新宿・歌舞伎町の通称「トー横」に、新たな闇が広がりつつある。
「30万円使ってる、ここ3週間で」(23歳女性)
「愛情に飢えている」(19歳女性)
「立ちんぼしてシャンパン」(14歳女性)
華やかなシャンパンコールが響くのは、ホストクラブではなく「メンズコンセプトカフェ」(メンコン)。メンコン店員に通い詰める女性も増え、「100万円使う子は使う」という。
2023年7月15日23時すぎ、警察官約120人が「トー横キッズ」の一斉補導を行った。なかには、行方不明届が出ている少年少女もいた。これまでトー横をめぐっては、「オーバードーズ」と呼ばれる市販薬などの過剰摂取や、キッズのまとめ役が大麻や覚醒剤の売上金をめぐって監禁・恐喝を行う事件が起きていた。
犯罪行為が多発するなか、トー横では「女の子の恋心を利用して、『もし俺を推すならば、もっとお金を使ってくれ』。メンズコンカフェにハマる子が多くなってきている」との声も聞かれる。
メンコンは、王子様や貴族などコンセプトに沿ったキャラクターで接客し、お酒を飲める店舗形態だ。トー横の目の前には、宣伝する店員が並ぶことから「メンコン通り」と呼ばれている道もある。
「お金をいっぱい使ってる子はいる。ハマっちゃって、1人のメンコンにエンジェル シャンパン。体売って立ちんぼしている子もいる」(メンコンに通っていた19歳女性)
体を売って、金を稼ぎ、メンコン男性に貢ぐ。それが今、トー横にいる少女のリアルだ。1カ月前からメンコンに毎日通っているRさん(23)に話を聞いた。
「病んでる時に、めっちゃ連絡してくれて、『行ってみるかー』みたいな。(ツーショット写真を)なくしたらムリ、死ぬ。30万円使ってる、ここ3週間で」(Rさん)
Rさんは店内での動画も見せてくれた。メンコンで大金を使うRさんがお金を稼ぐ手段は「パパ活」だ。メンコンの男性に貢ぐことを「推し活」というが、どうして「パパ活」をしてまで「推し活」するのだろうか。
「仕事終わって店(メンコン)に行くじゃないですか。『あー今日も頑張った! みんな褒めて!』みたいな。褒めてもらうために店に行ってる」(Rさん)
かつてメンコンに通っていて「立ちんぼでシャンパンおろしてました」と語るTさんは、中学3年生の14歳だ。当然ながら、路上売春は売春防止法違反の犯罪行為だ。トー横とメンコン通り、そして大久保公園周辺の路上売春と、少女たちは徒歩圏内で深い闇へ引きずり込まれていく。
Tさんは、シャンパンが写る写真を見せてくれた。「エンジェルブラック、20万円です。一番行ったお店では月50万近く」。未成年の飲酒は法律違反だが、Tさんが担当店員から言われた言葉は——。
「1週間に2〜3回来るとしても、その度2〜3万毎回入れないと(会うのは)無理(と言われて)、これもうシャンパンおろすの確定なんだ。あー、みたいな」(Tさん)
Tさんが通っていたメンコンは7月、無許可で営業した疑いで店長が逮捕された。Tさんはストレス発散やメンタルケアを求めて、メンコンへ行っていたと振り返る。
メンコンは3年前ごろから歌舞伎町で急増し、現在は30店舗以上あるという。そのうちの1軒「ballom -バロム-」を訪れると、「お帰りなさいませー。旦那様ご帰宅です」と出迎えてくれた。メンコン店員・弘原海(わだつみ)さんは「悪魔執事がコンセプト。悪魔が執事となって、お嬢様にお仕えする」と説明。このお店は、初回飲み放題が1時間1100円で、お酒を提供しているため、未成年の来店は禁止している。
メンコン同業者の中でも、悪質な営業手口のウワサは広がっているようだ。弘原海さんは「キスとかイチャイチャするようなコンカフェは、恋に落としたいのでは。(好きになってもらって)お金を使ってもらう」と語り、同じく店員のとむらさんも「リピートしてもらうのが主な流れ」と続ける。メンコン通りにいた、ビジュアル系のメンコン店員も「シャンパンを勝手におろして、売掛・つけ払いにして請求」といった話を聞いたことがあるという。
奴隷をコンセプトにしているお店の店員が、一部に存在する悪質な営業の要因を教えてくれた。「お客さん呼べなかったら、時給なしとか、給料が下がるとか聞いたことがある」。
月5回以上メンコンに通っていたAさん(17)が電話取材に応じた。
「きっかけは友達から『初回無料だから行ってみない?』『あっいいよ』みたいな感じで行ったらドハマリした。色恋営業。『俺はお前しかいないから!』って沼らせて、『私はこの人がいるから頑張れる』って感じ」(Aさん)
Aさんが通っていたメンコンは、未成年にお酒を飲ませ、大金を使わせていたとして、4月に摘発された。「未成年の子に300万円使わせた」と語るAさんは、未成年への驚きの営業方法も教えてくれた。
「めっちゃ有名なのは『前戯物販』。『(性行為の)前戯するからシャンパンボトルおろして』(とお返しを求める)。お店でVIPルームがあって、そこでやる」(Aさん)
トー横の見回りや、子ども食堂の運営を行う団体の代表のもとには、メンコンに関する相談事が寄せられている。
「メンコンカフェにハマってしまって、2週間以上も家に帰ってこない16歳の子がいて、親御さんから相談を受けて捜索したことがある。(捜索願を)出したうえで来てもらって、捜索して見つけた。推し活の子から稼ぐように言われて、寝る間も惜しんで立ちんぼやパパ活をしたと聞いた」(防犯ボランティア団体・オウリーズ代表)
警視庁によると、推し活をめぐる保護者からの2022年の相談は、2021年の3倍近い50件にのぼる。路上売春をしている女性に話を聞くため、大久保公園周辺を取材した。
「お金が欲しいから、金のため。ざっくり言うと推し活。ホスト、メンコン、分かれてくる。どっちか」(大久保公園周辺にいた女性)
「(ここに立っている女性は)ほとんどが推し活、メンコン。100万円使う子は使う」(別の女性)
路上売春をしていた女性(20)は「好きな人がメンコン店員。元彼もメンコンNo.1」と語る。メンコンへは5店舗行き、最高で1回に40万円使ったそうだ。メンコンにはまり、2〜3万円で性交渉しているという。
核心を突こうと、メンコン店員から「お金作ってこい」と言われるのか聞くと、「わからない」とはぐらかす女性。心のより所を失いたくないからか、真実から目をそむけようとしているようにも見えた。
東京都青少年問題協議会は7月、トー横の若者への対策案を小池百合子都知事に提出した。対策案では、SNSの投稿分析による実態把握や、保護者向け相談体制の充実、トー横周辺の電子看板で、若者を利用する大人への警告を流すよう求めている。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側