6月8日、埼玉県の2カ所の県営のプールで予定されていた6つの水着撮影会が、管理する公園緑地協会の要請を受け中止となった。5月末に県民から「18歳未満の女の子が出演しているのではないか」「過激なポーズが散見されている」という指摘を受け、過去のイベントの写真調査した結果、2つの団体で「会場の使用条件違反」が確認されたという。
【映像】「マイクロビキニ」「ニップレス」…水着撮影 県営プールの禁止事項
この要請の前日には、日本共産党埼玉県委員会が「過去のイベントの動画を見ると、水着姿の女性がわいせつなポーズやわいせつなしぐさで映っており、明らかに『性の商品化』を目的とした興業です」と指摘。共産党の女性議員から会場の貸し出しを禁止するよう、埼玉県知事への申し入れがされていた。
混乱の中、埼玉県の大野元裕知事は12日、「水着の撮影と今回の中止要請の判断には何の関係もない。許可条件に違反したかどうかを適切に判断してほしい。これが協会に対して指導したこと」と説明。そして、中止が一転し、知事の指導の下、過去に違反していない4団体への中止要請が撤回されることとなった。
果たして、水着撮影会は「性の商品化」なのか。『ABEMA Prime』では当事者とともに考えた。
■「ルールを守っていたのにどうして?」
今回の「Fresh!撮影会」に出演予定だったグラビアアイドルの蒼猫いなは「今回はよくある公園ではなく、プールのある大きな公園だ。外からはよく見えないし、受付があって参加するかたち。さらに、時期は(プール開き前後の)5、6、9、10月なので、どういった経緯でクレームが入ったのかがわかりにくい」と疑問を呈する。
今年に入ってから規制は厳しくなったものの、対応してきたという。「公園ごとに『この衣装はOK、この衣装はNG』という基準が明確になった。それを私たちは守っていたという意識があったので、なぜ突然こうなってしまったのか」と心境を語る。
そんな中での「仕事を奪わないで」というツイート。蒼猫は「水着撮影会から仕事が増えていくこともある。私もそれをきっかけに『DVDを出さないか』『事務所に入らないか』などたくさん声をかけていただいた。もしそこが制限されてしまったら、活躍できる場が一つなくなってしまう」と懸念を示した。
■政治の関与はやりすぎ?行政側の過剰反応?
規制を守っていない団体だけを中止にするという判断はできなかったのか。「Fresh!撮影会」の主催者、株式会社エーテル常務の植田章太郎氏は「共産党の方からも意見が出て、私たちに連絡が来るまでスピード感のある要請だった。今までは違反があったら注意やルールの追加が行われていたが、今回は違反をしていないところにも中止が要請されたというのは、水着撮影会そのものを問題視していると感じた」と指摘。
また、クレームに対しては「施設ごとにルールが異なるが、私たちはイベント開催前に、周りから見えないようブルーシートを張って、ゾーニングには気を遣っている。ファミリーの目につく場所でやっていたらクレームを受けると思うが、そうではないイベントに対して、わざわざ覗きに来てクレームをつけるとしたら行き過ぎた行為ではないか」との考えを示す。
田端大学塾長の田端信太郎氏は「共産党が知事に申し入れをしているが、本来は議会で『いかがなものか』と質問をして、その後にルールを作っていくべき。自由を尊ぶ民主主義の法治国家という前提で、こういう形で水着撮影会が潰されてしまうのは大問題だ」と苦言を呈した。
作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「性と社会の関係性についてクレームがつくというのは、ここ数年くすぶっている。その都度『すみませんでした』と謝って取り下げてきたが、ここ1、2年ほどで風向きが変わってきた。今回も最初は緑地協会が過剰反応してしまったが、最終的に知事が腹をくくって対応した。ようやく『クレームにただ屈するだけではなくて、ちゃんと議論しよう』というスタート地点に立ちつつある。本来であればこういう場所に共産党も出てきて議論をすべきだと思う」と話した。
なお、番組は共産党や撮影会に否定的な方にも出演依頼をしたが、多忙などを理由に断られている。
■“性の商品化”の是非
紗倉まなは「ある意味『エロい目で見ている撮影者と、エロい目で見られているモデル』という構図をどう捉えるのか?」と質問。
蒼猫は「この仕事をしている以上、そういう目で見られるのはもちろん覚悟している。むしろ私からしたら、どうして出しちゃいけないのだろう? という気持ちだ。ボディービルダーの方も筋肉を見せるために水着姿になるように、私たちも身体をちゃんとその日に向けて仕上げてきている。くびれや胸、おしりもきれいに見せたいのに、それを『性の商品化』と言われるのはちょっと違和感がある。私たちは美を見せたい」と答えた。
佐々木氏は「個人的な意見だが、『性を商品化して何が悪い』と思っている。あらゆるコンテンツから完全に女性の性を切り離すことは、現実的にあり得ないのではないか。女性の水着姿を鑑賞する時、美しさに対する敬意と同時に、性的な欲求はゼロにはならない。そこは前提として認めるべきだと思う。今の自由で民主主義的な国家においては、曖昧なものを禁止するのではなく許容する方向に進まなきゃいけない」と考えを述べる。
さらに、「1970年の急進的なフェミニズムが『性の商品化はよくない』といい出した。当時は“中年男性が抑圧的に若い女性を食い物にする”という構図が確かにあったが、現代に男性が金儲けの手段として若い女性を搾取するという構図はほとんど皆無に等しいのではないか」とコメント。「モデルやグラビアアイドルも、自己表現の1つとしてやっていると認識している。そこを“無知蒙昧な女性が男にだまされて水着になっている”とする考え方こそが女性差別だ。だから、自分の意思で水着になったりしている女性のイニシアティブを認めるべきだ」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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