3Kとは、「きつい、汚い、危険」の頭文字を取り、肉体労働を要する仕事が敬遠されがちな理由をまとめた、バブル期に広まった言葉だ。そんな3K職場と言われるにもかかわらず、全社員の4割が女性というゴミ収集業者が広島県にある。
■女性社員が脅威の40%
広島県でゴミ収集業を展開する株式会社タイヨーの代表、元山琢然さんに聞いた。
「うちの業界は特に、どちらかと言えば敬遠されがちな3K職場。きつい、汚いんだろうなというイメージは持たれてしまう」(元山さん、以下同)
元山さん自身もゴミ処理業界への3K職場という印象は事実だと語るが、この会社は業界他社にはないある特徴を持つ。それが女性の社員数だ。
「いま社員数は90名で、その約40%を女性が占めている。女性も体力があり、私が当初想定していた以上に皆さん仕事をしてくれる。重たいものを持ち上げるようなトラックも導入しているし、慣れてしまえばみんな結構やってくれている」
男性が多いイメージの業界に、なぜ多くの女性が集まったのか。募集にいたった背景とその工夫について、元山さんはこう振り返る。
「世代交代のタイミングでかなりの人数が辞めてしまった。うちの業界だと若い男性スタッフが一番重宝されるが、人材難で入ってこなかったこともあり、女性を意識した雇用をスタートした」
シングルマザーの苦労を知った元山さんは、会社の人手不足もあり積極的に女性の雇用に動き出す。しかし、子どもを預ける場所がないと女性が働けない。そこで元山さんはある行動に出る。
■男性寄りの職場環境に変革を
「一番大きな導入としては、保育園の設置というものがありました」
なんと、別事業で使っていた敷地を改装し、企業内保育園を整備したのだ。これがきっかけとなり、女性の就職希望者が増えたという。他にもオートマ限定免許でも運転できるよう、マニュアルが主流のトラックをオートマ車両に切り替えたり、汚れたユニフォームを会社で洗えるよう業務用の洗濯機を導入するなど、様々な施策を導入したという。そして、その影響は女性だけに留まらない。
「求人のホームページでも、女性を載せることによって男性の応募も増えているので、結果的に男女ともに働きやすい環境作りにつながったんじゃないかと思う」
男女ともに人材が集まってきたが、これからどのような会社を目指すのか。
「やっぱり地域に求められる会社を目指したい。男性社員ばっかりのゴミ収集業者と女の子もワイワイ働いている業者だと、やっぱり地域の方々の親しみやすさも変わってくると思う。地域の方に必要とされる企業を目指してやっていきたい」
この企業の取り組みについて、メディア企業を経営しつつ、ニュース解説を行っている、The HEADLINE編集長の石田健氏に話を聞いた。
「この業種に限らず、いま日本中で人手不足が問題になっているので、本当に素晴らしい取り組みだと思うし、この会社から学べることが非常に多い」
――多くの仕事は男性に最適化されている?
「一般的に、力仕事は女性に向いてないというイメージがまだ強いと思うが、最近のテクノロジーで重いものでも簡単に持てるとか、肉体労働にも変化の流れがある。実は、力仕事だから女性が入れないのではなくて、男性向きと思われてきた力仕事だから、男性のために職場が最適化されてしまっていたことが要因。また、ユニフォームが大きい、つなぎだから女性がお手洗いに行くときに着替えにくいなどの問題もあった」
「昔話題になったもので、消防士のユニフォームをある一定以上のサイズしか作っていなくて、女性が就労に来たら『このサイズのユニフォームがないのでやめてください』と言われたという話があった。そういった形で、男性に最適化された職場によって女性が参入しづらい、女性の就労機会が奪われていることがあるので、他の会社でも応用できる」
――力仕事でも女性は働ける?
「個体差も含めてだが、生物学的に男性の方が筋肉量が多いために向き不向きはあるが、全ての力仕事・肉体労働で当てはまるわけではない。賃金だけで人手不足を解消しようという会社がまだまだ多いが、実は職場環境を整えるなどちょっとした工夫だけで雇用機会はかなり広がると思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
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