少子高齢化が進む日本。生活の基盤となる住宅環境をめぐり議論になっているのが「住宅弱者」の問題だ。高齢者などがさまざまな理由で賃貸住宅への入居を断られるケースが相次いでいるという。
R65の調査(2022年)によると、不動産業者の28.3%が直近1年間に「年齢を理由に高齢者の入居を断ったことがある」と回答。理由は、1位「孤独死による事故物件化」、2位「家賃滞納」、3位「残置物の処理」など、実際にトラブルがあったからだという。
問題はどこにあるのか、住宅弱者を減らすために何が必要なのか。17日の『ABEMA Prime』で議論した。
賃貸住宅管理会社に勤務するタカセさん(仮名)。高齢者など相手によっては入居を断ることもあるといい、「高齢者だから100%断るということではないが、親族の方がいらっしゃることが大前提。親族がおらず、孤独死のリスクが高くなる場合は断っているところはある」と話す。
65歳以上の部屋探し専門の賃貸情報サイト「R65不動産」を運営するR65代表取締役の山本遼氏は「孤独死があると、例えば特殊清掃で100万円ぐらいの費用が必要になったり、身寄りがないと遺品整理もすべて大家さんがやることになったりする。お金以外でも、そこで人が亡くなったという情報が広がり家賃を半額せざるを得ないなど、機会損失を考えると貸しにくいという点は非常にわかる」とコメント。
しかし、「ただ身寄りがある」というだけでは難しいそうで、「身寄りがいても縁を切ったという人もたくさんいらっしゃる。相続人がいるケースは、“この人が全責任を持つ”というわかりやすいケースならいいが、“遠い親戚が十数人見つかった”“お金をどう分配するのか”という話から始まると大変だ。相続人が見つかるまでに半年から1年かかることもあり、その間の部屋をどうするかということが問題になる」と説明した。
R65の調査によると、65歳以上が入居可能な賃貸住宅が「全くない(0%)」と答えたのが25%、「0~20%未満」と答えたのが28.9%と、高齢者が住める物件は少ないのが現状だ。
そうした中でどのように賃貸住宅を選んでいるのか。山本氏は「うちに来られるのは中流家庭の方が多くて、例えば7~8万円で東京都内に住んでいる方がほとんどだ。もう一つは、築40年の物件に新築の時から住んでいる方。長く住んでいて、気づいたら高齢になっていたというような方もいる。築35年以上の民間の賃貸住宅は280万戸あるのだが、それがどんどん壊されている状況だ」と説明。
では、高齢者の入居拒否はどうしたら防げるのか。山本氏は仕組みによる解決が必要だと述べた。
「自治体の支援や公営住宅の拡充、つまり社会保障によって賃貸を借りている高齢者400万世帯を支えるのはなかなか難しい。まだ元気な方が老人ホームに行くことで介護費用が増えているようなこともあるので、自由に過ごしたい方は賃貸を借りられるような世の中にしていくことが大事だと思う。
高齢者は1回住むと13年ぐらい住むと言われている。学生が3人住むよりも、高齢者に1人住んでもらうほうが、実は管理会社にとってメリットがあることもある。最近では、大家さんはOKだけども管理会社が面倒だということでダメと言うケース、逆に管理会社は仲介手数料をもらいたいから入れたいけれども大家さんがなかなかOKをくれないケース、両方がある。経済合理性をこれからどれだけ見ていくかが大事ではないか。
また、志ではなく仕組みで解決していくことが必要で、例えば、見守りや保険をつける。今までの見守りは24時間生体監視みたいなプライバシーに配慮がないものだったが、安価でプライバシーにより配慮したものであれば、大家さんも自分の費用負担でつける、あるいは入居者の家賃を数千円上げてつけるという話になってくると思う。こういうことを、大家さんだけではなく提携している不動産会社にもノウハウを配っていくことで、課題解決につなげていけると思う」
(『ABEMA Prime』より)
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