
7月15日、後楽園ホールでプロレスリング・ノア『One Night Dream』が開催された。メインイベントは、NOAHの中嶋勝彦と全日本プロレスのエース、宮原健斗の一騎打ち。まさに“一夜の夢”と呼ぶにふさわしいドリームマッチの実現に、“聖地”後楽園ホールは1515人(超満員・札止め)に膨れ上がった。
中嶋と宮原は、元・健介オフィス(ダイヤモンドリング)の先輩後輩、兄弟弟子の間柄であり、両者のシングルマッチは2012年12月以来、約10年半ぶり。2014年のダイヤモンドリング活動休止前後に両者は袂を分ち、宮原は全日本、中嶋はNOAHにそれぞれ戦場を求め、以来、今年の2.21東京ドームでのタッグ対決まで接点らしい接点もなかった。
そのため「禁断の一戦」とも呼ばれた両者の一騎打ちだったが、蓋を開けてみれば、お互いの10年間をぶつけ合うような凄まじい激闘となった。
中嶋からの提案で時間無制限一本勝負という事実上の完全決着ルールで行われたこの試合。まず、全日本ファンからの「健斗」コールの中、宮原がまるでホームリングのように観客を煽り陶酔しながら入場。続いて中嶋が、超満員の客席を見渡し、いつものように不敵な笑みを浮かべながら殺気を放ってリングイン。両者ともに健介オフィス時代とは違う、“今の自分”を入場から表現する。
そしてゴング。「勝彦」コール、「健斗」コールが交差する中、両者ともにコーナーから動かず睨み合いを展開したあと、健介オフィスを象徴するような力の入ったロックアップで試合はスタート。
最初にペースを握ったのは中嶋だ。先制のフロントハイキックを放ち筋肉ポーズでファンにアピールする宮原に対し、健介オフィス時代からの宝刀R-15(胴回し回転蹴り)で場外に叩き落とし、荒々しい場外戦と強烈な蹴りでダメージを蓄積させる。
それに対し宮原は頭突きの連打で反撃するが、中嶋は低空ドロップキックからヒザへの一点集中攻撃を始め、ドラゴンスクリューから両者の共通の師匠である故・マサ斎藤さんばりの監獄固めで追い込んでいく。宮原はこれを脱出すると、硬いエプロンでドリル・ア・ホール・パイルドライバー!
大ダメージを負いながらリングに戻った中嶋がひねりを加えたバックドロップで投げ捨てると、叫びながら立ち上がった宮原は強烈なラリアットを返す。お互いのルーツをぶつけ合うような攻防のあとは、容赦ないエルボーと蹴りを叩き込み合う意地の張り合い。そしてここから両者は、自分の持てるすべてを出していく。
中嶋は馬乗りからのエルボー連打、さらにサッカーボールキックの乱れ打ちで追い込み、トドメのヴァーティカルスパイクを狙うが、宮原は逆に垂直落下式ブレーンバスターで切り返し、ランニングニーで逆転。必殺技のシャットダウンスープレックス狙いを踏ん張られると、ブラックアウト(ジャンピングニーリフト)から二段式ジャーマンを完璧に決めるが、これはカウント2。
ここから再度シャットダウンスープレックスを狙うが、「これだけは喰らえない」と中嶋が必死にこらえ、ブラックアウトをキャッチすると、起死回生の張り手から顔面蹴り!
この強烈なコンボでふらふらになりながら必死に立ち立ちあがろう宮原に対し、中嶋は「ケントーッ!」叫んでから、ヴァーティカルスパイクで宮原の頭をマットに突き刺し、ついに完璧な3カウントを奪った。
両者の“空白の10年間”をすべてぶつけ合ったかのような大激闘。試合後は中嶋がかつての弟弟子・宮原を抱き起こし肩を貸そうとするが、宮原はこれを振り払い拒絶。まだまだやり足りないとばかりにエルボー合戦を展開したあと、悔しさをにじませながらリングを降りた。
そんな宮原の背中に向けて中嶋はマイクを握ると「健斗! 最高なレスラーになったな。でもな、健斗。俺は、譲れねえよ!」と、先輩としての意地を口にした。そして最後は「今日、超満員の後楽園で宮原健斗と10年ぶりに会話できたこと。そして、それを(会場で)見届けてくれたファンのみんなとABEMAで観てくれたみんなに、素直に『ありがとう!』」と叫んで、大会を締めくくった。

バックステージでは中嶋が「『One Night Dream』の題名通り、今夜限りかもしれないし、またあるかもしれない。プロレスは何が起こるかわからないから楽しい」と語れば、宮原は「この世で一番借りを作りたくない男に借りを作っちまったよ。次があるかないかはプロレスファン次第だ。俺はいつでも借りを返す準備を整えていく」と発言。
中嶋勝彦と宮原健斗の健介オフィスから続く物語は一旦終止符が打たれたが、NOAHと全日本のトップとしてのふたりの闘いは、これが始まりなのかもしれない。
こうして、あまりにも激しい闘いで幕を開けたNOAHの下半期。8月6日からはNOAH最強を決める「N-1 VICTORY」という熱い夏が始まる。
9.17後楽園ホールで行われる「丸藤正道25周年記念大会」では、方舟の天才・丸藤と、新日本プロレスのIWGP・USヘビー級王者ウィル・オスプレイの夢の初対決が実現。さらに2024年のプロレス初めとして、2年連続行われた元日の日本武道館大会に代わって、1.2有明アリーナ大会開催が発表された。プロレスリング・ノアは真夏から年始まで、一気に駆け抜けていく!
文・堀江ガンツ
この記事の画像一覧