ヴィニシウス・ジュニオール

 レアル・マドリードに所属しているブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオールが、ラ・リーガ全体に蔓延する人種差別問題を糾弾した。

 ラ・リーガ第35節が21日に行われ、レアル・マドリードは敵地でバレンシアと対戦。試合は33分にバレンシアのスペイン人FWディエゴ・ロペスが挙げたゴールが決勝点となり、1-0でホームチームの勝利に終わった。だが、同試合ではヴィニシウスにまつわる“事件”が発生していた。

 69分、左サイドからドリブルを仕掛けたヴィニシウスに対して、直前にスタンドからピッチ内に放り込まれていたもう1つのボールをスイス代表DFエライ・キュマルトが蹴り込んだプレーで試合が中断する。キュマルトにはイエローカードが提示されて試合が再開されるかと思いきや、今度はゴール裏からの人種差別的発言に対してヴィニシウスが激昂。その発言者に対してはヴィニシウスだけでなく、最終的にはバレンシアのキャプテンを務めるスペイン代表DFホセ・ルイス・ガヤらも詰め寄り、人種差別発言を止めるよう咎めることに。スタンド全体からはヴィニシウスを揶揄するチャントが歌われるなど、前代未聞の異常事態が起こっていた。最終的にはスタジアムから人種差別発言をやめるようにというアナウンスが発され、およそ10分間ほどの中断時間を経て試合は再開。だが、後半アディショナルタイムには相手選手とのやり合いの中でヴィニシウスのみにレッドカードが提示されるなど、やや後味の悪い結末となっていた。

 試合後、ヴィニシウスは自身の公式Twitter(@vinijr)にて「(人種差別被害を受けるのは)これが1回目でも、2回でも、ましてや3回目でもない。人種差別はラ・リーガにおいて当たり前のこととなってしまっている」と投稿。ヴィニシウスは前述のバレンシア戦だけでなく、レアル・マドリード加入後何度も人種差別の被害に遭っていた。「このラ・リーガではそれが当たり前であるかのように思われている。(スペインサッカー)連盟も同様で、対戦相手もそれ(人種差別的な言動)を奨励するんだ」と訴えた上で、自身の心境を綴った。

「僕は本当にやるせなく思っている。かつてロナウジーニョ、ロナウド、クリスティアーノ(・ロナウド)、(リオネル・)メッシのものであったラ・リーガは、今や人種差別主義者のものとなったんだ。僕を歓迎してくれ、僕自身も愛している美しい国が、人種差別主義者の国というイメージで世界的に知られることに同意してしまった。同意しないスペイン人には申し訳ないが、今やブラジルでは、スペインは人種差別主義者の国として知られている」

「そして、非常に残念なことではあるが、毎週のように起こるすべてのことに対して、僕にはそれに対抗するための手段がない。僕は本当にそう思っているんだ。しかし、僕は強いから人種差別主義者にとことん対抗するつもりだよ。たとえ遠く離れた場所からであろうとね」

 この投稿の直後、ラ・リーガのハビエル・テバス会長がヴィニシウスの発言に反応した。前述のヴィニシウスの投稿を引用リツイートする形で「人種差別問題が発生した際、説明すべき人が説明しないため、ラ・リーガはそれらを説明しようと試みたが、あなたは合意した日程の2つに姿を見せなかった。ラ・リーガを批判し罵倒する前に、ヴィニシウスに正しい情報を提供する必要がある。操られることなく、互いの能力と我々が行っている仕事を理解するようにして欲しい」とツイート。現行のスペインの法律では、ラ・リーガは人種差別発言を行った者やその疑いが持たれる者に対して制裁を科すことのできる機関ではないため、非難することや当局と連携を取ることしかできない。この事実に触れた上で、ヴィニシウスからの批判に言及していた。

 だが、ヴィニシウスは直後に「また、ラ・リーガの会長がSNSに登場した。今回、人種差別主義者を批判するのではなく、僕を攻撃しているね」と反応。「口先だけで本質からズレている発言を繰り返したところで、君のサッカーリーグであるラ・リーガのイメージは既に揺らいでいる。投稿に対する反応を見て驚けばいいさ。自分のしてきたこと省みると、人種差別主義者に加担しているだけだということがわかるだろう。僕はこの問題を話すための君の友達ではないんだ」と続けた上で「僕が望むものはたった2つ。行動と罰則だ」と主張した。

【投稿】ヴィニシウスとテバス会長のやりとり