3日(土)、神奈川県・横浜武道館で開催された『AZABU PRESENTS K-1 WORLD GP 2023~初代ミドル級王座決定トーナメント~』で第3代K-1 WORLD GPスーパー・バンタム級王者の金子晃大(K-1ジム三軒茶屋シルバーウルフ)が、プロ戦績10戦10勝を誇るトルコの刺客であるエムレ・カラジャ(Emre Karaca Fight Club)から1ラウンド3つのダウンを奪って圧巻のKO勝利を収めた。開始20秒で打ち抜いた右ストレートに場内はどよめいたが、その一撃の様子を金子は独特な表現で振り返った。
2022年2月、第3代K-1 WORLD GPスーパー・バンタム級王座決定トーナメント決勝で同級のライバル・玖村将史(K-1ジム五反田チームキングス)を破って悲願のベルトを巻いた金子。今年3月の「K‘FESTA.6」では、ムエタイの強豪で玖村に勝利しているコンペットを判定で下して初防衛に成功。ファンが待望し、自らも実現を公言する玖村との“完全決着戦”に向け、王者としての進化を見せつけたい一戦となった。
3月「K‘FESTA.6」の試合直後、コンペットに勝利して初防衛を果たした金子に話を聞くと「“倒せなかった”ことが自分の“弱さ”」と課題を口にした。今回の相手はプロ10戦無敗のインファイター。試合後にリングで向き合ってみた感想について聞くと「負けてない選手の覚悟みたいなものは感じました」と金子。
この試合、ABEMAで実況を務めたK-1のレジェンド・魔裟斗が、最初にダウンを奪った右について「ノーモーションの右だった」と言及。そのことについて本人は「ノーモーションという意識は無かったけど、精度を上げるという意識を持っていました。コンペット戦では精度が良くなくて、決め切れなかった。『しっかり効かす』ところまで打てたのは、一つ練習でやってきたことが出せたのかなと」と説明。ただ「相手は立ってきた。そこは相手の良さでもありますし、僕自身の課題でもあるかなと思います」と反省も口にする。
一方では、“らしさ”も。
「狙ってはいました。やっている最中に見えたというか…こっちの目で(写真のような動作で)、『写輪眼』で。右を打ち抜く一つ前に、相手の動作が見えたんですよね」
いわく、人気漫画『NARUTO』に登場する特異体質や能力に例えて、相手の動きを“予測できた”ということらしいが、隣にいた陣営スタッフが興奮気味に「相手がカウンターを狙っているのが分かって、それで一拍というか、半拍だけ動きをずらして、相手の動きを先に引き出してから右を打ち抜いたんです」と補足した。
最初のダウンを奪った金子は、一気の打撃、圧力で相手を飲み込むと飛びヒザや左右の連打、さらに打ち分けで2つ目のダウンをスタンディングダウンで。さらに強烈な右から左右の連打、とどめの左アッパーで3つ目のダウンを奪って試合を決めた。
試合後に魔裟斗は「以前の金子は、攻撃の強弱が無いのが気になっていた。今日の金子も攻撃の強さは同じだったが、攻撃の一発一発が強くなっている気がした」と述べ、課題だけでなく、確かな成長を称賛した。この“強弱”について金子は大きく一つ頷くと「やっていくことがまだ全然あるので。課題ですね」と神妙な面持ちで応じたが、玖村との一戦について聞くと「今年中にはやると思うので。そこに向けて、成長のために今回の試合を組んだので、次につながる試合ができたのは良かったです。ただお客さんの気持ちもあります。高いお金を払って見てくれる。そこで『来てよかった』と思ってもらえる試合をしなければならない。自分の気持ちもあるけど、それがチャンピオンの役目」と述べ、王者としての確かな自信をにじませた。