「最低賃金初の1000円超え」が余裕のない中小企業を追い詰める?
【映像】オーストラリア2215円、韓国1074円 なぜ日本は安い?

 厚生労働省は令和5年度の最低賃金について、全国平均で1002円に引き上げるとする目安を取りまとめた。

【映像】オーストラリア2215円、韓国1074円 なぜ日本は安い?

 物価の上昇など、日々の生活が厳しさを増す中、我々はこの賃金上昇をどのように捉えるべきなのか。テレビ朝日社会部 厚労省担当 伊與田愛結記者に話を聞いた。

━━今回の最低賃金引き上げのポイントは?

「初めて」となった3つ試みがポイントだ。

まずは、「初めての1000円超」。示された目安通りに各都道府県が引き上げた場合、全国平均は1002円に。過去最大の41円の引き上げ幅であり、政府が目標としていた1000円超を達成することとなる。

2つ目は「初めての3つのランク分け」。47都道府県を経済指標に応じてランク分けして、ランクごとに引き上げの額の目安を決めているが、今回から、地域格差是正のために4つのランク→3つのランク分けとなった。
 
3つ目は「初めての全体会議公開」。労働者側、企業側、間に立つ公益委員の3者が揃った全体会議が初めて公開された。その最大の目的は「透明性」だ。

━━「初めての1000円超」の背景には何があるのか。

今年の春闘では、30年ぶりの高い水準となる賃金上昇率は平均3.58%となった。この流れを中長期的に波及させたいという狙いがある。また、コロナが5類に移行して、飲食やサービス、宿泊などはようやくコロナ前に戻りつつあり、期待も高い。

一方で、物価・エネルギー価格・原材料費の高騰は続いており、「もっと上げてほしい」という労働者側と「あまり上げると苦しい」という企業側の意見が対立した。

━━「初めての3つのランク分け」とのことだが、そもそもなぜ最低賃金の引き上げがランク分けされているのか?

最低賃金の引き上げは地域ごとの経済指標に応じてランク分けされており、ランクごとに引き上げの目安が決められる。去年までは4つのランクに分けられていたが、今年から、地域格差是正のために初めて3ランクに変更された。

Aランクは東京(1072円)や神奈川(1071円)など6都府県で引き上げ額の目安は41円。Bランクは京都(968円)や福岡(900円)など28道府県で引き上げ額の目安は40円。Cランクは青森、高知、沖縄(いずれも853円)など13県で引き上げ額の目安は39円。

仮に、目安通りに引き上げられた場合、東京は1113円。青森、高知、沖縄は892円になる。金額の比率でみると、最高額に対する最低額の比率は、現在の79.6%から80.1%となり、地域間の差が縮小する

━━3つ目は「初めての全体会議公開」とのことだが、全体会議を公開する意義は?

会議の冒頭と最後だけではあるが、全体会議が公開され、議事録も後ほど公開される。目的は透明性を高めること、興味・関心を持つ人を増やすことにあるという。

━━最低賃金引上げいつ適用される?

8月に各都道府県の地方最低賃金審議会が開かれ、実際の引き上げ額を正式に決定。その後、10月をめどに適用される。

━━最低賃金上昇の懸念や負の側面は?

例えば、以前は700円の時給で3人雇えていたものが、時給が1050円になると同じ人件費では2人しか雇えなくなってしまい、労働者の「枠」が減ってしまう。原材料費や光熱費が上がっているため、企業も厳しく、足りない労働力をカバーするためにそれぞれの企業の管理職が無理を強いられることも考えられる。1000円を超えたと喜ぶだけでなく、多方面から見なければいけない。政府は、中小企業などが賃上げしやすい環境を整備できるよう、助成金など支援策の拡充を検討している。

(『ABEMA倍速ニュース』)
 

お盆休みに“帰省ブルー”の声が...心理的負担になる人も?顔を見せに行く意味は?
お盆休みに“帰省ブルー”の声が...心理的負担になる人も?顔を見せに行く意味は?
「2社から4700万円」不当解雇を訴え高額な和解金を勝ち取った“モンスター社員”「退職届は出すな」「証拠を集めて裁判を」
「2社から4700万円」不当解雇を訴え高額な和解金を勝ち取った“モンスター社員”「退職届は出すな」「証拠を集めて裁判を」
不燃ゴミに出した「モバイルバッテリー」の発火相次ぐ 「家電量販店で回収してもらえなかった」「自治体も引き取ってくれない」…どう捨てる?