「ワグネル反乱は1917年以来の武装蜂起」 “緊迫の24時間”の舞台裏は? 「なにかのショー・演劇を見せられている感じも」
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 所在不明になっていた「ワグネル」の創設者・プリゴジン氏は反乱が収束して以来、初めてSNSに音声メッセージを投稿した。国を転覆させるためではないと主張した一方、自身の居場所については明らかにしていない。

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 ワグネルは、24日にはロシア・ロストフ州の中心都市にある南部軍管区の本部や警察署などを制圧。その後、部隊を首都モスクワに進軍するとしたが、状況が一転したのは、プーチン氏の演説から約9時間半後、モスクワまで200kmというところで突如、進軍停止を発表した。

 わずか一日で終わりを迎えた反乱とは一体なんだったのか? 『ABEMA Prime』は専門家に聞いた。

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 ワグネルは13時間で約800kmを移動したことになるが、防衛省・防衛研究所米欧ロシア研究室長の山添博史氏は「時速60km以上で夜通し走り続けるというのは、にわかには信じがたい。リペツク州まではロシアの情報源が確認したと思うが、モスクワの手前200kmまで行ったかも定かではない。留めるような勢力がなくあえて見逃したのか、いずれにせよ『留めよ』という命令を受けていなかったのは言えると思う」との見方を示す。

 拓殖大学海外事情研究所副所長教授の佐藤丙午氏は「ワグネルの全体兵力が2万5000ぐらいで、今回北上したのが5000と言われているのは少ない印象だ。モスクワ近くに来たら防衛隊との戦闘に遭遇するだろうから、そこまではロシア軍が“見逃した”というのがおそらく正しいだろう。ただ、ワグネルとロシア政府の間でなにかショー・演劇を見せられている感じがしないわけでもない。2人が示し合わせたかはわからないが、プリゴジンがプーチンではなく国防省や参謀長を批判してきたことには一貫性があった。そういう意味で、非常に奇妙な反乱だ」と指摘。

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 山添氏は、ワグネルの反乱は「ロシア軍編入を迫られたことへの反発」「政治的地位を求めた」もので、撤退は「プリゴジンが何かしらの対価を得た?」「計画どおりにいかず妥協し生きることを選んだ?」と推測する。

「ロシア国防省は、ワグネルは非正規部隊・民間軍事会社として“ちゃんと契約しろ。統制下に置く”と言っていたが、それを拒否するためにプリゴジンは強気に出て、“実力を見せれば引き下がらざるを得ないだろう”と狙ったのではないか。もう一つ、“ワグネルは強い。プリゴジンが好き”という人がわりといる。憲法で禁じられている恐ろしい軍団だが、激戦地のバフムトで戦果を残したということで評価されているわけだ。“特別な地位を作るから大統領の下でやってくれ”とプーチンからなだめられることを狙ったかもしれないが、プリゴジンは行き当たりばったりのことを言うので、あまり真面目に考えないほうがいい」

 その上で、「“国防省や中央は腐っている”と思っているプリゴジンの友達はちらほらいたが、“反乱は駄目だ”とプーチン側についた。他に不満を持っているロシア軍の部隊もついてきてくれると期待したものの、みんなついてこず、途中で失敗してしまったのでは。自分1人が取り残されて『命だけは保証してやる』と言われたら、そっちを取るしかなかったということだと思う」とした。

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 この見立てに佐藤氏も「プリゴジン、ワグネルが反乱を起こすという情報を、アメリカはかなり初期の段階で手に入れていたと報道されている。逆にそれだけ杜撰な反乱計画だったのかという印象だ。とりあえず突入して、なんとかみんながついてきてくれると思ったら意外と孤立していた、という分析は納得できる」と同調した。

 では、プーチン大統領はこの反乱をどう見ているのか。佐藤氏は「ウクライナ問題を収束させる正解がない中で、ロシアの弱体化は歓迎すべきことなのは間違いない。ただ同時に、この反乱が成功するとは思っていなかったというくらい冷淡だ。プーチンはこの反乱を通して、“誰が味方で、誰が敵で、敵が何をしているかよくわかった”という趣旨のことを言っていた。ロシア側にしてみると反乱者・裏切り者が誰なのか、敵と内通しているかがわかると思う。つまり、“アメリカは手を出すな”というメッセージを出し、それをアメリカ側も受け取っている」と説明。

 さらに、山添氏は「レーニン、トロツキーが率いた1917年の十月革命の時は、かなり少数精鋭で宮廷に突入した。兵力で圧倒したわけではないが、周りが戦えなかったという状況で、そういうシナリオも歴史上はある。今回はそれ以来の武装蜂起だ。さらに16世紀、ポーランドが攻めてきてモスクワが戦争で負けたということも、プーチンは思い出していると思う」と推察した。

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 一方で、欧米諸国はロシアの内側からの瓦解を望んでいるのか。佐藤氏は「欧米メディアの分析の中で共通して出てくる言葉が、“ロシアは世界の半分の核を持っている”と。ロシアが不安定になることはウクライナよりも大きな問題で、そちらを重視すべきだという意見が共通してある。政府から発表はないものの、本音の部分では核のリスクを起こさないというのが最優先だと思う」との見方を示す。

 山添氏は「急速に瓦解していく場合、プーチン大統領という中心がいなくなって、誰の指示も言うことも聞かないし、次の政権を決められないとなると、内乱状態になる。それはウクライナにとっても非常に危険で、ザポリージャ原発や核を誰が管理するのか。そう簡単にいかないだろうと思うが、混乱したロシアが“都合のいい弱いロシア”とは限らない。“弱くて怖いロシア”が歴史上に何度もある」と危惧した。(『ABEMA Prime』より)

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