脳波を使ってメールが送れるという研究が発表された。近い将来、テレパシーのような“言葉にしなくてもわかりあう時代”がくるのかもしれない。
頭に大量の器具を取り付けた男性が何ごとかをつぶやくと、パソコンが操作されGmailに文章が入力されていく。一体どうやっているのか。
「BMI(=ブレインマシンインターフェース)という、脳と機械、あるいは脳とコンピューター間の橋渡しをするインターフェースを使っている」
このシステムを開発した株式会社「アラヤ」取締役CRO兼開発研究部長の笹井俊太朗氏。今回の実験は、まず頭に超高密度の脳波計を装着。送信ボタンなどのよく使うボタンに色を付け、装着者が色の名称をつぶやくと、音声ではなく“つぶやいた時の脳波”が認識される。脳波は色ごとに異なるため、正しいボタン操作ができるという。
しかし、実験で作られたメールは、とても長い文章だった。どのように文章を作り出したのか。笹井氏は「『ChatGPT』がなければ、満足いくメール返信システムは作れなかった」と話す。
ユーザーが過去にやり取りしたGmailの履歴から、何通りかの返信文をChatGPTで作成。それぞれに色を付けて、脳波で色を選択することで返信に成功したという。
「(初めて出力したときは)実験中なのでつぶやきながらも、感動で声が震えた」
この技術を使い、将来的には体の不自由な人がコミュニケーションを取れるようにしたいそうだ。今回の脳波分析は、アラヤの代表取締役CEOの金井良太氏が起業してから取り組んできた脳波データと「ディープラーニング」を使った研究が活かされている。アラヤでは、このデバイスを“AI支援型BMI”と呼んでいる。
「AI支援型BMIには、AIを使うポイントが2つある。脳の信号を読み取るところにディープラーニングを使うこと。そのデータを生成AIの技術と組み合わせることで、限られた資源でできることが増える」
ディープラーニングとChatGPTという2種類のAIを組み合わせて不可能を可能にしたというAI支援型BMI。10年近くAIと関わってきたと話す金井氏は“AIの未来”についてどのように考えているのだろうか。
「どうやって使っていくのかの議論はした方がいいだろう。我々が思っているよりも数段上の“すごいAI”が将来出てくると思う。準備しておく必要がある」
今回のBMIを作った笹井氏には“夢”があるそうだ。
「脳には“言葉にできない情報”がたくさんあるのではないか。言葉にする・しない以前の自分自身も気づいていない情報が脳の中には眠っていると思う。そんな情報も全て解読できれば、やろうとしたタイミングで最適な解を出してくれているという、“AIとの阿吽の呼吸”が築けることもあり得るのではないかと思う。今後は、脳情報の読み取りの精度や脳情報の種類を増やしていこうと考えている」
このニュースについて、『ABEMAヒルズ』に出演したサイエンスコミュニケーターの佐伯恵太氏は「脳波の測定技術の向上と進化したAIが登場したことが1つのポイントになる」として次のように解説する。
「笹井先生が付けている器具を使うには頭を剃らなければならない。こうした器具についても、段階的にではあるが、必要がなくなっていくのではないかと思う」
続けて、佐伯氏は脳波研究の今後の展望を語った。
「次の段階としては、思い浮かべた文字をそのまま文章にしてメールするというステップがあるだろう。その先を考えるならば、言葉にしている脳波自体を一種の『テレパシー』のようにして、相手に送ることで“言葉にしなくてもわかりあう”ことが可能になるかもしれない。
ほかにも、fMRIという技術と画像生成AIを組み合わせて“想像した画像を再現する”ということも出来るようになる可能性もある。そうした研究が世界中で行われている。テレパシーでなんでもわかりあえるようになった社会を想像するのも面白いのではないか」
(『ABEMAヒルズ』より)
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