いよいよ来年に迫った物流の2024年問題。ドラックドライバーの労働時間規制により、今のままでは来年には輸送力が14%も不足すると推定され、物流の停滞が懸念されている。この状況に先週、政府が政策パッケージを取りまとめ、トラックの代わりに船や鉄道で輸送することなどが盛り込まれた。
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そんな中、『ABEMA Prime』では、再配達に注目。その割合はコロナ禍で8.5%まで下がったものの、現在はおよそ12%とされており、労働力に換算すると「年間6万人分」とも言われているのだ。こうした状況に政府は置き配などを推奨。再配達率の半減を目指すとしている。
Twitterでは「再配達を有料化すべき」との意見も浮上するが、期待が高まっているのがデジタルトランスフォーメーション(DX)による解決だ。
2024年問題をどうクリアするのか。現状と共に考えた。
■3回の再配達でも貰える料金は同じ
「物流改革に向けた政策パッケージ」では、(1)荷待ち時間と「送料無料表示」の見直しなどといった「商習慣の見直し」、(2)トラック輸送の一部を船・鉄道に置き換え、自動運転・ドローン物流促進などの「物流の効率化」、(3)再配達率半減を目指すなど「荷主・消費者の行動変容」という3点を掲げている。
これに対し、流通経済大学教授で、「持続可能な物流の実現に向けた検討会」委員の矢野裕児氏は「物流問題を関係閣僚会議で提案し、政府全体で取り組む姿勢を見せたことは相当画期的だ。これは事業者だけでは解決できない問題で、荷物の運搬を頼む発荷主、荷物を受け取る着荷主も含めた全体で考えていこうと明確に打ち出したことも重要だ」と説明。
その上で、「この政策パッケージの話は、ほとんどがB to B(企業間取引)で、B to C(企業と消費者間の取引)は貨物量的には10%に満たない。そのため、後者の再配達を解消しても2024年問題が解決するわけではない」としながらも、「年間6万人とも言われる労働力が非効率的に使われていること」に警鐘を鳴らす。
宅配便の数は2021年度に約49.5億個と、この30年間で4倍以上になっている。一方で、再配達は12%を占め年間5~6億個とみられる。
DXで再配達ゼロを目指す207株式会社代表取締役の高柳慎也氏は、起業するにあたり自身でドライバーになり配達を行ったという。
再配達による損失について、「配送員は基本的には『1個あたりの配送が完了したらいくら』という契約になっており、2~3回再配達したとしても、同じ料金になる。玄関先に置き配で対応しようにも、発荷主と物流会社の契約によるので、ここが変わらないとドライバーには何もできない」と述べた。
欲しい時に、何度でも、タダで届く。ある意味、消費者は恵まれすぎていて、その負担が配達側に偏ってはいないだろうか。
起業家・投資家の成田修造氏は「システム側の問題は仕方ないので、再配達を見越してドライバーに対価を払えばいい。2倍のコストがかかるなら2倍払えばいい」と提案。
作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「日本人の家計の物価許容度は上がってきている。ちょっと前は少しでも物価が上がると他の安いスーパーに買いに行ったが、『卵はどこに行っても350円なら近所で買うか』となっている。今は、配送料も上げるいいタイミングなのでは」とコメントした。
■DXで“空振り”を減らす
再配達はDXで解消できるのか。配送員向けのアプリ「TODOCUサポーター」を提供する高柳氏は「スキャンした伝票をデータ化して、ルートを組んだり、消費者にSMSでメッセージを送って、受け取り手が在宅か不在か、置き配希望かを回答するという『配送員と消費者を繋ぐアプリ』だ。僕自身、これで“空振り”がかなり減った」と説明する。
とはいえ、システムだけでは乗り越えられない課題もあるという。「発荷主と物流会社の契約が存在するため、家にいないと分かっていても不在票をポストに入れなくてはならないというのは、ムダに感じる」と述べた。
矢野氏は「今は『1回は届ける』というルールがある。それから、ショートメッセージの詐欺が多いので、物流会社は基本的には使わない」と話すと、佐々木氏は「詐欺はLINEでもSMSでもなんでもあるので、言い出したらきりがない。ドアを開けることにもリスクがある。それをゼロにしないと物流のDXは進まないというなら実現できるわけがない」と指摘した。
では、個人事業主の取り組みが業界の当たり前になる可能性はあるのか。
高柳氏は「僕はあると思っている。物流会社はSMSを使わないと言われたが、現場では隠れて使っている。デジタルを駆使して配達の非効率を解決するDXの種は増えていくと思う。配達はデジタルが参入しやすい土壌だ」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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