子育てと仕事の“両立”という、子を持つ親にとっての永遠の悩みを育休期間に解消しようとする勉強会がある。「育休プチMBA」と呼ばれるその内容に迫った。
「かつてのように仕事がこなせるのか、育児との両立はできるのか」。育休中につきまとう不安を解消すべく運営されている「育休プチMBA」。これは、育休期間を利用して、スムーズに復職するための思考力をトレーニングするというもの。子連れで参加している人もいて、赤ちゃんを抱きながら講義を聞くことができ、受講中の授乳やおむつ替えも可能だという。
このプログラムを立ち上げたのが、経営学者の国保祥子氏。スタート当初は、参加者6人の小さな勉強会だったそうだが、10年目となる現在、受講者数は延べ17000人を超えるほどになったという。
勉強内容は、復職後に起こりがちな状況を事前にシミュレーションしておくというもの。子どもの発熱で早退せざるを得ないが、翌日の会議資料ができていないなど、リアル且つ具体的な状況を想定し、実際に起きたときに乗り越えられる考え方や、回避できるコミュニケーション方法をディスカッション形式で学べるそうだ。
国保氏によると、復職者が陥りがちな思考として、残業できず同僚に迷惑をかけてしまう恐れから、仕事に消極的になり最小限の仕事しかしなくなる傾向があるという。
「真面目な人ほど不安に思い、仕事に対して消極的になる傾向がある。しかしそれは外から見たら『モチベーションが低い人』だ。チームのために手を差し伸べてくれない人に見えてしまう。ちゃんとやりたい気持ちがあることや、協力したい気持ちを言葉や行動に出していくことが重要だと思う」
勉強会では、本人の意思と周りの評価のギャップに気付くため、上司の立場になって考える場面も。
「私たちは“マネジメント思考”と呼んでいる。会社目線・管理職目線で物事を考えられるようになる思考トレーニングは(育休プチMBAの)特徴だと思う。思考力があれば問題に直面した時にも突破しやすくなるし、心が折れにくくなる。不安を取り除くことによって、その人の本来持っているポテンシャルを発揮できる状況を作れるのではないかと思う」
また、講座終了後に開かれる交流会は貴重なコミュニケーションの場となっているそうで、育休プチMBAでの学びによって復職に向けての心の備えができつつあるようだ。
「いろいろな方の意見をたくさん聞けて、“自分に無かった視点”もありすごく参考になった。そもそも、育休中にこういうディスカッションに参加すること自体がないので、頭を使うトレーニングというか、リハビリになった気がする。すごく勉強になった」(参加者)
「(仕事への意欲を)言葉にしていいんだと。うまく伝えられるように、もう少し講義を重ねていきたい。やる気がないと思われたくないが、実際にできないことはある。(やる気があることを)どうやって伝えるかが課題だと思う」(11月に復職予定だという女性参加者)
「(育休の)時間を活かして勉強する、能力開発をすることで、パワーアップした状態で復帰することが可能になる。働く個人から見たら、一生使える仕事のための武器を育休中に習得することができるし、会社からしても、社員がいない“コストの期間”を能力開発の期間という“プラスの時間”に変えてもらえる効果があると思っている」(国保氏)
(『ABEMAヒルズ』より)
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