ゼレンスキー大統領のサプライズ参加もあり、広島サミットは成功を収めた。日韓関係修復は順調、在職日数も宏池会の大先輩、大平正芳元総理を607日(2023年6月2日時点)となり、気づけば敵なしの岸田政権。
しかし、自民公明、政権与党がもめている。
「(東京の自民党候補を)全員推薦しないというのは公明党の政権離脱だ」(自民党幹部)
「東京における自公の信頼関係は地に落ちた」(公明党・石井啓一幹事長)
連立を組み、選挙でも協力関係にあった自民・公明が次の国政選挙をめぐって対立。きっかけは「10増10減」だ。一票の格差を是正するために、次の衆議院選挙から小選挙区の数を「10増10減」する区割り改定が適用。これに伴い、東京都選挙区が25区→30区に増えること、小選挙区で当選できるのは1人であることが火種となった。
公明党は当初、新設される東京29区で候補者の擁立を発表、さらに東京28区でも公明党候補者の擁立を自民側に要求。これに対し自民党は「のめません!」と拒否。自民党が事実上の空白区として残している東京12区か15区を公明党に譲る案を提示した。
これに対し公明党は「いきなり代替案と言われてものめない」と、東京28区で候補者を立てることを断念。一件落着かと思いきや、公明党は東京都選挙区では自民党候補の推薦をすべて見送る方針に。連立解消論が出る事態となっている。
とはいえ、公明党の支持母体「創価学会」の選挙体制は盤石で、元自民党の衆議院議員・宮崎謙介氏も「(私が当選した時も)公明党の票が8割固まっていたのが、6割になっていたら余裕で負けてしまう」とコメント。地盤の弱い新人などは学会の応援なくしては当選できないとも言われるほどだ。
なぜこれほどまでにこじれてしまったのか? 『ABEMA NEWS』政治担当の今野忍記者は「公明党というより、もめているのは自民党VS創価学会。選挙で長い間自民党を助けてきたが、創価学会としては『見合っていない』という思いがある」と説明する。
創価学会の関係者は「これまでも『比例は公明』と言っておきながら全く公明の比例票は増えていないので、自民に対して信用していない方は多い」と話す。
そんな時に「10増10減」があり、都市部で選挙区が増える機会が生まれた。今野記者によると、公明党にとっては、“千載一遇のチャンス”であり、これを逃すわけにはいかなかったと見る。
「全国289ある小選挙区で、うちがもらっているのはたったの9選挙区だった。今回の10増10減で東京は5つも増えるんだから、『そのうちの一つをよこせ』ってそんな無茶な要求か?280近い全国の選挙区でうちが自民党候補の名前を書かせてるんだぞ。どう考えても公平ではない」(公明党幹部、今野記者取材メモより)
一方の自民党は。
「完全にチキンレースだな。どちらも引くに引けない。石井幹事長が『信頼関係は地に落ちた』って記者会見で言ったんだろ?全国の自公の選挙協力に影響するよ」(自民党幹部、今野記者取材メモより)
勝負の行方について、宮崎氏は「20年間結婚生活を続けてきたが、ここで“離婚”という選択をするかどうか。離婚してすぐ再婚というわけにはいかない。憲法改正をとことんやるということであれば(維新と)デートを繰り返すのでは」との見方を示した。
では、決裂したら困るのはどちらなのか?今野記者は「どちらもだ。なぜなら政権を失う可能性もあるから」と発言。「公明党の票は一つの選挙区につき1〜2万あると言われているが、例えば東京における25の選挙区の内、5つは2万票差を切っている。単純計算でいうと公明党の票がのらなかったらそこで自民党の候補が落ちる可能性がある。2021年の衆院選では、自民党では189人が当選したが、そのうち57人が2万票差以内。この57人が仮に自民党でなくなったら過半数割れとなる」。
対立の背景にあるのが、両党間のコミュニケーション不足。しかし、今野記者によると「実は“ラスボス”が登場したらこの喧嘩は収まる」と指摘する。
その人物というのが、菅義偉前総理。
「安倍政権でこういう問題が起きなかったのは、菅さんが水面下で解決していたから。公明党の支持母体である創価学会の副会長との間に太いパイプがあり、消費税増税に伴う軽減税率などで自公が揉めた際にも、当時の菅官房長官が『公明の言うことを聞かないと政権運営が成り立たない』と財務省を押さえつけた。しかし、岸田総理と菅前総理は疎遠。岸田総理が『仲介してくれないか』と頼むかどうかだ」(今野記者)
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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