電気料金値上げが正式に認可され、東京電力管内の標準的な家庭では、来月から1カ月あたり6809円から7690円と、900円近い値上げとなる。
【映像】今年1月がピーク? グラフから分かる電気料金の推移(画像あり)
値上げとともに、料金プランにも疑問の声が上がっている。そもそも電気料金は、料金設定に国の認可のもと上限が決められている規制料金と、自由に価格設定が可能な自由料金の2種類がある。今回、値上げが認可されたのは規制料金だ。
電気代の高騰はいつまで続くのか。電力の自由化は失敗だったのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、専門家とともに考えた。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「電力のプランを増やすことで、誰が何を得するのか全然分からない」とコメント。
「普通の商品だったら、いっぱい作ったらみんなが安く買える。電力はエネルギーを他の国から買って電気に変える。貯めることもできないから、安い時にいっぱい買っておいて、高く売ることもできない。料金プランが複雑になって分かりにくくなっただけで、誰も得をしていない気がする」
エネルギーアナリストの大場紀章氏は「燃料費が上がっているので、競争してもどうしようもない」と指摘する。
「去年、過去に例がないほど年間を通して燃料価格が高かった。例えば天然ガスは2.7倍、石炭は7.5倍ぐらい上がった。この要因はウクライナ戦争でヨーロッパがアジアのガスや石炭を買い占めたからだ。もう一つの理由は、アメリカの利上げだ。円安になって、為替で25%ぐらい上昇した。それだけ燃料費が上がったので、その間にある意味電力会社は我慢して、損失を出しながら今日まで至った。ようやく値上げ申請が了承されて、この価格に収まったのだろう」
大手10社のうち7社が赤字になっている。今回の値上げによって、黒字化するのか。大場氏は「燃料価格自体が去年の夏頃からずっと下落している」と話す。
「燃料価格がこれからも下がっていけば、財務的には改善していくと思う。値上げを続けて、燃料の価格が下がっていけば、やがて黒字化する。一方で、また燃料価格が上がると、もっと値上げ申請をするかもしれない」
赤字が続いた場合、電力会社はどうなってしまうのか。
「役員などの給料はだいぶカットされている。潰れるのは、銀行がお金を貸さなくなったときだ。一般的には電力会社が潰れないように、いざとなったら国が銀行に『お金を貸せ』と指示を出せるから、潰れない。結局、民間の銀行が燃料価格の高騰のリスクを負わされている。これが果たして健全なのか」
本来は自由競争で割安になるとされている自由料金も、昨今の燃料高騰によって規制料金より高くなる逆転現象が起きている。経済産業省の元官僚で制度アナリストの宇佐美典也氏は「電力自由化が失敗している」と指摘する。
「資源が高騰して電力料金が上がると、自由料金は自由に料金を設定していいから上がる。規制料金は値上げできないから、自由料金のほうが規制料金より高くなる。すると、規制料金にする人が集まるので、赤字が拡大する。赤字拡大によって、投資もできなくなる。電力の新しい電源を作れないことで、去年のように全体が電力不足になる。負のループがぐるぐる回っていく。僕は大手が値上げしないとダメだと思う」
大場氏は「16年から19年ぐらいにかけては自由料金の方が安かった」とした上で「自由料金のほうが高くなると、新電力と契約している人は規制料金の大手電力に乗り換える。消費者も『自由料金の方が安くなると思っていたのに、規制料金のほうがいい』と思ってしまう。みんなが値段を上げている時、規制料金も上げないと公平な競争ができない。値段が高かったのは去年の夏で、値上げは今年だ。このタイムラグで新電力が潰れてしまう。タイミングも政府がごねて延ばして、その間に潰れた新電力会社には補償しない」と説明する。
一方で、ひろゆき氏は「東電は解体したほうがよかったのではないか」と投げかけ。「元々原発の事故があったのも東電のガバナンスの問題だ。東電の内側の人たちが経営者になり続けても、同じシステムでやっている。今からでも解体は遅くない」と持論を述べた。
原発を再稼働すれば、電力不足は緩和されるのか。
大場氏は「結局、東日本で東電の原発が動いていないことが大きい。本当は動いていたはずだが、自業自得的なところで、反対運動が大きくなって、今も動かせていない。九州に原発を置いても、東京に送電することはできない。東電のガバナンスのせいで、結果的に動くのが遅れて、今に至る。解体となると『どうしようか』となって、必ずそこで止まってしまう」と話す。
大場氏はどうするべきと考えているのか。
「5〜10年のスパンだと、原発の再稼働ができるかどうかで、料金がだいぶ決まってしまう。電力自由化とは別に、東電のガバナンスや規制委員会の問題がある。今の制度の中では、原発を新しく作ることが非常に難しい。新設しようとすると、通常計画で15〜20年かかる。民間の事業者は非常に難しい。最終的な問題として、原子力と東京電力をどうするかにいきつく。政府は電力自由化の失敗を認めないから、ルールを変えようとしない。抜本的な政策変更をするために、政治判断として『電力自由化はうまくいっていない』と公式に認めることが必要だと思う」
(「ABEMA Prime」より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側