登場するなり「弱そう…」「よく試合を受けた」と悲観的な声が多数聞かれた韓国人アニオタ・ボクサー。しかし、試合が始まると日本人最重量級のパンチにビクともしないタフさやノーガード戦法などの意外性を続々披露。さらに「おい、痛いよ!」と日本語でローブローを絶叫アピールする場面では館内の爆笑を誘うなど、その独特な存在感に魅了されるファンが続出した。
7月21日(金)に東京・後楽園ホールで開催された「あしたのジョー メモリアル2023 一力ジム×3150FIGHT」のメインイベントで但馬ミツロ(KWORLD3)がキム・ジョンス(韓国)とヘビー級8回戦で対戦。試合は8ラウンドを戦い但馬が3-0の判定で7連勝。但馬の盤石の勝利も、コミカルな対戦相手のキムの一挙手一投足にファンの注目が集まった。
但馬は6月以降、5カ月連続で試合出場する「マイク・タイソンロード」と称した試練の連戦の最中。2戦目は20歳になったばかりだという現役学生ボクサーのキムとの対戦となった。
キムはテコンドーを8年経験した後、中学生からボクシングを開始。アニメ好きで、計量後速攻で秋葉原へ直行する典型的なオタクキャラ。不気味な笑みとともに登場するとファンからは「坊っちゃん感がすごい」「ほんと弱そう」など悲観的な声。しかしこの男がリングで異彩を放つことになった。
ゴングとともに互いに距離をとりながらジャブを見せる。1ラウンド後半、但馬が左を当てるがキムは不敵な笑みで謎のノーガードポーズでリアクション。会場が沸くと「井上尚弥の真似して煽ったw」「やるなー」「これは愛されキャラだ」とキムへの声援が増え始める。
2ラウンド前には「いくぞー」と日本語で絶叫。アニメ「『転生したらスライムだった件』が好き」と紹介されると「転スラかいw」「コメ民と同じ人種」とシンパシーを感じる声も多い。それでも但馬がジャブを連続で当て、ワンツーから強烈な右を当てると陽気なキムの顔が一瞬曇る。しかし、キムはすぐに連打で反撃を見せるなど、打たれ強さを発揮。
3ラウンドにはボディの連打を貰うと「効いてないよ」と笑顔のキム。コンパクトに但馬が顔面に左を当てると、キムの鼻から薄っすらと血が流れたが、キムはニッコリ。サイコパス味のあるリアクションから、烈火の如く連打を放つなど油断ならない。
試合は但馬がポイント的にはリードする展開。しかし時折、脱力ポーズをとったり変顔で煽るなど、独特の間合いで戦うキムのスタイルに但馬がペースを掴めない。5ラウンド後半には、スタミナが落ち始めたかキムは低めのボディを被弾すると「おい!但馬、痛いよ!」と日本語でローブローを絶叫アピールには館内から爆笑が。
その後も但馬が強いパンチを当てるシーンは度々見られたが、キムが倒れる気配はない。ABEMAのゲスト解説・亀田興毅ファウンダーも「まだ19歳でしょ?(20歳になったばかり)キム選手は面白いですよ。環境があれば強くなる、体も強いですよ」とそのポテンシャルを認めるコメントまで飛び出した。
最終8ラウンド、やや疲れが溜まったかキムもクリンチから投げを見せるなど荒い場面も目立つ。亀田氏が「上手投げですね」と苦笑したシーンでは警告を受けたが、キムは「すいません」と日本語で謝罪。さらに四方に低姿勢に平謝り…。「お辞儀に騙されるな」「転がされてる」「いいキャラだな」「ほんと打たれ強かった」とブーイングと声援が乱れ飛ぶなか、キムは自らのキャラクターを貫き、倒されることなくフルラウンドを戦い終えた。
結果は但馬が3-0の大差で7連勝を飾ったが、前回同様にKO勝利はならず。試合後に但馬は「20日後にも次の試合が控えているので、ケガをしないリスクを第一で試合をしました。それでもフルラウンドで違う内容を経験できた」と一定の成果を口にした。
一方、弱そうな見た目から、いい意味で期待を裏切ったキム。完敗を喫するも笑顔で勝者を称える姿は清々しい。そんなキムに対して「元気すぎて笑うしかない」「キムまた呼んでくれ」「いつの間にかキムを応援していた」との声も聞かれていた。