大雨による新幹線運休の可能性はわかっていたはず? なぜ混乱を繰り返す? 利用者と企業に求められる対応は
【映像】「ホテル代・タクシー代払え」「シャワー用意しろ」元駅員が受けたクレームの数々
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 人々の足に大きな影響を与えた、先週の豪雨。6月2日午後、東海道新幹線が東京~名古屋間で運転を見合わせになり、各地の駅で足止めをくらう人が多数発生した。

【映像】「ホテル代・タクシー代払え」「シャワー用意しろ」元駅員が受けたクレームの数々

 一方、新幹線の中で「運転見合わせ」の状況に置かれた人も。一部報道によると、静岡県・新富士駅付近で停止した新幹線は5時間以上にわたり線路上で停止。その後、少し移動して新富士駅ホームに停車したが、駅係員からの「このまま車内にいられるかどうか分からない」という話があり、憤慨する乗客もいたという。

 この緊急時にJR東海は水や軽食を配布したほか、新富士駅を含む複数の駅で車両をホテルとして開放。そして、3日午前7時過ぎ、雨の規制が解除され、16時間ぶりに運転が再開された。

 大雨による運休が発生した時、また起こる可能性がある時に利用者・駅員・企業はどう対応すべきなのか、『ABEMA Prime』で議論した。

■元駅員が受けたクレーム

大雨による新幹線運休の可能性はわかっていたはず? なぜ混乱を繰り返す? 利用者と企業に求められる対応は
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 首都圏の新幹線の停車駅で駅員として10年間勤務した経験があり、現在はフリーライターのGATA_TETSU氏は「お客様から『いつ再開するんだ?』『どうなっているんだ』など、本当に何でもかんでも聞かれた。こちらとしても回答したかったが、どんどん情報が入って錯綜していると難しい」と説明。運転再開は天候次第でもあり、「『すみません。気象予報士じゃないのでわからないです』と答えたこともあった」という。

 そのほか経験談として、「ホテル代を出せ」「タクシー代を払え」「列車に宿泊させるならシャワーを用意しろ」などの要求があったというが、対応できるのは切符の払い戻しまで。「最大限の提案はするが、その先はやはり会社的にできない」。

 また、車両をホテルとして開放することをメディアなどが「列車ホテル」と表現することについては、「シャワーにトイレ、個室があってと、『本当のホテル』という誤ったイメージを持ってしまう方がいるため、あまり好きな言い方ではない」と疑問を呈した。

■情報伝達の課題

 夜が明けても混乱は続いていた。番組が取材した人によると、3日正午の運転再開時は「東京駅は今まで見たことがないほどの人だかり」で、「停車駅ごとに乗降客で長時間停車。京都に70分遅れで到着した」という。

 また、名古屋駅で新幹線への乗車を試みた女性は、「改札内にしか情報の表示が見当たらず、これから乗ろうとする人には見えない。行列が駅の外まで伸びているのにどこに並んでいいか、誰に聞いていいかも分からない。ホームページの情報を自分で調べろと言われても…」と話した上で、現場の駅員は必死に対応していたものの会社としての姿勢に疑問を持ったそうだ。

 GATA_TETSU氏は「払い戻しをするために駅に来る方が多く、それでパニックになってしまう。前もって情報を他の駅で聞いたり、ネットで調べたりするのは重要だが、会社側も払い戻しについて『すぐ来る必要はない』『遅れても大丈夫』ともっとアピールをするべきだ」と指摘した。

■計画運休は必要?

 今回は計画運休の必要はなかったのか。新幹線の元指令員は「今回の大雨は台風本体ではなく、線状降水帯によるもの。時間・場所などの事前予測が難しく、計画運休しない判断は妥当だった」「在来線は“念のため”事前に減便・運休するが、これは新幹線より設備が弱く、規制が厳しいため。路線を短く区切ったり車両の退避場所が多いなど、柔軟な運用が可能」との見方を示している。

 中には、今自分がいる地域の天気で判断して文句を言う利用者もいるそうだ。GATA_TETSU氏は「台風の場合、東京は晴れているが、名古屋の方は荒れている、ということもある。残念ながらそれが分からない人が結構いる」と述べた。

 プロデューサーで慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「『動き出したけど、やっぱり嵐になった。停まるしかない』と経験しないと納得しない人がいるということだ。この点について沖縄は先進地域で、友人によると、頻繁に台風が来るから予報の段階で街全体をシャットダウンすると。習い事なども全部中止にして、払い戻しも振り替えもせず、『地域みんなで諦める』。結果的に晴れて、店が空いてなかったとしても、誰も文句を言わない社会ができ上がっているらしい。日本全体でも、予報段階でリスクが高ければ、結果晴れたとしてもみんなで社会をスリープさせるのがいいのでは」と提案した。

 では、運休の可能性がある時、我々はどう行動すべきなのか?GATA_TETSU氏は「『とりあえず行けるところまで行こう』『大きなターミナル駅まで行こう』という思考は危険。遅延で乗り継ぎ先の終電がなくなったり、運休などで立ち往生の可能性がある。ホテルがない駅で停まってしまったら大変なことだ。駅員を頼るだけでなく、緊急時は自分で考えて行動してほしい」と呼びかけた。

(『ABEMA Prime』より)

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