元国税調査官「脱税は現金商売が多い」5800超える宗教法人に徴収漏れも…宗教法人の“税制優遇”は必要なのか?
【映像】ボロ儲けはホント? 宗教法人“税制優遇”の是非 僧侶&元国税調査官&田村淳と議論
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 先月、国税庁の発表で去年6月までの過去5年間でお寺や神社など5800を超える宗教法人に税金の徴収漏れが発覚し、追徴課税を受けていたことが判明した。額は45億7000万円に上り、知らぬ間に住職や関係者が法人のお金を私的流用したケースも相次いでいる。これに、ネット上では「そもそも宗教法人に対して税の優遇などするから、甘えてずさんなお金管理になるのでは」など、批判の声が寄せられた。

【映像】“金額”までびっしり…! 住職が見せてくれた「寄付札」(画像あり)

 実際にどれほど優遇されているのか。ニュース番組「ABEMA Prime」の取材に、山梨県にある見法寺の住職・小林正尚さんが見せてくれたのは“寄付札”だ。札にはお布施などの寄付をした人の名前と金額が書かれている。寄付されたお金は非課税となり、そのまま宗教法人に入る。お賽銭やおみくじ、お守り、御朱印などの売り上げもすべて非課税だ。さらに、お寺名義の土地や建物、施設にかかる税金もないという。

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 小林さんは「宗教法人の主な税制優遇は主に3つだ」と話す。

「1つ目が固定資産税だ。土地や建物、お堂、お墓以外にも、お寺や宗教法人を利用する際の駐車場も非課税になる。これはあくまで宗教法人の名義のものだけだ。例えば、私個人の名義の不動産は課税対象となる。2つ目が相続税で、住職が交代する際の税金はかからない。3つ目は法人税だ。お布施に対しても消費税は発生しない。お賽銭する時に『8%だっけ、10%だっけ』と考えないと思うが、そういったところも非課税の対象だ。しかし、年間8000万円以上ある宗教法人は課税対象になる。もちろん、宗教団体が法人になるためには、ちゃんと厳しい審査がある」

 ネットでは「宗教法人の税優遇は不要」といった声があるが、どのように受け止めているのか。

「実はお寺という宗教法人は個人のものではない。あくまで、お寺であれば檀家さん、神社であれば氏子さんといった“利用される人のもの”というスタンスだ。着物一つも全て宗教法人の物で、私個人の所有物ではない。屋根も本堂の建て替えに数億円かかるのが現状だ。都会や街中のお寺さん、観光寺院など、ある程度の参拝料があるところは優遇されなくてもいいかもしれない。だが、私もそうだが見渡すとほとんどが田舎のお寺で過疎地域にある。観光事業は全くできない。歴史や信仰を受け継ぐ神社、お寺が本当に今窮地に立たされている」

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 線香やろうそくなどは、仕入れて売っているだけのように見えるが、数珠のように祈りが込められていればいいのか。また、小林さんはYouTuberとしても活動しているが、Googleからの収益はどのようにしているのか。

「確かに線香やろうそくはホームセンターでも売っている。数珠だって今は100円均一にある。ただ、中にはそのお寺限定で売っていたり、お線香にしてもお経の文句が書いてあったりする。そのお寺や神社で特別な祈りを施したものがあるので、一概には言えない。物には必ず原価がある。その中の付加価値に“祈り”がある。我々としては伝統的な宗教に則った祈り方をさせていただいている。なおかつ『こういうご利益がある』とちゃんと説明しているので、宗教法人の法人たる由縁のやり方だ。ただ、食品であれば必ず消費税が発生する。饅頭などは、ほぼ課税対象になると思う。有名な観光寺院でも、飲食店が併設されていれば課税対象になる。私のYouTubeの収益も宗教法人の会計収入だが、ちゃんと課税対象になっている」

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 檀家や信徒との飲食代はどうだろうか。小林さんは「9割9分、私からお金を払って檀家さんと食事をすることない。呼ばれていくケースがほとんどだ」と答える。

「お葬式や何回忌の後、お斎(おとき)という形のお食事がある。『来てください』と言われたらもちろん行く。私からお金を払うことはないが、たまにお寺同士の集まりや会議、檀家さんの代表者である総代さんが集まる際のお食事は宗教法人の運営にあたるので、経費として個人のお金からではなく宗教法人のお金でお食事をする」

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 元国税調査官で経営コンサルタントの根本和彦氏は「国税庁が公式に発表している見解」として、こう話す。

「いろいろな祈りを込めたり、何かをやって普通の値段よりも上がっているものについては『お布施的要素が強いから非課税』という微妙な見方をしている。状況にもよるが今、小林さんが言われたやり方なら、全然問題ないと思う。小林さんがある程度お金を出しても問題ないと思うが、極端な場合、中には全然檀家さんではない人との食事代で宗教法人のお金を使う人もいる。それは問題になってくる」

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 根本氏が調査官だった時には、直接やり取りをして不正がないか判断するのか。

「なかなか裏が取れないから、実際に税金は取れない場合が多い。ただ、状況証拠から察するに『これは相当個人の楽しみで遊んでいるだろうな』と見え隠れすることはあった。国税、税務署としても宗教法人はなかなか調査に入りづらい。いろいろな政治勢力と結びついている方もいる。お布施を含めた収入が8000万円以下の場合、そもそも損益計算書や決算書を作る義務がない。いわゆる脱税は現金を受け取る人が多い。現金商売はポケットに入れてしまえば分からないからだ。かなりずさんな経理をしている方も中にはいらっしゃる」

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 調査した結果、疑わしい場合はどうするのか。

「お葬式だったら、戒名をもらった方の家に行き『いくら払ったか?』と確認する。実際に『自分が払ったものよりも金額が低い領収書が来た』みたいなタレコミ情報は税務署にも来る。聞き取りをしてデータを集めて『あなたこれ違いますよね?』と追及するしかない。時間と手間はかかるが、疑ったらそこまでやる。ただ、いろいろな団体との繋がりがあるところは、下手に触ると危ない。いわゆる反社会的勢力の可能性もある。新人がいかないように特別管理されていて、慣れたベテランが行く」

(「ABEMA Prime」より)

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