国税庁は、昨年度に全国の国税局査察部・通称「マルサ」が告発した脱税事件の脱税額が、約100億円だったと公表した。新型コロナウイルスの影響が収まり、大幅に増加したとのこと。
普段は窺い知る人ができないマルサの実情についてテレビ朝日社会部 司法クラブ国税担当の織田妃美記者に話を聞いた。
――そもそもなぜ「国税局査察部」が「マルサ」と呼ばれている?
国税局査察部を意味する隠語がマルサ。査察の「サ」を丸で囲ったことが理由のようだ。
――脱税をしている人はどこに現金や貴金属を隠すのか?
マルサがある家に強制調査に入った際、畳をはがして床下を確認すると袋が3つ発見された。ここには3000万円弱の現金とプラチナなどの貴金属が。床下以外にも天井、さらには「ぬか床」もマルサにとっては“よくある場所”だ。
――“特異な隠し場所”の事例は?
普通の押し入れの下に「隠し金庫」があり、エレベーターのようにせり上がってきた事案もあったそうだ。このケースでは、金庫の設置業者との契約書が発見のきっかけになった。
――最近の脱税にはどのような傾向があるか?
トレーディングカード会社の元代表が告発された事件もある。元代表の男性は、知人から高額なカードを仕入れたことにして会社からお金を受け取り、経費を水増ししていたのだ。このようにマルサは社会流行にも敏感に反応して調査している。
――「マルサ」と聞くと、 “強力な権限”を持っている印象があるが実際にそうなのか?
たしかに、「任意調査」となる他の部署と異なり、令状をとって「強制調査」ができるのは査察部だけだ。ただ、この強制調査に至るまでには、“涙ぐましい努力”がある。
――“涙ぐましい努力”とは?
東京国税局の管内は、東京・千葉・神奈川・山梨だが、嫌疑者を全国どこまでも追いかけ、何週間も粘り強く内偵調査をする。たとえば、「何時に家に帰ってきて何時に部屋の電気がつくか」「ごみ出しにはいつ行くのか」まで、徹底的にその人の行動履歴を調査して、カネの流れがわかる証拠を探し出す。
――内偵調査の中には特殊なものもあるのか?
マルサが客として風俗店を訪れ、「1人の客に対して何枚のタオルを使っているか」を調べることもある。これにより「1日の客の人数」を割り出す材料にしているのだ。
――取材を通して驚いたことは?
マルサは「生活レベルが妙に高い」ことに気がついてしまうそうだ。そして、「ある飲食店の店主がハイブランド品を身に着けている」などといった、小さなことも「メモ」にして共有しているという。一般人からのタレコミから調査に発展することもある。脱税をしてもバレる。なぜなら「思っている以上に見られている」からだ。