タイタニック号見学ツアーでの事故で5人の死亡が発表された、潜水艇「タイタン」の残骸が海底から引き上げられた。回収されたのは耐圧室の先頭部分で、「潜水艇の心臓」とも呼べる制御システムの一部とみられている。残骸の中には、遺体の一部とみられるものも見つかったという。
タイタンには、周囲からの圧力に船殻が耐えられなくなって押しつぶされる「爆縮(圧壊)」が起きたとされる。今回、潜水艇の「筒状の部分」が見つかっていないとなると、やはり人が乗っていた部分に集中的な圧力がかかったのか。
タイタンの設計に対する安全性は事故以前から不安視されており、内部告発も出ているような「いわくつきの船」だった。今後は、回収された破片の分析や関係者の聞き取りなどを行い、事故の原因究明を進めるというが、全容解明は困難とみられている。
今回の事故に関して、映画『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督が「タイタニックもタイタンも、警告を無視した」とコメントしている。映画コメンテーターの有村昆氏は、キャメロン監督が『タイタニック』撮影にあたり、海底に33回潜っていたというエピソードを話す。
「もともと海洋学科の大学に行っている人。映画監督になるか、海洋学者になるか、その二択で悩んでいたくらい、海底に造詣が深い。キャメロン監督の映画を見ると、だいたい海がテーマ。『タイタニック』や『アバター』につながっていった布石がある。だからこそ『これは危ない』と警告の手紙を会社に何回も出していた」(有村氏)
映画『タイタニック』をめぐっては、事故直後のNetflixでの配信に批判の声が出た。2週にわたって放送したフジテレビは、心理的重圧を受ける視聴者への注意メッセージを表示した。こうした対応について、有村氏は「作品に罪はない」として、注意喚起の意味も込めて、改めて名作を見るきっかけになるとよいとの認識を示した。
現地で取材を続けるANNニューヨーク支局の鈴木彩加記者によると、タイタニック号の人気は根強いという。海底で劣化が進むなか、2016年の調査で「20年以内に崩壊するおそれがある」との結果が出たことにより、さらに希少価値が高まっていると伝える。
さらに技術が進むにつれ、冒険家や富裕層の間には「エクストリーム・ツーリズム(極限の観光)」なるものが広がりつつあるという。「例えば、民間人による宇宙観光が報じられているが、未開の地を対象としたビジネスは規制が行き届かない。FAA(連邦航空局)が宇宙観光に関する規制の枠組みを作っているものの、まだ初期段階。また、海底1万メートル超のマリアナ海溝へのツアーが2020年に募集され、値段は1億円だった。そうした深海のツアーは広がっているが、今回の事故を機に、観光目的の潜水艇はきちんと規制をすべきではないかという必要性が指摘されている」と話す。
遺族は運営会社に責任を問えるのか、専門家でも意見は割れているという。「ポイントとなるのが、会社がツアー参加者に対して“死傷しても責任を負わない”とする、『免責同意書』だ。これがタイタンに乗っていた5人と会社の間で結ばれていたので、責任を問うのは難しいと言う専門家もいるが、明らかに安全確保を怠ったり大きな過失がある場合、責任が問えるのではないかという指摘もある」。
タイタンのツアー広告では、安全性を前面に押し出し、NASA(アメリカ航空宇宙局)やボーイング社、ワシントン大学との共同設計をうたっていたが、事故後にNASAもボーイング社も関与を否定するコメントを出しているという。こうした背景から、「安全を裏付けるデータが間違っていたり、虚偽であることを伝えていたりする場合、免責同意書の効力に疑問符がつくようだ。いずれにしても、責任の所在がわからないので、これから時間をかけて原因究明の調査が進められていく」とした。(『ABEMA的ニュースショー』より)
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