今、音楽業界に大きな変化が起きている。ニュース番組「ABEMA Prime」がある場所を取材すると、行われていたのは“顔出しNG”のボーカリストオーディションだった。
【映像】全員“顔出し”なし! 歌手オーディションの様子(動画あり)
近年、顔を出さないアーティストが人気を博し、歌だけのオーディションが広まっている。オーディションに参加した女性(23歳)は「自分の容姿にも全然自信がなかった。顔出しNGならちょっとやってみようかなって思った。Adoさんの活躍があったので、私もああいうふうになれたらいいなと後押しになった」と話す。
他にもCDが売れなくなり、視聴スタイルはサブスクに。タイムパフォーマンス重視やAI生成技術の進化などの波が押し寄せ、音楽業界は目まぐるしい激動の時代に突入している。
さらに、振付師の槙田紗子氏によると、楽曲に合ったダンスだけでなく“TikTok向け”の振り付け依頼が増えているという。
「運営側がTikTokでバズを狙える楽曲を作る。振り付けも最初から『TikTok向け』でお願いされる。斬新でかわいい、主に縦に収まるバストアップだけで踊れる振り付けだ。加工が外れないように、顔の前を“手”でシャッターしないことも大事」
槙田氏が振り付けを担当した、アイドルグループ・FRUITS ZIPPERの楽曲「わたしの一番かわいいところ」は、TikTokで真似する動画が次々と投稿され、総再生回数は7億回以上を記録している。
アーティストの活動自体にもある変化が起きている。音楽プロデューサーの山口哲一氏は「昔はレコード会社や事務所に所属していないと音楽活動がやりづらかった。今はSNS、YouTube、TikTokがあるから、個人でも音楽活動可能という時代になった。『事務所に所属して当たり前』という構造も時代の変化と共に終わってきている。今、メジャーデビューの価値は親孝行でしかない。経済的には意味がない」という。
事務所に所属せずセルフプロデュースで活動をする「新東京」も、時代の変化にいち早く乗ったバンドだ。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演したリーダーの田中利幸さんは「いろいろ音楽を聴くと、イントロがない曲も多いし、歌詞や歌がずっと流れている楽曲が増えていると思う」と話す。
「イントロがないと、すぐに歌が始まるから、サブスクでみんなにたくさん聴かれる。僕たちはそこに寄せすぎないようにしている。事務所に入っていないので、そういう自由度があるし、その曲に一番合ったイントロの長さを考えている」
昨年、自分たちで会社を立ち上げ、バンドを法人化した新東京。なぜ事務所に所属せず、自分たちでやっていこうと思ったのだろうか。田中さんは「メジャーレーベルで楽曲を作るメリットもあるが、やっぱり自由度だ。メジャーレーベルの経済力や業界との繋がりには魅力も感じるが、一緒にやっていくとなると、楽曲制作に対していろいろ言われるし、そういう話をよく耳にする。だったら自分たちで自由に曲を作っていったほうがいいと思っている」と答える。
ボーカルを担当する杉田春音さんも「メジャーに入らないことで不利益を被ったことはない。むしろメジャーシーンはすごく移り変わりが速い。数カ月前に流行っていた曲が、もう誰も聴いていないこともある。そのサイクルに飲まれる前に、まず自分たちのバンドを成熟させることが大事だと思った。真の価値を見てくれるファンは、TikTokでバズった時につくファンよりも長く愛してくれる。息の長い活動をするやり方をみんなで考えた結果だ」と話す。
権利関係や経理業務など、タスクの割り振りはどのようにしているのか。田中さんは「一応、僕が社長としてやって、それぞれにタスクを振っている。例えば、今の経理担当は杉田だ。全員その知識が元々あったわけではなく、法人化するために全部イチから調べてやっている。経理も会計ソフトを使って、勉強しながらやっている」と述べる。
学業はどのようにしているのか。
「僕は今年で退学してしまったが、他のメンバーは大学をみんな休学している。やっぱり全て自分たちでやっていくとなると、難しい部分もある。メジャーレーベルと契約してお願いするというのも手ではあると思う」
時事YouTuberのたかまつなな氏は「私も元々お笑い芸人で、デビューしてサンミュージックという事務所に入っていたが、2年半ぐらいで独立した」とコメント。
「両方経験したが、やっぱり芸事に本当に集中するためには、正直、事務所に入っているほうがいいと思う。大学生で所属していた当時は『なぜギャラが半分も取られるんだろう』と思っていた。でも、自分で会社を経営し始めると、税理士にもお金を払わないといけない。雇った人のお給料や社会保険料も必要だ」
会社経営に時間やお金が取られることを知ったたかまつ氏。「やっぱり芸で優れていることと、起業のスキルは違う」とした上で「両方できるなら事務所に入らなくていいと思う。一個の才能に秀でていて、他は何もできませんという人は事務所に入って芸に集中したほうがいい」と見解を語った。(「ABEMA Prime」より)
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