美容後遺症の患者が今、増えている。美容後遺症診療医の朝日林太郎氏(日本医科大学講師)のもとには、日々多くの患者が相談に訪れる。
【映像】総額約3000万円…美容整形YouTuberのビフォー&アフター(画像あり)
美容後遺症とは、美容整形の後に起こるトラブルや合併症のことだ。この日、クリニックで行われていたのは、鼻を高くするプロテーゼを入れた患者の手術だ。手術前の朝日氏に話を聞くと「目立つしこりができたので、プロテーゼとしこりをしっかりとって、希望に合わせた鼻を作るような手術をやっていく」と説明する。
朝日氏がこの美容後遺症専門外来に赴任したのは、2020年4月。
「当時は初診の患者さんが1日5人いるかいないかくらいだった。今は多い日で20人くらい。年ごとにどんどん増えている」
ニュース番組「ABEMA Prime」では、実際に外来に訪れた患者さんに話を聞いてみた。
「2016、2017年だったと思うが、豊胸をしたらなんとなくピリピリ感があるし、仕事をしていても集中できなくて違和感があった。それで先生に駆け込んで」(50代)
「40年くらい昔に、鼻を高くしたらとか、二重にしたらとか、あの頃にけっこう行き始めちゃった。去年の夏にも一回鼻の辺りがおかしくなって、腫れてきちゃって」(80代)
7年前に手術をしたみほさんも美容整形を後悔している一人だ。
「セットバック整形という美容整形をした。口が前に出ているのを横から見てEラインを作って、横顔をきれいにする手術だ。笑顔がきれいになる、口元がきれいになるのが理想だった」(みほさん)
しかし、みほさんの期待は絶望に変わった。
「口元の感覚があまりない。時々口元が痛くなったり、笑顔がちょっと気持ち悪くなった。マスクがとれなくなって、もうめちゃくちゃ後悔している」
整形歴は20年以上、顔のフル整形4周目、総額約3000万円をかけた美容整形YouTuber・らびちゃんさんも日々後遺症に悩まされてきた。
「埋没、糸で留める簡単な埋没が2回、切開をがっつり6回やった。生きているので大丈夫だ」
これまで二重に関する手術を8回受けたらびちゃんさん。手術により目が閉じにくくなり、ドライアイや乱視にもなったという。骨の手術も5回経験し、寒い日は動かしづらく、しびれを感じるときもある。
▲美容整形YouTuberのらびちゃんさん
後遺症のことは一切クリニックには言っておらず、病院を変えながら美容整形をし続けている。去年、睡眠麻酔で手術を受けた回数は7回だった。
「目の整形をした友達も『視力がガタ落ちした』と言っていた。しびれや麻痺、左右差などは手術前に同意書を書く。私は『しょうがないか』と思って別のクリニックに行く。価格設定はすごく気にしていて、激安帯のクリニックは選ばないようにしている」
■ 約96%が「美容整形したら周りに話す」 公表するタレントやYouTuberも増加
かつてはタブー視されていたが、最近は美容整形を公表するタレントやYouTuberも増加。美容外科「東京イセアクリニック」の調査によると、今や約96%が「整形したら周りに話す」と答えていて、美容整形を隠さない時代になった。
朝日氏は「美容後遺症は定義が曖昧だ。いろいろな合併症があって、急性期の腫れや感染などで来られる患者もいる。5〜10年間経って、いろいろトラブルが出てきたけど、もうクリニックもなくなっていて、医者も退職しているケースが少なくない。そういった患者さんが後遺症外来に来られる」と話す。
美容整形業界が盛り上がる一方、手術後の維持について心配する声もある。朝日氏は「手術によりけりだ」とした上で「いわゆるアンチエイジングで適切な手術を行えば、ある程度、良い状態を長い間保てる施術もある。全員が10〜20年経ってどんどん崩れていく、不自然になっていくことは決してない。もちろん、適切なフォローアップは必要だ」と答える。
美容整形で起きるトラブルは医療の質の問題なのか。
「いろいろな要素が絡み合っている。美容医療は今ものすごく普及してきている。駅の広告もCMも多い。かといって、そこで起きたトラブルを診られる病院や医師が並行して増えてきているかというと、全くそうではない。本来トラブルが起これば、そのクリニックや病院が責任を持って診るべきだが、患者が受診できない理由がある。例えば、思ったような結果にならなかった時、その先生に相談するのはなかなか難しい」
美容整形を受けるに当たって、患者はどのようなことに気をつければいいのか。
「日本美容外科学会(JSAPS)という美容外科医の学会がある。ベースに美容形成の知識がある医師の集まりだが、この会員になっているかどうか。美容外科を選ぶ一つの基準として参考になる。あとは、とにかく適正価格の中でクリニック、医者を探してほしい。やっぱり安さには、それなりの理由がある」
美容整形の患者推移を見ると、近年10代の増加が目立つ。朝日氏は「周りに流されちゃうような年代はまだ早い。自分で考えて自分で結論を出せる、リスクを正しく理解できる。手術を受けるなら、この2つが絶対条件だ」と指摘。「少なくとも中学生、高校生といった10代を対象に『どんどん美容整形をやっていこう』といった風潮は違和感しかない」と述べた。
(「ABEMA Prime」)
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