「産みの苦しみは必ずある。『ミスはゼロじゃないと』だと何もできない」マイナンバーカードトラブルの背景は? 制度設計に関わった元大臣補佐官に聞く
【映像】「産みの苦しみ」マイナトラブルの行方は? 足りないのは理想の社会のイメージか
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 マイナンバーカードを巡るトラブルが相次ぐ中、岸田総理は12日、河野太郎デジタル大臣の更迭要求を否定し、来年秋に予定されている健康保険証の廃止について、予定通り進めていく考えを示した。

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 内閣府大臣補佐官としてマイナンバーの制度設計に携わった元衆議院議員の福田峰之氏(多摩大学ルール形成戦略研究所・客員教授)は、この事態をどう見ているのか。

 ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した福田氏は「個別のトラブルに対しては責任をしっかり追及して、直していくことは重要だ」とした上で「河野大臣が辞めて解決する問題ではない」とコメント。

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 政府は2024年秋までに現行の保険証を廃止し、マイナ保険証への一本化を進めている。一方で、去年11月までに別人の医療情報が登録されていた事例が7300件以上確認されていて、厚生労働省が保険組合などに点検を要請する事態になっている。

 福田氏は「保険証との一体化は、僕が補佐官をやっていた2016年から議論を積み上げて、今に至る。急に始めたわけではない。時間をかけたら問題が出てこないわけではない。産みの苦しみは必ずある。ヒューマンエラーが多いのはおっしゃる通りだが『ミスはゼロじゃないとやれない』と言ったら、何もできない。ある程度、国民の皆さんも理解してもらいたい」と話す。

 9日の会見で河野大臣は、トラブル対応で「朝の3時、4時まで残業という職員もいる」と発言。「人口が550万のシンガポールのデジタル庁は職員が3500人いる。日本のデジタル庁は800〜900人で諸外国と比べると人員的に厳しい」と述べている。

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 デジタル庁の人員構成について、福田氏は「あくまで行政機関なので、アプリを作れる技術者がいるわけではない。急に人を集めたから、民間からの出向も多い。本来であれば、人を増やすだけでなく、人の質を上げて、少なくとも一定のところまで進められる人材を揃えた方がいいと思う。韓国は少なくともそうなっている」と説明。

 番組司会のテレビ朝日平石直之アナウンサーは「利便性があまり伝わってこない」と指摘する。

「メディアは『マイナカード』のデメリットをたくさん伝えているが、例えば、パスポートの更新は今まで2回行かなきゃいけなかった。申請のときも行列ができている。でも、マイナンバーカードがあれば、スマホから1回で更新ができる。住民票もコンビニで取れる。そういう利便性が伝わってこない」

 これに対し、福田氏も「行政は利便性の伝え方が下手だ」と同意する。「真面目に『これが便利です』と紙を配っても、なかなか受け入れられない。行政の伝え方にも大きな問題がある。機能説明ではなく、国民のライフスタイルの中にどれだけ溶け込めるか。昔、iPhoneのCMは機能の宣伝なんかしなかった。『こんなライフスタイルの中で使えるよ』と伝えるだけ。一番大事なところが抜け落ちている」と述べた。

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 コラムニストの河崎環氏は「行政の合理化を社会がちゃんと理解できていない」と話す。

「国民は2万ポイントと引き換えに政府に情報を売り渡すくらいに思っている。そうではなく、行政をみんなで合理化するために、情報を紐付けようよとは考えられないのか。例えば、自分がおじいちゃん、おばあちゃんになった時、全自動の車に乗って、どこかのスーパーに行くとする。店内を歩くだけで自分の欲しい物がカゴの中に入っていく。代金は年金が入ってくる口座から、自動で引き落とされていく。そういう生活ができるようになるんですよって教えてくれれば、みんなハッピーに考えられると思う」

(「ABEMA Prime」より)

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