5月22日に新橋に開店した新しいタイプの居酒屋「THE赤提灯」。何が新しいのかというと、アルバイト従業員の全員が、隙間時間を活用して働く「スポットワーカー」で構成するというコンセプトだ。さらに、その半数は飲食店でのアルバイト初心者や未経験者だという。
【映像】飲食店の人手不足解消に一手 今後の飲食店に求められること
メニュー数も多くて大変というイメージの居酒屋。普通であれば、毎日のようにシフトに入ってくれる経験者でお店を回したいと思うが、なぜ初心者メインで回せるのか。この店舗を手がける担当者に話を聞いた。
「マニュアルやオンボーディングの動画を用意するなど、初めての人が働きやすい環境づくりをしている。初めは覚えづらいテーブルの番号も椅子の脚や内側に卓番号を貼っておくなど、シークレットサインを散りばめておけばいい」(タイミー 広報・松本知世さん)
なぜスポットワーカー中心の居酒屋を始めたのか。
「コロナ禍で飲食業界から一旦人が離れてしまい、まだ人材が戻って来ず人が足りていない。まずは飲食業界で働くことを体験して魅力を知ってもらえれば、少しでも飲食業界の人手不足の解消に貢献できないかという思いがある」(松本さん)
先輩が手取り足取り教えなくても、事前準備やスキルチェックで即戦力になる。これらの工夫により飲食店で働くハードルを下げ、人材不足を解消したいという。
しかし、経験の浅い従業員が多いことで、サービスに対する客の満足度には影響しないのか。
「社員が1人以上、店内を見渡せるようにしており、何かあってもしっかり対応できる体制なので、不備やサービス低下がないように配慮している。逆に、来店した方がお店を気に入って希望されれば翌日からでも働けるのがこのお店の特徴」(松本さん)
この新しいコンセプトを掲げる居酒屋について、金融ベンチャー「マネネ」CEOで経済アナリストの森永康平氏に話を聞いた。
「ミクロで見ると、企業は人材を確保しやすいし、個人は未経験でも体験できる壁の低さはいいこと。一方マクロで見ると、スポットワーカーの就業形態は不安定。バイトならいいが、学生が卒業後にそれで生計を立てようと思うと、経済的に安定せず将来結婚が難しいという話にもつながると思う。経験を積むにはいいが、使い分けが重要」(森永氏、以下同)
飲食業界には他にも課題がある。帝国データバンクによると、飲食店は非正社員の就業者が全体の7割以上を占めている。人手不足の割合は最も高い8割超だ。
また、東京商工リサーチによると、新型コロナウイルスに関連する飲食業の倒産が385件と、2年連続で大幅に増加しているという。
――コロナ禍の出口が見え始めたが、飲食業は厳しい?
「2、3年コロナ禍が続き人々の消費行動が変化した。コロナ前は頻繁に飲みに行ってた人も多かったが、『自宅で動画を見ながら食事したり飲んだりすることが楽だ』と気づいた人が増えた。コロナは落ち着きつつあるが、以前のような外食習慣に戻りづらくなってきてるので売上が伸びづらい。その一方で、コロナ前よりも原材料や電気代などコストだけが上がり、利益が出にくい状況にある」
――原材料が上がっても値上げは難しい?
「ファミレス、居酒屋など低価格を売りにしている場合、値上げによる客離れの可能性がよぎり難しいと思う。過去に値上げで業績悪化した例もあり、コストが上がったからといってすぐに価格転嫁はしづらい」
――この先、飲食店には何が求められる?
「二極化していくと思う。1つ目はいわゆるDX。どんどん無人化していく。人件費も価格も抑える」
――タッチパネルなどのDXがマッチしない店もある?
「タッチパネルは常に料金が見えるため、注文を控え、客単価が下がることもある。会話をしながら料理を勧めるなどして客単価を上げるためには対面がいいし、反対に回転率を上げたいならタッチパネルがいいというデータがある」
――もう一つの道は?
「2つ目は、体験価値を提供する代わりにそれなりの価格をいただく空間づくり。例えば、夜景を見ながら食事ができる、その店ならではの世界観や雰囲気に付加価値をもたせる。ディズニーランドに行きたい人がその世界観を求めている面もあるように、いかにファンを作れるかがカギ。ファストファッションや高級ブランドのように、ニーズは変わってきている」
(『ABEMAヒルズ』より)
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