4日に投開票となった、青森県知事選。県民が選んだのは、前むつ市長、44歳の宮下宗一郎氏だった。
【映像】所得ワースト2位、平均寿命ワースト1位の青森を変える政策とは?
若者の流出や、少子高齢化による人口減少、農業従事者の後継不足など、多くの課題を抱える青森。宮下氏は選挙カーや街頭演説だけでなく、ネットやSNSを駆使して政策を広め、有権者との対話でその意見を政策に落とし込む形を取った。結果は県内全ての市町村で宮下氏が勝利。前青森市長の小野寺候補に23万票の大差をつけた完勝だった。
こうした中、選挙戦で注目されたのは57.05%という、4年前と比べて急増した「投票率」だ。
近年、国政・地方選挙にかかわらず、投票率の低下、選挙や政治への関心が薄らぐ中、どうすれば政治への関心が高まるのか。『ABEMA Prime』では、青森県の宮下新知事とともに考えた。
◼︎投票率が高かった理由
投票率の上昇について、前東京都議で選挙ドットコム編集長の鈴木邦和氏は「このぐらい上がるのは、実はけっこうあること。現職が再選を繰り返している選挙の投票率は伸びにくいが、昨年の石川県知事選のように現職が引退して新人同士の争い、しかも激戦になった時は、有権者が“1票の価値”を感じて投票率が上がる傾向にある」とコメント。
選挙中の手応えについて、宮下氏は「県民のみなさまがあらゆる部分で求めていた『変化』を感じ取り、それを選挙で表現できたと思う。今回の選挙は、徐々に街頭演説に来てくれる方が増えて、赤ちゃんを抱えたお母さんから99歳のおばあちゃんまで来てくれた。一番多い時だと1カ所で1200人くらいという、見たことのない景色が広がっていた」と振り返る。
◼︎圧勝を成し遂げた戦略とは?
20年現職を務めた三村申吾知事の任期満了に伴う今回の選挙は、新人同士の争いとなり、宮下氏と前青森市長の小野寺晃彦氏との事実上の一騎打ちとなった。宮下氏と小野寺氏は、同世代で元官僚出身、元市長と属性だけを見るとほとんど同じだが結果は宮下氏が圧勝。これをどう受け止めているのか。
宮下氏は「選挙のやり方を大きく変えた。普通、選挙というのは自分の主張を有権者に理解してもらって輪を広げていくもの。しかし、私は一方的に話さずに、ともかく聞いて、聞いて、その内容を鏡のように政策にして映して、みなさんに理解していただいた。この手法の違いは、最後に大きく出たと思う」と説明。
政策集や青いジャケットなど、イメージ戦略が刺さったのではという声もある指摘について、「本当かどうかは分からないが、地元・むつ市のユニクロでは青い服がなくなったという話があった。それぐらいムーブメントになっていた。大事なのは政治に関心のない人たちにどうやって浸透させるかということだ。ただの選挙ではなくて県民運動、最後は文化運動にしていかないといけないと考えてやっていた」と答えた。
また、鈴木氏は「投票率より驚異的なのは、今回宮下さんが全ての地域、全ての政党支持層・無党派層で得票率トップだったこと。例えば共産党の支持層の中でも、宮下さんがトップだったというのは驚きだ。政策集も具体的で素晴らしかったが、それ以上に『青森新時代』という言葉。政策より上のレイヤーの強いメッセージが広く有権者に届いたことで、政党を越えた支持につながったのでは」と述べた。
■「生まれた場所でこれだけ悔しい思いをしないといけないのか」
宮下氏は、現職の引退表明前から県知事選への出馬を口にしていたというが、そうした「熱源」はどこにあるのか。「『生まれた場所でこれだけ悔しい思いをしないといけないのか』という想いはずっとあった」と話す。
「私が生まれたむつ市や下北地方はいろいろなところから忘れられ、道路やインフラ、医療も弱い。すばらしい産業群があるわけでもなく、今は原子力産業がメインだ。青森県だって同じで、いろいろなことが遅れていて、所得はワースト2位で、平均寿命もワースト1位。自分で立ち上がって改善していかないといけないし、そのプロセス・運動論は自分自身がいつも考えているので頑張れる」
「どのような青森県を目指したいか」という問いに宮下氏は「若い人たちがちゃんと戻って来られる青森県にしたい。そのためには魅力ある仕事作り、それから企業誘致・創業支援を徹底してやっていく。また、1.24まで下がってしまった合計特殊出生率を全国に先駆けて2にするプログラムを『青森モデル』として作って、全国の模範になりたい」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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