自民党では「石を投げれば世襲に当たる」と言われるほど、世襲議員が多数存在する。岸田内閣の閣僚だけを見ても、総理経験者や国会議員の子どもたちが数多く登用されている。
ABEMA NEWS政治担当の今野忍記者によると、かつて自民党では世襲議員による弊害をなくそうと、菅義偉氏が音頭を取って多様な議員発掘を行ったという。第二次安倍内閣発足につながった2012年の衆議院選挙では、119人の新人議員が誕生した。その一方で、この時当選した新人議員による“やらかし”も目立つ。
元東京都知事、元厚労大臣の舛添要一氏は、安倍晋三元総理を例に出し「世襲が悪いわけではない」と語る。
「最初から訓練をした人がなったほうが、国民のためにははるかにいい。問題は、若いころから政界という水につかっているから、よその世界が見えなくなること。そのバランスが問題だと思う。あまりたたいてしまうと、自分のバカ息子をどこかで鍛えないといけない、となる」(舛添氏)
大王製紙の創業家3代目で元会長の井川意高氏は「経営者の場合もよく言われる」としつつ、世襲・たたき上げを問わず、立派な経営者、ダメな経営者はいるため、「個人個人としか言いようがない」と指摘する。
「創業経営者が苦労して身につけてきたことを、子どものころから『こういう時は、こうなんだ』と言われているので、手っ取り早い。ただ、人間は耳で聞いたことは、自分がある程度、疑似体験でもするまではなかなか身に付かない。自分が一回苦労してみないとわからない」(井川氏)
元衆院議員の宮崎謙介氏は、自身をはじめとする非世襲の政治家は、いわゆる「地盤(組織力)・看板(知名度)・カバン(資金力)」を持たないのが、世襲議員との大きな差だと説明する。
「世襲だと、親が後援会を作ってくれて、資金もあって、名前を知られている。どう考えても転ばないというのは、正直うらやましかった。私は生きるか死ぬかというところで、なりふり構わず馬車馬のように選挙活動した。靴も何足もつぶすなか、世襲議員に『先週末、みこしで汗かいて、身体ボロボロだよ』と言ったら、『あー、みこしなんか担いでるの。大変だねえ』と言われ、カチンときた」(宮崎氏)
お笑い芸人の永野は、これらの意見を受けて「世間知らずでも、ガツンとやってくれた方がいいのでは」とコメントする。理想ばかり言うよりも、いろいろ知っているほうがよいのではとして、「人間としてデカい感じがして、頼りになるかな」。
今野記者は、その典型が安倍元総理だったと振り返る。
「アメリカのトランプ大統領だろうが、プーチン大統領だろうが、物怖じしない。お父さん(安倍晋太郎氏)が外務大臣だったころ、秘書官として若いころから(外交を)経験している」(今野記者)
加えて、菅義偉元総理のエピソードを出しつつ、「たたき上げ議員」だからこその葛藤を紹介した。
「菅さんは(第二次安倍内閣で)官房長官になりたてのころ、次の総理大臣を目指したらいいのではないかと話を振ったら『俺は無理だ』と言った。なんでですか、と聞いたら『俺は外交とかわからない。世襲議員は若いころから、親父に連れられて外交の場に行っている。ああいう経験がないから、俺はここでいいんだ』と」(今野記者)
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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