22日、民間の政策提言組織「令和臨調」の会合の場で、「国会が十分な役割を果たしていないのではないか?」と投げかけた、元東大総長の佐々木毅共同代表。これに岸田総理は「時代が大きく変化している。それに応えられるような議論を行うために、国会の運び方やありようも変わっていかなければならない」と応じたが、行政府のトップが立法府のあり方に言及したことは異例だと報じられ、SNS上で批判が殺到した。
中には、国会での議論がないまま重要事項が決められる「閣議決定」への指摘も。原則非公開で行われ、その様子は滅多に公開されることはない。これまでも、岸田総理は重要政策を国会で議論せずに進めていると批判されてきたが、国会に変化は必要なのか。そして、閣議決定の是非は。25日の『ABEMA Prime』で議論した。
■「国会も変わらねば」発言、岸田総理の考えは?
予算委員会などの理事を務め、国会審議について野党との調整を行う自民党の牧原秀樹衆議院議員は「総理だけではなく、ほぼ全ての国会議員にそういう認識があるのではないか」と話す。
「与党・野党、あるいは与党内でも人によって違うと思うが、“国会が今のままで何の問題もない”と思っている人は誰もいないということだ。岸田さんの考えは定かではないが、例えば外務大臣が国会出席のためにG20に行けなかった際、結果的にほとんど質問を受けなかったと。閣僚が質問もないのに国会に座っている時間、あるいは総理が出席する時間というのは、世界的に見ても圧倒的に長い。行政府の長として仕事が制限されることが多いというのはあったと思う。今回はかなり踏み切った発言だ。ただ、あれ以上具体的に言えば、“完全に国会の立法権を侵害している”という反発はもっと強かっただろう」
令和臨調の佐々木共同代表は通年国会にするよう指摘している。元衆議院議員で弁護士の菅野志桜里氏は「与党は“国会に縛られるのが嫌だ”、野党は“もっと国会を開け”と言う、いつものパターンだ。国会の活動量より質を上げることがすごく大事だと思う」と指摘する。
「質が上がらない原因の1つは、要するにスケジュールが見えないこと。翌日の予定はその日にならないとわからないし、いつからいつまで国会が開くのか決まっていない。ましてや、いつ選挙になるかもわからない。こういう状態で国会に臨むと、質問の準備もおざなりになる。結局、内閣から出てくる法律がメインで、議員立法はおまけの時間に詰め込まれるだけになってしまう。通年国会もいいが、まず会期と任期の固定を考えるとずっと国会はよくなるのではないか」
佐々木共同代表は「衆院議員任期(4年)を全うして政策課題に取り組むべき」と、「解散権」乱用の是正も提案している。
牧原議員は「実はイギリスが一度解散権を制限した。EU離脱を決める際、“解散して国民に信を問う”という選択肢がなくなってしまい、結果的に国民投票をやった。それでEUを離脱するのだが、その後“国民に信を問えるようにしておく必要がある”と制限を取っ払った。つまり、“今有利だから解散してしまえ”というのはやめて、政権は堂々と王道を貫くべきだ。原則として4年やるが、“新たにやらなくてはいけなくなったから信を問う”というオプションは残しておく。ここ最近で選挙までの期間が一番短かったのは、郵政解散の時。参議院で否決されたのに衆議院を解散するのはおかしいという議論が主流だったが、小泉さんは解散して勝って郵政民営化が進んだわけだ。“最後は国民の判断”というのは私の思いだ」との考えを示した。
■閣議決定は国会軽視? 名称が先行?
国会のあり方に触れた岸田総理に対して、「自分は閣議決定ばかりで、国会を軽視していないか」という声がある。そもそも閣議決定とは、内閣の重要政策に関する基本的な方針を全閣僚参加の会議(閣議)で決めること。議案は一般案件、法律・条約の公布、法律案、政令及び人事等に及ぶ。
牧原議員は「例えばGX基本方針や、改正マイナンバーカードと健康保険証の一体化など、法律になっているものは必ず国会で審議する。防衛3文書については行政の文書なのだが、内容がより国全体に関わる重要なものであった場合に“国会で議論しなくていいのか”となるのはそのとおりだと思う。実際に予算委員会で相当議論がされているが、“閣議決定の前に議論すべきではないか”というやりとりが国会でも相当なされたのも事実だ。ここは難しい判断だと思う」と述べる。
菅野氏は「閣議決定というのは“内閣が今こう考えている”という意思表示にすぎないので、次の内閣が取り消すことも、上書きすることもできる。法律ができればそちらが優位する、というものでどこまで決めていいのかということだ」とした上で、「私たちの受け止め方も考え直す必要がある。『閣議決定した』と新聞に出たりニュースで聞いたりすると、“もう決まったんだ”“意見をしても無駄だ”となってしまいがちだ。それを政権が利用して、流れを作るためにあえて使っているというところがあると思う。“閣議決定には法的拘束力がなく、岸田政権は今こう考えているんですね”ということをいったん確認するのはすごく大事だと思う」と指摘。
パックンは「結局審議されて、立法府を通して法律になるので、閣議“決定”という言い方をやめたほうがいいかもしれない。立法するまでは解釈であり、『閣議提案』という別の名称でやってほしい」と提案した。
閣議決定された内容には「こんなことまで?」と思うようなものもある。例えば、桜を見る会をめぐる「反社会勢力の定義は困難」「『内閣総理大臣夫人』は公人ではなく私人」、当時の小泉進次郎環境大臣の「セクシー」発言をめぐる「性格な訳出は困難だが、ロングマン英和辞典(初版)によれば『(考え方が)魅力的な』といった意味がある」、総理公邸に「幽霊が出る」との噂関連で「承知していない」などだ。
牧原議員は「これらは質問主意書に対する回答だが、野党にとって重要な武器になっている。担当の省庁が回答を作り、最後は閣議決定をして野党にお返しするものなので、野党も『UFOが来た場合の防衛は~』などニュースになるような質問主意書をあえて作ってくることもある。それを変えるには野党の同意も重要になるのではないか」との考えを示した。(『ABEMA Prime』より)
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