空港が家族連れで混雑するなど、各地で賑わいが戻った今年のゴールデンウィーク。航空各社の国際線利用者は大幅に増加し、国内線も新型コロナ流行前の水準に回復した。
【映像】年収300万円以下の家庭「経済的余裕ない」アンケート結果(画像あり)
旅行やレジャーで楽しい思い出を作れる子どもがいる一方、懸念されているのが“体験格差”だ。公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」の調査によると、世帯年収が300万円未満の家庭では、小学生の3人に1人が学校以外での体験を「何もしていない」と回答。Twitterでは「どこにも行けないと子どもが惨めな思いをする」「体験の量が違うのは将来に影響しそう」「とはいえ、一人親とか貧困層は厳しい」といった声が寄せられている。
ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した、教育社会学者の松岡亮二氏(龍谷大学准教授)は「小さい頃の体験がAO入試など、学力以外の試験で売りになる」と話す。
「習い事などの経験によって能力を獲得していなくても、ある種のエピソードトークになる。体験格差は教育格差の一つだ。本人が変えられない生まれによって、体験機会に差が出ている」
松岡氏によると、親との普段の会話や休日の過ごし方、日々どのような遊びをするかによって、教育の結果は変わるという。
「体験格差を埋めるために中学校の部活がある。しかし、内閣府の調査を見ると、貧困層の子は無償であるはずの公立校の部活参加率が低い。参加が無料でも、ユニフォームや試合の遠征費などにお金がかかるからだ。本人が選んだわけではない家庭の経済状況や親の理解度によって、経験が一切持てない子どもがいるのは、社会としてはあまりよろしくない」
世帯所得と親の学歴は高い相関関係にある。松岡氏は「例えば、お金がかからない市立の図書館に子どもを連れていくかどうか。データを見ると、親の学歴が高いほど、時間を取って子どもを連れて行く傾向がある。お金だけの問題ではないが、いろいろな要因が重なっていることも意識しないといけない」と説明。
その上で、松岡氏は「小学校4年生くらいから学習塾に通って中学受験をする子は、勉強ばっかりというイメージを持つかもしれないが、親が途中から子育てのパターンを変えていることが多い」と述べる。
「中学・高校で私立に行って勉強ばかりしている人が、小さい頃に多様な体験がないかというと、実はそうではない。そもそも両親が大卒層で恵まれた子は、幼少期からかなりの種類の習い事を経験している。親はキャンプや海外旅行など、勉強以外の多様な経験をさせるが、小学校4年生くらいになると塾に入れて、他の体験的な遊びを少しずつ減らしていく。意図的に子育てのパターンを変えている。全員が全員そうだという話ではなく、データで見る全体の傾向だ」
「子どもの体験格差解消プロジェクト」で発起人を務める、アソビュー代表の山野智久氏は「体験がどんどん有料化しているのは事実だ」とした上で「学習塾に行く選択ができない、ずっと家にいるしかできない子たちに対して、心が豊かになる体験を提供したい。『川に飛び込んだり、キャンプファイヤーって楽しいよね』と伝えたい。事実、親の学歴によって、子どもに与える体験機会に差分が出ている。僕たちのプロジェクトでは、1000人の子どもたちにしっかり予算を使って、体験できる機会を与えたい」と話す。
ゴールデンウィーク中、家族でハワイに行ったという田端大学塾長の田端信太郎氏は「中学2年生の長男が『3日間部活の試合に出てから来たい』と言った。去年の秋に一度アメリカ旅行をした影響もあるかもしれないが、1人で成田空港まで来て飛行機に乗って、ホノルルの空港で合流した。本人が言い出して、1人で来れた。そういう主体性が生まれたことが親としてめちゃくちゃうれしい」と明かす。
一方で、子ども全員が海外旅行を経験できるわけではない。田端氏自身は、体験格差についてどう思うのだろうか。
「与えることは、奪うことにもなる。自分の力でバイトして海外旅行に行った方が感動は増すのではないか。そういう思いも若干ある」
これに対し、テレビ朝日・平石直之アナウンサーは「これは“親ガチャ”の議論になる」とコメント。「親の考えではなく、収入がゆえに経験できない子どもたちにどうやったらリーチできるかを考えたほうがいい。アウトドアが必ずしも正解ではない。経験が吉と出るか凶と出るか、子ども次第だ。場合によっては、一生忘れられない思い出になる。それが全くないまま『家庭環境がこうだったから経験できなかった』という子どもは、できれば減らしていきたい」と述べた。(「ABEMA Prime」より)
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