ゲリラ豪雨や線状降水帯を抑制 最新研究は巨大風車やカーテンで"豪雨制御"?
【映像】200メートル以上の巨大風車(イメージ)
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 7月、全国各地を襲った活発な梅雨前線の影響による記録的な大雨。河川の氾濫や土砂崩れの被害をいかに防ぐかが課題となる中、技術開発によって豪雨を制御しようという取り組みが、京都大学などの研究グループによって進められている。

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「豪雨とは、積乱雲と呼ばれる背の高い入道雲によって引き起こされる。大きく成長してしまってからでは抑えることが難しいので、豪雨に成長する前の“豪雨の赤ちゃん”の時に気流を弱めたり、水蒸気を減らしたりして豪雨を発達しにくくする人為的な介入を行っている。それによって(積乱雲の)成長を抑制しようという狙い」(京大防災研究所・山口弘誠准教授、以下同)

 地上の暖められた空気と、上空の冷たい空気の温度差が大きくなると、雲が成長し積乱雲に。プロジェクトチームでは、積乱雲へと成長する要因の一つひとつを制御する手法について検討している。

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 まずは、雲が発生する条件である水蒸気を多く含んだ暖かい空気を運んでくる洋上での仕掛けだ。上空にカイト(凧)を飛ばし、その間に水蒸気を吸着する幕を張る洋上カーテン。そして、九州大学が発電目的で開発中の高さ227mにもなる巨大な風車群も、風の抑制に転用できるのではないかと検討を進めている。

 また、都市部でのゲリラ豪雨の原因と考えられているのが、ヒートアイランド現象だ。地表付近が暖められると、積乱雲が成長する要因となる上昇気流が生じやすくなるため、この気流の渦に送風機などによって風を送ることで、熱を拡散させる方法も想定している。

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「“気流渦”と呼ばれる豪雨の発達に役立つ1つの現象を蹴散らすという考え。大体1キロ×300メートルくらいの空間の広がりに風を吹かせて、気流渦を出来にくくするということを数値シミュレーションで行うと、2008年の神戸市で発生した大雨は約27%弱めることができるという結果が出ている」

 他にも、人工降雨で用いられるドライアイスの空中散布も雨を制御する方法として検討されている。

 こうした一つひとつの仕掛けによって生まれる小さな気候の変化が、掛け算的な効果を生み出すと山口准教授は説明する。

 この豪雨制御プロジェクトは、内閣府が掲げるムーンショット目標(非常に難しいが、実現すれば多大な効果を期待できる挑戦的な研究開発)のプロジェクトの一つとして、2050年の実現を目指して計画が進められている。

 もし、豪雨の制御や逆に雨を降らせる人工降雨の技術が確立すれば、雨を止ませることも降らせることも思うままに…。しかし、山口准教授は人為的な介入は最小限にとどめるべきだと訴える。

「私が大事だと思っている『自然の懐』という言葉をお伝えしたい。『人間は地球という惑星に住まわせてもらっている』そういう意識が大事。人間が好き放題すると、しっぺ返しで将来的に悪い影響を人間自身が被ることになる。地球温暖化もまさにそうじゃないかと。人類が発展してきたそのツケが回ってきて、いろんな災害や雨も強くなるということが起こっている。気象制御も好き放題やりすぎて、数十年後にしっぺ返しがやってくるという未来は引き起こしたくないので、まずは必要最低限、『どうして気象制御が必要か?』を考えて、人命を守るという目的意識の下で手を出すというスタートにしたい」

(『ABEMAヒルズ』より)

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