【スカパー!ブンデスリーガジャパンツアー2023】川崎フロンターレ0-1バイエルン(日本時間7月29日/国立競技場)
ブンデスリーガの絶対的王者・バイエルンはジャパンツアー2戦目で川崎フロンターレを相手に1-0で勝利。支配率で凌駕し、相手の倍以上のシュートを放ちながら1得点に終わった一戦を地元メディアはどう報じたのだろうか。
26日のマンチェスター・シティ戦は、86分に勝ち越しを許して1-2で敗戦。川崎戦は、そこから2人を入れ替えて臨んだ。
その2人の出来は対照的だった。ダヨ・ウパメカノに代わって4バックの左センターバックを任されたのはキム・ミンジェだ。今季、ナポリから5000万ユーロ(約78億円)のアジア史上最高額の移籍金で加入した韓国代表DFは、センターバックでコンビを組むバンジャマン・パヴァールと連係する守備力のみならず、攻撃力も顕著だった。
ドイツ誌『キッカー』も「安定してビルドアップに関与した」と評すなど、ビルドアップとその先の攻撃にも参加。10分には高い位置でのボール奪取からエリア内に侵入してクロスを上げて決定機を演出し、センターバックとは思えないほど攻撃的にプレーした。
一方、キングスレー・コマンに代わって先発出場し、4-2-3-1のワントップを任された18歳のFWマティス・テルはチャンスをふいにした。10分にはエリア内でフリーになって受けながらもシュートはニアへと外れ、先のキム・ミンジェのクロスを合わせるもGKに止められてしまう。『キッカー』が「前半は大部分を支配したが決定力を欠いた。テルは4度のチャンスを決められなかった」と報じたように、ハーフタイムで9人を交代したなかでピッチに残り、61分までプレーして好機に絡んだもののゴールを奪えなかった。
テルに限らず、ゴールが遠かった。そのテルに代わってワントップでプレーしたアリヨン・イブラヒモヴィッチは終盤、3回のビッグチャンスを仕留められなかった。
もちろん、成果もある。ジャマル・ムシアラや、途中出場のコマンはこれまでと同じように違いを示した。今季、ライプツィヒから加入したコンラット・ライマーは、2ボランチの左で機能し、攻守に違いを生み出し、それによってもう1人のボランチでありチームの心臓のヨズア・キミッヒが自由に動いてチャンスメイクするお膳立てをしてみせた。
しかしながら、ボール支配率65%、シュート本数は川崎の8本に対して20本と数字上でも圧倒したにもかかわらず、枠内シュートは3本のみと精彩を欠いた。
ドイツメディア『スカイ・スポーツ』は「クロアチア代表スタニシッチがライアン・フラーフェンベルフからからの素晴らしいパスを受けて得点したが、川崎にもチャンスがあった。バイエルンはもっといい勝利を収めることもできたはずだ」とまとめている。
さらにドイツ誌『キッカー』も「バイエルンが攻撃のアクセントをつける時は主に左サイドを経由し、ムシアラとアルフォンソ・デイヴィスのコンビと、セルジュ・ニャブリ、テルを経由していた。5人の攻撃ブロックにもかかわらずファイナルサードの明確さと、前半のゴールに欠けた」と、攻撃の方法と決定力を欠いたアタックの課題を指摘していた。
出来という意味では、プレシーズンの段階であり、トゥヘル監督もテスト的な要素を示唆してきた。しかも、クラブとして15年ぶりに来日しての興行でもある。さらには、ヨーロッパとは似て非なる、気温も湿度も高い酷暑のなかでのゲームだ。それらを踏まえれば決して悲観する課題ばかりではなく、リーグ開幕に向けた準備段階を経た感覚だろう。
トゥヘルは、戦術家であると同時に“激情型”としても知られる指揮官である。ゴールには喜びを爆発させ、ミスには激昂し、時に相手監督との小競り合いからヒートアップして退場することもある。そんな喜怒哀楽を見せることなく、この日、トゥヘルは静かに座っていた。感情を露わにせず、ベンチ前で“ウォータージャグ”を椅子がわりにしながら。
日本のファンには残念だが、バイエルンの本番はこれからである。次戦はシンガポールへと移動し、アジアツアー後半としてリヴァプールと対戦する。相手は、トゥヘル自身も尊敬してやまない名将クロップが率いるクラブだ。シティ戦に勝るとも劣らないビッグマッチであり、ブンデス王者はここから、12連覇へ向けギアを上げていくに違いない。
(ABEMA/スカパー!ブンデスリーガジャパンツアー2023)