マイナンバーカードと保険証を一体化させた「マイナ保険証」に別人の情報が誤って登録されるケースが相次いでいる。報告件数は7300件以上にのぼり、開業医へのアンケートでは、およそ7割がマイナ保険証を取り扱う際にエラーが出て使えなかったり、情報の更新が反映されなかったりなど、トラブルが続出している。また、マイナンバーカードによるコンビニでの証明書交付サービスでは、別人の住民票などが誤って発行されるトラブルも確認されている。
【映像】ひろゆき氏「思いつきでしゃべるの良くない」一触即発の瞬間
政府は2024年秋までに現行の保険証を廃止し、マイナ保険証の義務化を進めているが、問題はないのか。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した、政府の個人情報保護推進室で事務官を務めていた宮下紘氏(中央大学教授)は「政府がカードの交付を急ぎすぎた」と指摘する。
「コンビニにおける住民票の誤送付は委託先のシステム上の問題だが、それ以外は全てヒューマンエラーだ。7300件を多い、少ないどちらで見るか人によって違うが、ヒューマンエラーがこれだけ繰り返し起きてしまったのは、やはりマイナポイント事業で年度末の3月から4月、現場の自治体が一番忙しい時に交付を急いだからだ。登録時、自治体でログアウトせずに入力してしまって、別の人のデータが出た。これは仕様の問題ではなく、純粋にヒューマンエラーの問題だと私は見ている」
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「便利になる過程でトラブルが出るのは当たり前」とした上で「日本政府が進めるデジタル化は失敗が多い」と話す。
「データを入れる時に、どういう形だったら安全か。エンジニアがちゃんと仕様設計できればいい。ヒューマンエラーではなく、仕様の問題ではないか。早いか遅いかではなく、頭の悪い人がどれだけ時間をかけて作っても間違った仕様になる。優秀なエンジニアが作ったどうかが大事だ。人間のエラーは必ず起こる。それをどこかで防ぐ仕組みを仕様設計で入れるべきだ。マイナンバーカードでデジタル化が進んでいくべきだと思うが、今の日本政府にはちょっと荷が重いのではないか」
手入力がゆえに、ミスが生じやすく、拙速だった部分もあるのではないか。宮下氏は「致命的なのは“消えた年金”の時と同じ問題が起きたことだ」とコメント。
「例えば今回であれば、まず病院や薬局の窓口で、自分の情報かどうかを一度本人に確認してもらってから保険証を使えるようにすればよかった。過去の失敗から学ばず、同じことを繰り返している。今回のトラブルによって、保険証のために住所をさらにチェックすると言っている。これでは、また同じミスが起きてしまう。やり方を変える必要がある」
ひろゆき氏は「デジタル庁のトップをエンジニアにしないぐらい、日本の政府はエンジニアに対しての信頼感が低い」と苦言。「エンジニアが『これは絶対無理』『この仕様は良くない』と言った時に、エンジニアじゃない人だと『なんとかなるのではないか』みたいなことを言ってしまう。政府のやり方に反発して『こういうやり方だと必ずミスが出る』と言えるような、忖度しないような頭の硬いエンジニアをトップにするべき。でも、日本の政治の仕組みだとできない」と話す。
一方で、マイナ保険証の義務化に反対している経済ジャーナリストの荻原博子氏は「紙のカードがなくなったら、弱者の方が保険証を作れなくなってしまう可能性がある。できないならやめればいい」と主張。
「国民健康保険証は2年に1度の更新で、送られてきたものを差し替えて持っていけばいい。でも、マイナ保険証は自分で窓口まで手続きに行かなくてはいけない。窓口に行けない人や、寝たきりの高齢者は行けない。代理人がやるには、いろいろな書類を揃えないといけない。一体、誰が代理でその人たちの面倒を見るのか。政府に聞くと『自治体がやる』が答えだった。でも、ある区の区長さんに聞いたら『うちは全然そんなのはできない。それは施設でやってもらわないといけない』と言っていた。施設もそこまではできない。そうすると、保険証を取れない人が出てくる。健康保険の制度そのものを崩していくのではないか」
これに、ひろゆき氏は「紙の保険証がないと誰が死ぬのか。できないならやめるは『飛行機は人が落ちるから飛ばすな』と一緒だ」と反論。
「ちゃんとした仕様で作れば今回のようなミスはなくなる。『ちゃんとした仕様で作ろう』で終わりだ。マイナカードと保険証、診察券が一緒になった方がいい理由は、例えば認知症の人が自分で何の薬を飲んだか分からないとき、マイナ保険証なら過去の手術歴や飲んでいる薬が分かるからだ。デジタル化しない状態ですべての履歴を知るのは不可能だ。デジタルのおかげで助かる人が増えて、命の危険から救われる人もいる。今あるトラブルは未来に解決できる問題で、そっちの道に進んだほうがいい」
(「ABEMA Prime」より)
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