人前で話すことが苦手な人のため、漫才の「掛け合い」に着目し、“VRでの漫才体験”でトレーニングを行う研究がある。(映像提供:東大VRセンター・吉本興業)
以下は、東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター(VRセンター)特任研究員の宮本道人氏と、お笑いコンビ・NON STYLE石田とのVRを通して行った漫才だ。
VR石田:お願いしますー
宮本氏:ども、NON STYLEです~
VR石田:あのさ、生きてくうえでプレゼン能力って大事やと思うねん
宮本氏:そんなん俺めちゃくちゃ得意やがな
VR石田:あーそう、ほなやって
宮本氏:俺マンガ・アニメが好きなんやけどさ、やっぱマンガとかアニメは日本を代表する
VR石田:(話を遮る)
宮本氏:話聞けやおい
VR石田:今日は俺にラーメン屋さんをやってほしいわけね
宮本氏:そんなこと一言も言うてへんておい
VR石田:僕の名前はふうどうはじめ
宮本氏:勝手に始めんなよ
VR石田:おいしいラーメンを提供するためだけに生まれてきた、AIロボットだ
宮本氏:AIなん!?せめて人でやってくれへん?
会話のテンポが早く、ツッコミも的確。東大の研究員である宮本氏に何かが憑依しているように見える。『ABEMAヒルズ』では、東大VRセンターと吉本興業が共同で行っている「VR漫才を通しプレゼン力向上」の研究について、宮本道人氏に話を聞いた。
――VR漫才では何をするのか?
「ヘッドマウントディスプレイを装着したユーザーがNON STYLEの井上さんのアバターに入って、横にいる相方の石田さんと台本に沿ってテンポよく漫才をする」
――なぜこの研究を始めた?
「どうすれば緊張せずに人前で話すことができるのか、という思いが根っこにある。僕も緊張してうまく話せないことがあり、例えば今みたいに番組内で相手と話している様子を視聴者の方も見ている状況だと、余計に緊張してうまく話せないことがある。
対して、芸人さんや芸能人の方は人前で話すのがすごくうまい。漫才はその最たる例だと思う。決められた時間で一気に話を回す漫才を疑似的に体験することで、人目が気になって話がうまくできないというケースも改善すると思う」
――会議やプレゼンで活かせる?
「例えば会議において、上司に進捗を報告する場面は多いが、その時も一方的に話すだけではなく、『掛け合い』になっており、相手の反応に合わせてこちらも即座に打ち返す必要がある。これは現在定着したオンライン会議でも同じ。その様子は周囲にも見られている」
VR漫才をする上で注意すべきポイントを尋ねると「目線や姿勢、間、滑舌」だという。
「前回『ABEMAヒルズ』に出演した際の自分の映像を見たが、残念なことにずっと下の方を見ており、僕自身、掛け合いが下手だなと思ってびっくりした。人は自分の状態に気づきにくいので、VR上で『目線ちょっと低かったよ』とか言ってもらえたら気づきやすい」
――NON STYLEの漫才は難しくなかった?
「難しかったが、何回か繰り返すフェーズを踏んで、練習していくことで必ず上達する」
――他にも芸人がたくさんいる中、なぜNON STYLE?
「お2人それぞれにポイントがある。石田さんはすごく理論的に漫才を考えていて、吉本のNSCという芸人養成講座の講師を努めているほどだ。どういう風に漫才を作るのかを石田さんに伺い、お客さんと相方に対する目線の動かし方など、どうすれば自然に見せられるかをすごく教わった。
また、VRの研究で『プロテウス効果』というものがある。アバターに入り込むと、そのアバターの行動を模倣することで、心理にも影響するというもの。いいことをしているアバターに入り込むと、いいことをしやすいようになる可能性がある、という研究がある。そのため、超ポジティブな井上さんに入ると、いろんなことを言われても『いや、俺はポジティブだぞ』『自信を持って発言するぞ』というプレゼン力が高まるんじゃないかと思う」
――今後の展開は?
「学会発表したり評価軸をいろいろ展開していきたい。あらゆる人が自信を持って人前で発表できる世の中になるといいと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側