ビジネスチャット上で頻繁に議論される、メッセージを読み「既読」の状態になっているものの返事がない「既読スルー」。先日、はてな匿名ダイアリーで既読スルーに警鐘を鳴らす投稿があり話題になった。
「どうもこの国の企業社会では“沈黙=NO”ということで受け取っておけという空気が支配しているようなのだ。いやそれで通じるからいいでしょという人に聞きたい。じゃああんたそれを子どもに説明できるのか?」
なぜ既読スルーをしてしまうのか。既読スルーにはどう対処すべきか。『ABEMA Prime』では、令和のビジネスチャットルールについて考えた。
「要求された見積もりを出したのに沈黙」「値段感や納期を伝えたら沈黙」「最終面接に進んだことを伝えたら沈黙」とブログ主が見聞きした例のように、“沈黙=NO”と受け取れという意味なのか。
ウェブ制作やマーケティングを行うウェブライダー代表取締役の松尾茂起氏は「テキストコミュニケーションは実はものすごく思考コストがかかる。対話だとセリフが飛び交って相手とノリやリズムを合わせられるのに対して、いきなり飛んできた長文のテキストに的確に要点を押さえて返信するのは高度な技術がいる。そのためすぐに返せない、一旦保留にしてしまう人がいる」と説明。
産業医・精神科医の井上智介氏は、「プレッシャーからどう答えるかを考えているうちに他の仕事で後回しにしてしまう」と指摘。上司は思っているほど反応を求めていない可能性はありつつも、送信側も無関心が一番つらいため「○○までに返事する」と一報を入れることを勧めている。また、送信側の心構えとしては、「リアクションを期待しない」「質問は疑問形に」「反応しやすい雰囲気に」としている。
松尾氏も「既読スルーは『送った側』にも何かしら原因がある」と指摘した上で、「既読スルーされないテクニック」を紹介した。
「まず、なぜ送っているのかという『目的』をちゃんと伝えること。次に相手の“読むコスト”を考えて構成を練り、飛ばし読みされたとしても重要なポイントが目につくように、例えば箇条書きを使ったりする。ビジネスの場面であれば、伝える側がホスピタリティを意識して理性的に向き合えばいい」
NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は、チャット相談事業を行っている点から、「相談者さんの中にはかなり緊迫している方、すぐに返信する気力がない方もいる。そういう方々に自分たちのメッセージが届いたかを確認する時に既読機能はすごく重要だ。ただ、彼らが“既読をつけたら変な返信が来るのかな”“コミュニケーションどうしよう”と考えているかというと、おそらくそうではない。当たり前のツールとして思考の切り替えなどはせず、日常生活の延長線上としてテキストのコミュニケーションを使っている人が若年層は多い気がしている」との見方を示した。
なお、番組がLINE社に取材したところ、既読は「コミュニケーション促進を目的とした機能」で、災害時に読んだことが相手に伝わり、安否確認の安心材料になることも後押しになるとしている。削除や改修の予定はないということだ。
そんな中、本当は返信が必要なのにあえて“返信不要”と書き、返信してくるか試している上司もいるという。これに対し大空氏は「1つ余計にコミュニケーションコストがかかってしまう」とした上で、「日頃の関係性も重要」と話す。「本当に大事な人だけど、なんとなく信頼関係ができているから面倒になって『返さなくてもこれくらいなら許されるかな』と判断し、それがミスコミュニケーションになることも。許容度が相手と自分で違うから難しい」。
松尾氏は「ルールさえ共有しておけば“これはこういうものなんだ”と。送られてもすぐに返信しなくてもいいし、こういうふうに扱おうというふうになっていく。そうすればみんな幸せに、ハッピーになるのではないか」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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