“ネクスト・モンスター”堤駿斗、国内最速記録の快挙なるか いざ、東洋太平洋フェザー級王座決定戦へ
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 日本フェザー級3位にランクされる“大型ホープ”堤駿斗(志成)が31日、後楽園ホールでジョー・サンティシマ(フィリピン)との東洋太平洋フェザー級王座決定戦に挑む。プロ3戦目で同王座を獲得すれば、世界3階級制覇を達成した田中恒成(畑中)の4戦目を上回る国内最速記録の快挙。さらには世界ランキング入り、そうなれば世界挑戦も視界に入ってくる。ボクシング界が注目する大器、堤に寄せられる期待とその可能性を見ていきたい。

 試合を1週間後に控えた24日、都内のジムで堤の公開練習が行われた。メディアの前に姿を現わした23歳のホープは、試合に向けた最終調整について、ベテラン選手のようにクールに語った。

「ここまでけがもなく順調。あとは疲労を抜きつつ、戦術を確認し、感覚を研ぎ澄まし、気持ちを作っていきたい」

そもそも世界戦で恒例となっている公開練習が東洋太平洋タイトルマッチで行われるのは珍しい。さらに堤はこの試合に備え、4月上旬からラスベガスで1カ月の合宿を張り、世界ランキング2位の選手らとスパーリングを重ねてレベルアップに務めた。プロ2戦しかしていない選手にこれだけの環境が与えられるのは「異例」と表現して差し支えないだろう。

そのラスベガス合宿での経験を問われた堤はこんな頼もしい言葉も口にしている。

「スパーリングと試合は違いますけど、スパーをやっている限りは世界ランカーにも通用していると思う。そういったレベルの選手をさらに上回って、倒すことができる選手になれるようチャレンジしている」。

 今、ボクシング界は次代を担うと期待される若手選手が数多くいることをご存知だろうか。堤と同じ1999年生まれに絞っても、4月にデビューしたキックボクシングの“神童”那須川天心(帝拳)、同じく4月、IBFミニマム級暫定王座を獲得した重岡銀次朗(ワタナベ)、堤と同じフェザー級で日本タイトルを獲得した元日本、東洋太平洋王者の松本好二トレーナーを父に持つ松本圭佑(大橋)ら若手ホープがずらりと並ぶ。

 彼らのことを“モンスター”井上尚弥(大橋)の後継者という意味で“ネクスト・モンスター”と呼ぶ。その中でも堤の評価は極めて高い。それはアマチュアボクシングでの実績がずば抜けているからだ。

“ネクスト・モンスター”堤駿斗、国内最速記録の快挙なるか いざ、東洋太平洋フェザー級王座決定戦へ
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 堤は幼少時代から那須川と同じ道場で空手、キックボクシングに親しみ、中学生でボクシング一本に絞ると、全国大会で相次いで優勝。千葉・習志野高では全国大会を6度制し、日本人選手として初めて世界ユース選手権に優勝して歴史に名を刻んだ。弟の麗斗が2021年、兄に続いて日本人選手2人目の世界ユース選手権覇者になったことも記しておきたい。

駿斗に話を戻すと高校3年生ではシニアの日本一を決める全日本選手権を制覇。高校生での全日本制覇は井上以来となる6年ぶりの快挙だった。東京オリンピック出場は逃したものの、アマチュアで残した戦績は88勝6敗。その実績が考慮され、プロでは史上9人目となるA級デビュー(8回戦以上)をはたした。堤が逸材と言われる理由が少しでも伝わっただろうか。

 堤の強みはアマチュア時代に培ったテクニックを駆使したハイレベルなボクシングができることだ。強引に相手をねじ伏せるのではなく、得意のジャブを武器に試合をコントロールし、理詰めで相手を追い詰めて、中盤から終盤に仕留めるのが理想のスタイル。プロ2戦は「倒したい」と意識するあまり、どちらも判定勝ちという内容だったが、今回は2試合の反省をいかして、ラスベガス合宿でしっかり課題克服に取り組んだという。

「自分は一発のパワーで倒す選手じゃない。前半から中盤にかけて相手をいかに崩し、消耗させるかが勝負になる。ラスベガスではその崩し方、フィニッシュまでどう持って行くかを学んだ。ボクシングにはいろいろな倒し方があるんだよ、というところを見せたい」

 堤のミットを持つ佐々木修平トレーナーは「倒し屋ではないけど、相手に何もさせず、嫌倒れするようなボクシングができる。何でもできるオールラウンダーの選手」と堤を評した。世界タイトルを11度防衛した“ノックアウトダイナマイト”内山高志とコンビを組んでいた佐々木トレーナーの目から見ても、堤の才能は光り輝いているのだ。

 そんなホープにKOを期待する声は大きい。公開練習に足を運んだ元2階級制覇王者、2000年代のスター選手である畑山隆則さんは今の堤の力量で、スタイルを変えなくても十分にKOを量産できるとみている。

「堤選手はネクスト・モンスターの最右翼ですから、コツさえつかめば連チャンでバンバン倒せる気がするんですよ」

 東洋太平洋王座を獲得し、次は世界ランカーと拳を交え、数年以内に世界タイトルを奪取――というのが先を急がない堤の描く青写真だ。そしてゆくゆくは本物の“モンスター”と対戦できるレベルの選手になることが大きな目標だ。そのためにもまずは31日の試合に勝つことが重要になる。

「倒して勝てれば100点。完封できれば合格点。そこを目指して1ラウンド、1ラウンド大切に戦いたい」。いよいよプロの水にも慣れ、過去2戦とはひと味違う大器の進化した姿が今回は見られそうだ。

【視聴詳細】「LIFETIME BOXING FIGHTS 14 」“ネクスト・モンスター”堤駿斗、国内最速でアジア王者へ
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