7月に公開された映画『バービー』の大ヒットに沸くアメリカで、ファンがキノコ雲を揶揄するような画像をX(旧Twitter)に投稿。これに映画の公式アカウントが好意的な反応をしたことで批判の声が上がり、配給会社ワーナー・ブラザースが謝罪するなど物議を醸している。
これまでもキノコ雲がTシャツやアート作品でポップに描かれたり、ナチスを連想するハーケンクロイツをプリントした服を着た歌手が炎上するなど、たびたび問題になってきた。3日の『ABEMA Prime』で議論した。
■町山智浩氏「非常に不幸な組み合わせだ」
事の発端は、『バービー』が公開された日に、“原爆の父”と言われた科学者の伝記映画『オッペンハイマー』も同時公開されたこと。ネット上では“Barbenheimer(バーベンハイマー)”という造語が生まれ、バービーとキノコ雲を絡めた原爆を連想させるようなコラージュ画像が拡散された。
カリフォルニア在住の映画評論家・町山智浩氏は「SNSに投稿している人たちは『オッペンハイマー』を理解せずに結びつけていると思う。この映画のタイトルは広島・長崎に落ちた原爆を作った科学者の名前だが、その後悔・反省からそれ以上の核開発に反対し、公職から追放されてしまうという実話だ。一方で、『バービー』は女性のエンパワーメントの話。全く方向性の違う映画が、たまたま公開日が同じだったから、くっつけられたという非常に不幸な組み合わせだ」と話す。
今回の件を受け、核兵器廃絶を訴える団体「広島・長崎を忘れない市民有志」は、配給会社に再発防止策の実施などを求め署名サイトを立ち上げた。同団体のメンバーで「カクワカ広島」共同代表の高橋悠太氏は次のように訴える。
「謝罪のメッセージなどの対応は早かったと思うが、より広い謝罪が必要なのではないか。それから“#Barbenheimer”というハッシュタグや、今回のようなミームを扱わないようなメッセージを発すること。そして、再びこういうことが起きないような再発防止。この3点が必要だと思っている」
■核の脅威どう伝える? ネットのミーム化にガイドライン必要?
日本国民の87%が戦後生まれ(2022年10月時点)となる中で、核兵器の脅威をどう伝えていけばいいのか。高橋氏は「日本の感覚、問題意識をより普遍的に広めていくために何が必要かを、この署名を立ち上げながら考えている」と話す。
「原爆投下が戦争の帰結として起こったという視点が重要だと思っている。日本が戦争を始めた加害責任も含め、それを続けた結果、米ソ冷戦の最初期に原爆が投下された。そこに対する謝罪というのは、“このような被害を生み出す兵器には依存しない”と表明することだと思っている。まもなく8月6日、9日を迎える中、努力がいっそう重要なのではないかと思う」
タレントの山崎怜奈は「核に対するリアリティのギャップをまじまじと見せつけられた話だと思う。ただ、“アメリカ”とひとくくりにするもの危険で、被爆2世、3世の方々が伝え続けているからこそ、アメリカ内でも世代や人によって認識は違う。ネットで起こる現象の中にはいろいろな攻撃性、ステレオタイプが含まれてることを考えなくてはいけない」との考えを述べる。
実業家のハヤカワ五味氏は「日本で戦争関連のミームはないかもしれないが、例えばLGBTQへの配慮が欠けたようなものはあると思う。SNSであればそれらを追放できるはずだがうまくワークせず、しかも今回は公式が反応してしまった。SNS運用のガイドラインをしっかりさせるべきで、周りも含めてブレーキが効かなかったのが残念だ」との見方を示した。
町山氏は「ニューヨーク・タイムズなどのメディアでもこの問題は大きく取り上げられている。ワーナーとしてはツイート担当者がやってしまったということでしかないと思うが、プラットホームもこれはいけないことだと認識していなかったのも非常に大きいと思う。だから日本は会社を責めるのではなく、アメリカという国に伝えていくべきだ」とした。(『ABEMA Prime』より)
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