆が投下された1945年8月6日に何が起きていたのかを、よりリアルに再現する施設へと生まれ変わった。原爆の語り部が減るなか、被爆者の視点からその悲惨さを伝えるため、犠牲者の遺品や写真など、実物の展示に重きを置いた。資料館は、時間をかけ遺族からの聞き取りを行い、亡くなった人や残された家族一人ひとりの心の声を伝えている。
志賀前館長は広島サミットで各国の首脳が訪れるいま、何を思うのだろうか。
「資料館のリニューアル方針に『一人ひとりの犠牲者の無念さ、苦しみを伝える』という柱がある。それを表現するのが中央にある『魂の叫び』というコーナーだ。展示を見るという行為は極めて個人的な行為なので、そのときは肩書が外れた状態でご覧になるのではないかと期待している。
(アメリカ以外の国の首脳陣も訪れることについては)国々の捉え方もあるだろうし、一人ひとり捉え方も違うだろう。しかし、この資料館の展示をみて“告発する”という姿勢は受け止められないと思う。客観的な事実を淡々と表現している。虚心坦懐に受け止めていただけたら」
(『ABEMAヒルズ』より)
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