「もう終わりだろ…」誰もが思ったダウンから、まるでゾンビのように大復活。「コンビニの前で佇むおじさんみたいに」と実況が形容した絶体絶命ダウンからの奇跡の逆転KO劇。さらに予期せぬ結末に実況アナも語彙を失い「なんだこれ…」とただただ驚きの声を漏らした。
5月19日にタイ・バンコクで開催されたONE Championship「ONE Friday Fights 17」。リー・グオジェン(タイ)とジェルテ・ブロマート(ベルギー)の試合は2ラウンド、一度ボディで強烈なダウンを奪われたブロマートが直後に謎の復活。ヒザを連打で衝撃の逆転KOを収めた。
インパクトある「爆肝高手」(中国語で肝臓を爆発させる名手)の物騒なニックネームどおりボディブローを得意とするリーと、ベルギーのムエタイ欧州王者、ブロマートの活きの良い若手対決。
アグレッシブな両者はゴングと共にブロマートがスピンキックを見せると、リーも強引に得意のボディへと拳を振り回す。両者手数を見せるなか、ボディ打ちを見せるリー。執拗な腹パンに徐々にブロマートの顔が曇りはじめる。
2ラウンド開始とともにリーの”爆肝高手”ぶりはさらに過激に。一気に距離を縮めると硬いパンチをブロマートのボディに叩き込む。
ひたすら連打で腹にめり込む拳にブロマートも心が折れたか、リングに座り込んでダウン。明らかにイヤ倒れの状態に、ABEMA実況・小出アキラ・アナウンサーも「ああ、もう座っちゃった…コンビニの前で佇むおじさんみたいになっています」と格闘技中継では余り聞き慣れない例え。視聴者も「爆肝すごいな」「極真みたいだ」「気持ち折れたな」の声。誰もがブロマートの敗戦を確信したが、ここから奇跡の”ゾンビのような”リカバリーを披露。
立ち上がったブロマートは、さらなる腹パン地獄にグッと耐えると縦ヒジ。ボディを貰いながらフックを当てると、バックブロー、ヒザと徐々に手数を増やして反撃開始。一方で連打で疲れた様子のリーが失速すると、ヒジを皮切りにお返しの腹へヒザを連打。
腹を打たれるのは弱いか、クラクラしはじめたリーの顔面にブロマートが連打。そして最後はこれまでのボディへの倍返しのような首相撲から強烈なヒザをグサリ。天を仰いだリーは動けずここで試合終了となった。
リングに座り込んだ際に誰も予想しなかった大逆転に小出アナも思わず「なんだこれ…」とひと言。ゲスト解説の後藤丈治も「(格闘技を)やってればわかりますけど、腹が効いて一度座り込んで返すのは本当に凄いです。あのまま終わるのが普通のパターンです」と現役選手ならではのコメント。
壮絶なボディ攻めに耐えたブロマートはホッとしたような表情で「ダウンした時はコーチが見ているし、みんなテレビで見て応援してたから戦いに戻って勝たなきゃと思ったんだ」と危機的状況を振り返った。劇的な逆転勝利でファイティングボーナスも獲得し「5年間タイで頑張ってきて経済的に厳しいときもありました。やっと友達にメシを奢れるよ(笑)」と笑顔で本音を覗かせた。