ポイントのばらまきもあって、申請が75%を超えたマイナンバーカード。一方で不具合が続出している。
「マイナンバーカードで証明書を交付したら、他人の住民票や戸籍謄本が誤発行」
「コンビニで印鑑登録書の発行をしたら、なぜか登録抹消済みの印鑑証明を誤交付」
など全国の11カ所でトラブルが起きている。
普及の旗振り役ともいえる河野太郎デジタル大臣は
「デジタル庁から富士通Japanに対して二度とこうした事態が起こらないようシステムの運用を停止し、徹底的に再点検を行うよう改めて要請した」
マイナンバーカードを監督する総務省の松本剛明総務大臣も
「当該事業者 富士通Japan株式会社から直接原因や再発防止策について確認を」
と述べているが、果たして事業者だけの問題なのだろうか?
デジタル広域推進機構を立ちあげ、自らも地方行政のデジタル推進の現場に身を置く大山水帆氏はトラブルの原因について次のように分析する。
「コンビニ交付に関しては、自治体の大元の住民票と印鑑証明のシステムからいったん中継するシステムを経て、さらに全国のコンビニエンスストアとつながっている“バケツリレー”のように連携していく通信の仕方をする。その部分の設計、適応が甘かったのでは」
としたうえで、スケジュールのタイトさにも問題があると指摘する。
「自治体の立場から考えると、このようなシステムを短期間で入れ替えることは通常やらない。市民の個人情報とか税とか、非常に重要な情報を取り扱っている上に、絶対に失敗しちゃいけないし、間違っちゃいけないシステム。間違ったら直せばいいやという設計ではいけない。今年度すぐに導入というのがなかなか難しく、スケジュール的に厳しい。期限があったとしてもできないものはできない。それで最終的に国民が迷惑してしまったら本末転倒」
河野大臣はマイナンバーカードと健康保険証の一体化を打ち出し「終わりが決まらないといつまでもダラダラいってしまう」と2024年に現行の健康保険証を廃止すると発表。
それに対し今年2月、東京保険医協会に所属する医師ら270人あまりが国を相手に裁判を起こした。「マイナ保険証を使った保険資格の確認を医師に強制するのは経済的な負担も大きく、1割の医療機関が廃業を検討せざるを得ない」と主張。
法政大学大学院 白鳥浩教授は政府の手法に疑問を投げかける。
「国民自体を識別するような非常に重要な個人情報を扱っているにもかかわらず、単にシステム上の問題だと言ってしまうことに、問題の根深い所がある気がする。マイナンバーの導入は『税をどのように取っていくか』と関係が深い。将来的には所得の把握・税収の確保といったものにつながっていく。だからこのマイナンバーの導入に焦っているところもあるのかなと思う。一つの企業にすべての責任を負わせて、単なるシステムの問題だと言って切り捨てる。その姿勢は国民の個人情報を預ける主体としてあるべき態度ではないのではないか」
大山水帆氏も導入を進める側に大きな認識のずれがあると指摘する。
「デジタル庁には民間の方を含め、ITに詳しい方が非常に増えた印象はある。一方で自治体の実情とか、業務を知っている方がなかなかいないのかなという印象。新しい技術を使えば、こんなのすぐに開発できるだろう、2年くらいあれば開発期間が大丈夫だろう。その点に一番認識の差があるのかなと思う」
ジャーナリストの青山和弘氏は次のように政府の問題点を指摘する。
「絶対に間違いが起こらないように何度もチェックをして、テストをしなければいけなかった。ところが、民間の発注と同じような感覚で、なんかあったらまた修正すれば良いという感じで、とにかくスピードを優先した面があったと思う。今の政府の認識が甘かったと言わざるを得ない。政府の情報を扱っているのだから、政治の側も責任を感じてやってもらわないといけない。河野大臣は次の総理大臣を目指している人だから、ここでどれだけ国民の不信を払拭できたかどうかが、彼の今後の政治家人生を左右するといっても良い、まさに正念場を迎えている」
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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