社員の悩みや問題を解決するため、上司との面談を行う企業も多いが、「本音を引き出せているのか」という課題がある。社員が働きやすい環境づくりのため「第三者面談」を行う企業代表に話を聞いた。
「実は我々が第三者で、お客様の1on1の代行をやらせていただいた。実際、効果がすごく出ていたので(第三者面談を)自社にもはじめた」(アールナイン・長井亮代表)
企業の採用や人材育成などをサポートするアールナインは、2023年5月から「第三者面談」を導入した。
組織づくりのプロとして大きな効果を感じたのが、キャリアコンサルタントや人事経験者などの第三者による社員の面談だったという。従来の上司面談で浮き彫りとなっていたのが、「本音が言えない」「上司ばかり話してしまう」といった課題だ。
「部下から提案や想いを聞いても、上司は自身の経験から解決策を与えてしまう。しかし、部下からすると話を聞いてもらったり、自分の意見を昇華させるきっかけが欲しいだけ。そこにアドバイスがくると、本人の可能性を閉じてしまう」(長井亮代表)
上司との面談は、「聞く」ことよりも、会社のメリットとなる問題解決に向かいがちだという。利害関係のない第三者による面談は、本当に話したいことや、仕事で抱えているモヤモヤを、客観的な視点で受け止めてくれるとアールナイン社員の恒松さんは次のように語る。
「上司に課題を相談すると、どう仕事で解決していくのかという具体的な話になるが、(第三者面談は)自分がどういう気持ちなのか、どれだけ経験値を得ているのかなど、客観的な目線で振り返ることができるので気持ちもスッキリする。第三者の目線で自分が成長できたかどうか、キャリアの棚卸しができた」
第三者面談は本人の市場価値や成長度合いを他の社員との比較ではなく、社会全体の視点で確認できる。中立な第三者によって、“無意味な転職”も減らせるのではと長井代表は次のように話している。
「転職エージェントなどは転職させることがゴール。対して、第三者のキャリア面談では本当に合わないのであれば転職もあるかもしれないが、まずは自社の可能性を客観的に探る。そこを探らずして転職するのは非常にもったいない。固定概念で見えなかったことが見られるようになる」
外部の第三者が面談を行う取り組み。実際に面談をした社員から「話を聞いて受け止めてくれたので、気持ちがスッキリした」というポジティブな声が上がっている。この取り組みついて、番組コメンテーターを務める慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏に話を聞いた。
「カウンセリングの役割は起きている問題を解決することではなく、話を聞いてあげること。しかし、解決してあげなければ問題解決にならないと思う人もいる。ハラスメントなど深刻なケースは処罰や異動などが必要だが、その他のケースにおいて大事なのは職場で起きている問題を根本から解決するよりも、 その問題に直面して悩んでる本人が、『どんなことに悩んでいる』『どういう状況で、どう考えていけばいいか』ということを客観的に整理して、前向きな感情を持てるようにしていくこと。だから、第三者に聞いてもらうだけでも効果がある」
(『ABEMAヒルズ』より)