「笑って」と言わないで…“マスク解禁”で葛藤 感情表現に苦労する人たち
【映像】笑顔って必要? 感情表現できずに誤解も…感情表現のあり方
この記事の写真をみる(6枚)

 先月8日、新型コロナの感染症法上の位置づけが「5類」に移行した。マスクの着用は3月から個人の判断に委ねられ、分類の引き下げにより、さらに行動制限が緩められた形となった。そんな今、注目されているのが“笑顔”の講座だ。

【映像】まるで別人…!「笑顔がトラウマ」な東大生ホスト イメチェン前の写真(画像あり)

 「ロッテ」の調査によると、約35%の人がマスク生活で「笑顔のぎこちなさ」を実感しているという。

「上の歯が8本見えるように口角を上げていただいて。ただし、この時に目の周りがリラックスしていることがポイントです」(「笑顔育」代表・川野恵子さん)

 都内にある創形美術学校で行われた就活用講座には、笑顔をレクチャーする講師・川野恵子さんの姿があった。マスク解禁のニュースが流れると、川野さんの元には依頼が急増し、2~4月は前年の4.5倍になったという。

 コミュニケーションには欠かせない笑顔だが、中にはうまく笑えずに葛藤する人たちがいる。

 笑顔が苦手なさくらさん(仮名・20代)は「中学生の時の同級生に、大人になってから(当時)笑ってなかったよねと言われたり、先輩に『実はあの時全然楽しくなかったでしょ』と聞かれる。自分としてはすごく楽しかったし、あまり笑えなかった思い出はないが、外から見た時にそう伝わっていたんだと知った」と話す。

「笑って」と言わないで…“マスク解禁”で葛藤 感情表現に苦労する人たち
拡大する

 感情があまり表情に出ないため、誤解されることが多いさくらさん。社会人になる前に家で一人、笑顔の練習をした。しかし、無理をして笑顔を作った結果、さくらさんは疲れてしまう。

「もうあまり人としゃべりたくないと思った。ご飯も1人で食べた。人とコミュニケーションをとることをやめた時期があった」

 東大農学部4年生のじゅんさん(23歳)も「笑顔が苦手だ」と明かす。きっかけは小学6年生の時に言われた先生からの“ある一言”だ。

「卒業アルバムの個人撮影に時間がかかった。担任の先生から『君の笑顔ってちょっと不自然だよね』と言われて、これが大きなトラウマになっている。その後は笑顔を作ることが怖くなった。『笑って』と言われることがすごく嫌だ」

「笑って」と言わないで…“マスク解禁”で葛藤 感情表現に苦労する人たち
拡大する

 2年前、じゅんさんは「自分を変えたい」とイメチェン。今は、究極の接客業ともいわれるホストに挑戦し、「SMILE」という店で働いている。接客の様子をのぞいてみると、お店の名前通り、スマイル全開のじゅんさんがいた。

 ただ、そう簡単にトラウマは解消されないのか、写真撮影では“真顔”に。じゅんさんの指名客は「ホストってカッコいい仕事なのであんまりヘラヘラするよりは、カッコつけて笑わない方がアリだと思う」と話す。

「笑って」と言わないで…“マスク解禁”で葛藤 感情表現に苦労する人たち
拡大する

 常に笑顔を求められるアイドルは、日々どのように向き合っているのか。タレントの山崎怜奈は「握手会の日は休憩時間も含めると、1日トータル10時間くらい笑っていた。『スマイル仮面症候群』になって、ほぐしても無理で、家に帰っても笑っていることがあった。お笑い番組を見て心から笑うのと、接客としての笑顔は全然違うなと思った」と述べた。

 笑顔にはどのような効果があるのだろうか。早稲田大学で笑顔を研究し、現在はスマイルサイエンス学会代表理事を務める菅原徹氏はこう述べる。

「笑顔は人との距離を縮める重要な情報だ。情報の受発信のスピード、親和性を高めやすい。一方で“いい顔”は笑顔だけではない。前提として『笑顔でなければならない』という不合理な信念が入っているので、トラウマから抜け出すには、それを取り払うことが一歩目だと思う。僕にも6年ぐらい笑顔を失った時期があった。高校の後輩の女の子に『菅原先輩の笑顔って気持ち悪いよね』と言われて、それがトラウマになった。10年ぐらい格闘技にのめり込んでいたので、筋肉の研究をしたくて研究室に行った。そこで『首から下の筋肉はけっこう研究されているから、菅原君は首から上の研究をやって』と言われて、表情筋の研究をすることになった」

「笑って」と言わないで…“マスク解禁”で葛藤 感情表現に苦労する人たち
拡大する

 菅原氏によると、笑顔には乱れた自律神経をリセットしてくれる効果があるという。

「笑顔の人と食事をすると、おいしく、高価に感じる。『フェイシャルフィードバック効果』といって、短時間では幸福感が上がるが、笑顔を無理やり作ってもそれが続くわけではない。結局、自分の中のワクワク感とは何か。つながりをどのように感じるかが大事だ」

「笑って」と言わないで…“マスク解禁”で葛藤 感情表現に苦労する人たち
拡大する

 笑顔の黄金比率は「デュシュンヌ・スマイル」と呼ばれ、名刺サイズに近い形で上に目、下に口がくるように笑うと“感じのいい笑顔”になるという。菅原氏は「デュシュンヌ・スマイルはマスクをしていても、100%相手に伝わる。一方で、目が笑っていないノー・デュシュンヌ・スマイルでは、マスクをしていると悲しみや怒りの表情にも見える。目で笑えることが大事だ」と説明。

 開口形状によっても魅力を感じる度合いは別れている。その上で、菅原氏は「形などを分析して『これだよ』といった比率はあるが、笑顔は“人の顔に咲く花”だと思って欲しい。バラやヒマワリのような笑顔があっていいし、コスモスみたいな笑顔があってもいい。人それぞれ骨格が違うのだから、自分なりの笑顔を作ってそれを伸ばしていただけたらと思う」と述べた。(「ABEMA Prime」より)

【映像】笑顔って必要?
【映像】笑顔って必要?
【映像】ひろゆき氏「個人で選べばいい」日本で“脱マスク”進まない理由は?
【映像】ひろゆき氏「個人で選べばいい」日本で“脱マスク”進まない理由は?
【映像】歌舞伎町“立ちんぼ”に若い日本人女性が急増…進む風俗のフリーランス化
【映像】歌舞伎町“立ちんぼ”に若い日本人女性が急増…進む風俗のフリーランス化
歌舞伎町“立ちんぼ”に若い日本人女性が急増…進む風俗のフリーランス化

■Pick Up

【Z世代に聞いた】ティーンの日用品お買い物事情「家族で使うものは私が選ぶ」が半数以上 

この記事の写真をみる(6枚)