各所で猛暑日を記録する中、飲食店の汗をめぐって“あるクレーム”が話題を集めている。
「昨日の夕方に買いに行かせていただきましたが、滝のような汗をかいていました。命を削ってまで働く必要はありますか? プロならどれだけ暑くても汗ひとつかかず、涼しげな顔で働くべきです。それができないならプロ失格です。お辞めください」
汗をかいて、たこ焼きを焼く店員に対し「プロ失格」というクレーム。これにTwitterでは「一生懸命働く人が不愉快なんてどんな神経?」「調理師だけど、厨房に入れば冬でも汗はかくよ」「確かに料理に汗が飛んでいないか気になる」「扇風機とか対策はできるのでは」と様々な意見が寄せられている。
汗をかくのは悪いことなのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、実際にクレームを受け取ったたこ焼き店の代表とともに考えた。
■ 40度超えの中で…DMをもらったたこ焼き店「焼く人はもっと暑い」
「たこ焼たこば」代表・島田良太さんはクレームをどのように受け止めているのか。
島田さんは「DMでは“これは誹謗中傷ではありません”という言葉が最初に書かれていた。そう書けば誹謗中傷でなくなるわけではない。一番はこれを言いたい」と話す。
お店は外に面しているため、扉は常に開けっ放しだという。エアコン1台、扇風機3台を使用しているが、店員は40度を超える室温の中で作業している。
「焼いている人はもっと暑い。鉄板の温度を下げて作ることはできない。今の季節でも店の扉は開けている。大阪や東京によって違うと思うが、大阪の場合は買いに来た時に自転車から降りない人もいるぐらいだ。鉄板を前に汗をかかずに、たこ焼きを焼き続けた人はいない」
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「汗をかくたこ焼き店が嫌であれば、コンビニでたこ焼きを買って、電子レンジで温めればいい」とコメント。
「目の前で作られた焼き立ての『これ、おいしそうだよね』と思えるにおいと共に食べたい人は、島田さんのたこ焼き店に行けばいい。最近では寿司店でも手袋をする職人がいる。気にする人は、そういう店に行けば良い。気にしない人は気にしない。人の好みの問題だ。『どちらが正しいか』ではなく、好きなものを選べばいい」
その上で、ひろゆき氏は「工場で作られたレトルト食品以外は、ほとんど人の手を介している。気にしたら、食べられるものがものすごく減るし、友達と一緒にご飯も食べに行けない。ものすごく不幸になると思う」と述べた。
■ 汗=不潔? 思い込みも…専門家「汗を予防する商品が多すぎる」
コロナ禍をきっかけに清潔感や、衛生面への意識も上がっている。近畿大学・医学部皮膚科主任教授の大塚篤司氏は「汗はそれほど汚くない。特に島田さんのように、仕事中にずっと汗をかいている人は、逆にきれいな汗だ」と話す。
「世の中には、汗を予防する商品が多すぎる。人々は、成分などを考えて判断しているわけではない。見た目で汗を不潔と感じてしまう気持ちはしょうがない。嫌だったら、他のお店を選ぶしかない。汗をかくのは良いことだ。僕らのような専門家がもっと発信をして、世の中の風潮が変わってほしい」
ひろゆき氏は「CMなどで『汗=よくないもの』と思わせる商品が増えている。そのせいで、余計に人が良くないと思い込んでしまっている。運動をする方が絶対的に健康に良いではないか。汗をかいて健康になって寿命が延びる。当たり前のことなのに『隠さなくてはいけない』といった見え方になっていないか」と指摘する。
大塚氏によると、汗は「皮膚の細菌が反応して臭くなる」という。
「汗自体が臭いわけではない。汗の成分と皮膚にいる細菌が反応して臭くなる。だから肌を清潔にしておけば、あまり臭くはならない。おやじ臭も乳酸が原因の一つだ。太っている人の汗が臭うのも乳酸が原因だ。ストレスがかかると乳酸が体の中にいっぱい出る。それが細菌と反応して臭くなる」
島田さんによると、今回のようなクレームは「初めて」だという。「もちろん衛生面は気をつけている」といい「Tシャツもこまめに変えて、髪の毛が入らないようにタオルも巻いている。タオルを取ったらスキンヘッドだ。商品にも汗が入らないようにしている」と対応を明かした。
反響は大きかったといい「『暑いけど頑張ってね』と言ってくれる人が多い」と感謝を述べる島田さん。最後に「とりあえず、たこ焼きを買うなら『たこ焼たこば』です。よろしくお願いします」とアピールした。
(「ABEMA Prime」より)
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